ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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11~20話

無闇に触れてはいけません【下】

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 眩しく光ったかと思った宝石は、なんのことはない。光り輝いたのではなく、吸い込まれるような『漆黒』を失ってただの透明な石へと姿を変えていただけだ。

「えっ、えっ? なに? なんで!?」

 まずい。これはまずい。絶対に私のせいだ!
 こんなに高そうな指輪の、見たこともないような美しい宝石を、私が触ってダメにしてしまった……!
 クロの大事なものかもしれないのに!!

 劇的な変貌に動揺する。
 最初からこの状態であったのなら、なんの疑いもなくダイヤの指輪だと思っただろう。
 でも違う。これが元々透明な石でないことを、私は知っている。

「どっ、どど、どうしよう……!?」

 服の袖でごしごしと擦ってみても、何も変わらない。
 地面に置いて三歩下がって様子をうかがっていても、何も変わらない。
 もう一度ぬいぐるみの下に突っ込んでみても、何も変わらない。

「まずい……」

 ひとまず、指輪を抱えてドールハウスへと引き返す。
 ふと思い立って、玄関前でハンカチもどきを水に濡らして拭いてみたけれど、やっぱり何も変わらなかった。
 いっそ火であぶる…………のは、やめておいたほうがいいだろう。
 炭になってしまっては取り返しがつかない。

 ガパッ、バタン
 ガパッ、バタン

「たしかこの辺に……あった!」

 ドールハウス内の宝物庫とおぼしき部屋に指輪を運び込む。
 気分は集中治療室へと急患を運び込むドクターだ。

 中央に鎮座する豪華な王冠のミニチュアを脇にどけると、赤いクッションの乗った立派な台座にそっと指輪を乗せた。

 安静に、安静に……。

 とりあえず、まだ試していない手段を手当たり次第に試してみるしかない。
 自分のケツは自分で拭けと、パワハラ上司にも散々どやされた。

 まずは時間でゆっくりと変化していく可能性を考えて、明日まで触れずに置いておく。

 他にも思いつく限り色々と手を尽くして……最終的に何をどうしても無理だったときには、潔くクロに自首しよう。

「労働で弁済できる気がしないけど……」

 この指輪の代金で、一軒家くらい余裕で建ちそうな気がする。
 いや、土台は無事だから宝石部分だけの弁償にしてもらうとしても、それでもこれは――。

 くらりと遠のきそうになる意識をどうにか捕まえながら、私はしばし呆然とその場に立ち尽くした。
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