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11~20話
酒は飲んれも飲まれるら【上】
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ぐっ――――カツンッ
ぽとん
どうしよう……。
長時間放置してみても指輪に変化がないようだったら、次は……。
冷やしてみるのはどうだろう?
もしくは、お湯で温めてみるとか?
ぐっ――――カツンッ
ぽとん
あっ! 星空みたいだったし、夜空にかざしてみるのもいいかもしれない。
この部屋には窓がないから、空を見るためには隣の執務室に……。
「ヒナ、どうした? 何か嫌いなものでもあったか?」
「いえ、全部美味しそうです」
ぐっ――――カツンッ
ぽとん
ミニチュアフォークの丸い先端で刺しそこなった人参グラッセが、ぴょんと跳ねて皿の外に落ちた。
今私がいるのは、巨大なローテーブルの上に置かれたミニチュアテーブルセットの椅子の上。
夕食を手に入室したクロが「少々開けてもいいだろうか?」なんて言うから何をするのかと思ったら、ドールハウスの壁を押さえてガパッと左右に割り開いたのには驚いた。
まさか開けられる構造だったとは……。
しかし考えてみれば当然だ。ハウスを開けなくては、家具や小物を配置することもできないのだから。
ドールハウスの食堂側を開いてテーブルや食器類を摘まみ上げるクロを見ながら、開かれたのが宝物庫側でなくてよかったと大きく胸を撫で下ろしたことは言うまでもない。
…………
「あーん」
ぱくっ、もぐもぐもぐもぐ……
「あーん」
ぱくっ、もぐもぐもぐもぐ……
「こっちはどうだ? あーん」
ぱくっ、もぐもぐもぐもぐ……
「酒は飲めるか?」
「お酒は…………あれっ!? なんで私、クロの手に!?」
気が付けば、椅子に座っていたはずがいつの間にやらクロの手のひらに乗っている。
「ドールハウスのカトラリーは使いにくいようだったからな。ほら、あーん」
微妙に答えになっていない気がするけれど……。
爪楊枝のような細いピックに刺した肉を口元に差し出され、反射的にパクリと頬張った。
もぐもぐもぐもぐ……あ、美味しい。
よく煮込まれた牛肉は、大きめに切り分けられているにも関わらず噛んだ端からはらりとほどける。
褐色のソースはトマトの酸味を残しつつもまろやかでコクがあり、口腔いっぱいを幸せな風味で満たした。
「酒が無理なら果実水もある。……そもそも妖精に成人年齢という概念はあるのか……?」
「んぐっ、お酒! お酒いただきます! 二十歳を越えてるので大丈夫です!」
このモヤモヤと渦巻く気持ちを落ち着けるためには、お酒の力を借りるしかない!
――現実逃避なのは重々承知のうえだ。
夢の中でまで現実逃避とは、自分は一体どこに向かっているのか。
ぽとん
どうしよう……。
長時間放置してみても指輪に変化がないようだったら、次は……。
冷やしてみるのはどうだろう?
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ぐっ――――カツンッ
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この部屋には窓がないから、空を見るためには隣の執務室に……。
「ヒナ、どうした? 何か嫌いなものでもあったか?」
「いえ、全部美味しそうです」
ぐっ――――カツンッ
ぽとん
ミニチュアフォークの丸い先端で刺しそこなった人参グラッセが、ぴょんと跳ねて皿の外に落ちた。
今私がいるのは、巨大なローテーブルの上に置かれたミニチュアテーブルセットの椅子の上。
夕食を手に入室したクロが「少々開けてもいいだろうか?」なんて言うから何をするのかと思ったら、ドールハウスの壁を押さえてガパッと左右に割り開いたのには驚いた。
まさか開けられる構造だったとは……。
しかし考えてみれば当然だ。ハウスを開けなくては、家具や小物を配置することもできないのだから。
ドールハウスの食堂側を開いてテーブルや食器類を摘まみ上げるクロを見ながら、開かれたのが宝物庫側でなくてよかったと大きく胸を撫で下ろしたことは言うまでもない。
…………
「あーん」
ぱくっ、もぐもぐもぐもぐ……
「あーん」
ぱくっ、もぐもぐもぐもぐ……
「こっちはどうだ? あーん」
ぱくっ、もぐもぐもぐもぐ……
「酒は飲めるか?」
「お酒は…………あれっ!? なんで私、クロの手に!?」
気が付けば、椅子に座っていたはずがいつの間にやらクロの手のひらに乗っている。
「ドールハウスのカトラリーは使いにくいようだったからな。ほら、あーん」
微妙に答えになっていない気がするけれど……。
爪楊枝のような細いピックに刺した肉を口元に差し出され、反射的にパクリと頬張った。
もぐもぐもぐもぐ……あ、美味しい。
よく煮込まれた牛肉は、大きめに切り分けられているにも関わらず噛んだ端からはらりとほどける。
褐色のソースはトマトの酸味を残しつつもまろやかでコクがあり、口腔いっぱいを幸せな風味で満たした。
「酒が無理なら果実水もある。……そもそも妖精に成人年齢という概念はあるのか……?」
「んぐっ、お酒! お酒いただきます! 二十歳を越えてるので大丈夫です!」
このモヤモヤと渦巻く気持ちを落ち着けるためには、お酒の力を借りるしかない!
――現実逃避なのは重々承知のうえだ。
夢の中でまで現実逃避とは、自分は一体どこに向かっているのか。
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