ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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11~20話

無闇に触れてはいけません【中】

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 方向感覚を失いそうなぬいぐるみジャングルのなか、うろうろとさ迷ってようやく目当てのウサギへとたどり着いた。

「いたー!」

 もふんっ

 ああ可愛い。お持ち帰りしたい。これほど大きなぬいぐるみを置くスペースなんて、こぢんまりとした一軒家の我が家にはないけれど。
 うーむ、庭ならあるいは……?

 むぎゅむぎゅと全身で毛並みに埋まっていると、ぬいぐるみの下に潜った足先にコツリと硬いものが触れた。

「ん? 下に何かある……?」

 ペンダントトップのカプセルが落ちていたくらいだ。もしかしたら、ペンダントチェーンでも落ちているのかもしれない。

 ぺたりと膝をついて上半身を屈め、ぬいぐるみの下に右手を差し入れる。

「んん? チェーンじゃないな……。なんだこれ?」

 手探りで確かめながら、予想とは異なる形状に首を捻る。
 ごつごつとした、大きな、輪っかのような……。

 掴んで軽く引っ張ってみても、何かにつかえているようで取り出せない。
 左手も差し込み、しっかりと両手で掴んでえいやっと引けば、グラリとぬいぐるみを揺らしながらソレが現れた。

「…………指輪?」

 大きな黒い宝石の嵌め込まれた、私の王冠にでもなりそうなサイズの金のリング。
 この部屋にあったのだ、おそらくこれはクロの持ち物だろう。

 アンティークのような古めかしさがありながらも、傷一つなく綺麗に磨きあげられ、長年大切に手入れされてきたことがよくわかる。
 芸術品のような美しい彫刻が全体に施され、石座部分に彫られた羽根のある獅子は今にも動きだしそうなほどの力強い脈動を感じさせた。

「ん……?」

 獅子が守るように抱える、一見不透明にも思える真っ黒な宝石。
 よくよく見れば、吸い込まれるような漆黒の中にキラキラと無数の光の粒が見える。
 まるで、満天の星空を閉じ込めたかのような神秘的な輝き。

「こんなの初めて見た……。なんていう石だろう。綺麗……」

 うっとりと、誘われるように宝石部分に手を触れた、瞬間。

 パァッ

「――――えっ?」
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