ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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21~30話

シャバダバダ【上】

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 ポケットに添えられたクロの手にきゅっと力が籠る。

 なになに? ちょっと狭いんですけど。

「クローヴェルからも言ってやってよぉ。僕の研究に協力することがいかに魔術の発展に役立つかってさぁ」

 間延びした男性の声が発した聞き覚えのある単語に首を捻る。

 クローヴェル……?
 ――そうだ、クローヴェル! 『クローヴェル』はクロの名前だ!
 あの日聞き漏らした名前の続きがようやくわかった! 助かったー!

 こんなにもお世話になっておきながら、名前すらちゃんと把握していないことがバレたらどうしようかとヒヤヒヤしていたのだ。

「……ミディルアード、またケイゼンを困らせていたのか」

「相変わらず人聞きが悪いなぁ。ただ研究への協力を要請してただけだよ。ねぇ?」

 ミディルアードと呼ばれた男性が飄々ひょうひょうと答える。

「――リュリア火山に巣食うサラマンダーを殲滅せんめつしてくれと言って聞かないのです」

 いかにも軍人然とした硬い声が伝える状況を聞いて、クロは疲れたようにため息をついた。

「はぁ……、なぜそんなことをする必要がある」

「巣の調査のためさぁ。『サラマンダーの巣の奥を散歩中に妖精を見た』って目撃情報があったんだぁ。だからこうして遠征部隊長サマに協力を仰いでたってわけ」

「散歩で『の奥』を訪れる人間がいてたまるか。目撃情報はガセだ、ガセ。――ケイゼン、持ち場に戻っていい。俺も少々場所を借りるぞ」

「はっ、承知しました。失礼いたします!」

 ザッザッザッザと規則正しい駆け足の音が遠ざかっていく。
 残されたのは、ミディルアードとクロの二人。

「ガセかどうかなんて行ってみなくちゃわからないじゃないかぁ」

「わかるものもある。そもそも、おまえのそれは個人的な趣味だろう。そんなことに一々騎士団を使おうとするな」

 開いたポケットの口を見上げれば、ちらちらと緑色の後頭部が見える。……いや、あれは顔か。長い前髪に全面を覆われた顔。
 それでよく前が見えるものだ。

「えぇ~失礼しちゃうなぁ。趣味なんてそんな軽い気持ちじゃないさ。妖精を想うこの気持ちはねぇ、だよ。

「……趣味と何か違うのか?」

「全然違うよぉ。相手のすべてを受け入れて、己のすべてを捧げたいと思うのが『愛』さ。僕は妖精になら殺されたって嬉しいと思うなぁ」

 ポケットに添えられたクロの手に、またぎゅっと力が籠る。

 狭い狭い、狭いってば! えいっ、パンチ!
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