ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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11~20話

無闇に触れてはいけません【上】

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 ちゃんとした食事が食べられる!
 そうと決まればやるべきことは一つ。

「しっかりっ、お腹っ、空かせとかないとっ!」

 屈伸、伸脚、アキレス腱伸ばし、等々。
 入念な準備運動を終え、調子を確かめるようにタンタンと足踏みする。
 水が手に入った今、がっつりと汗をかく運動をしたって脱水の心配はないのだ。

「んーでも、髪をどうにかしたいなー」

 小中高と、ずっとショートカットだった。
 会社勤めをはじめてからは美容院に行くゆとりなんてなく、伸ばしっぱなしの髪は今や肩甲骨を越えようという長さになっている。

 ずっと伸ばしてみたかったので結果的にはいいのだけれど、運動するにあたってはとりあえず髪を結びたい。
 ヘアゴムとまではいわずとも、何かこう、紐みたいなものでもあれば……。

 なんとはなしにポケットを探ると、ハンカチもどきが入っていた。
 切りっぱなしの四辺からほつれた糸を試しに一本摘まんで引けば、すっと簡単に糸が抜ける。

 ただのほつれ糸とはいえ、今の私にとっては程度の十分な太さだ。

「ん……っと、よしっ! それじゃあ、しゅっぱーつ!」

 きつく糸を縛ってポニーテールを結い上げた私は、気合い十分に飾り棚の上を駆け出した。






 広い天板の縁に沿って二十周ほど走り、次の運動に取りかかる前に小休止。
 体感としては、一周百メートルちょっとだろうか。

「はぁっ、はぁっ……、やっぱ、かなり体力落ちた……っ!」

 短距離専門だったとはいえ、現役時代にはこの程度の距離でバテたりなどしなかったのに。

 用意しておいたタオルで汗を拭い、小さなカップで水をすくってゴクゴクと喉を潤す。
 あらかた呼吸が落ち着いてくると、私はふらりとぬいぐるみ山脈に足を進めた。


 ……ぽふんっ

「んーーーっ」

 もふもふは疲れに効く。間違いない。
 巨大なぬいぐるみのお腹に顔を埋め、やわらかな毛並みを堪能する。

「そういえば最初の子はどこだろ? たしかウサギの……」

 もふもふを渡り歩きながら、なんとなく愛着を覚えて一番初めに突っ伏していたぬいぐるみを探す。
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