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21~30話
シャバダバダ【中】
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「…………なぜそこまで妖精に執心するんだ。――やはり可愛さか?」
「可愛さ? あっはは、面白いことを言うねぇ! 自然界の霊力を帯びて無から生じた生命、神の愛し子。人間の理解の範疇を超えた存在そのものの神秘性に惹かれるのさ。きっと一生かかっても理解しきれないよぉ……なんて得難く尊い存在だろう」
「…………」
「でもさぁ、クローヴェルが僕の妖精話に興味を持つなんて、一体どういう心境の変化ぁ?」
「……俺の心境に興味などないだろう」
「まあねぇ。あぁでも、禁書庫の閲覧権限と引き換えになら聞いてあげなくもないよぉ?」
「遠慮しておく。おまえもさっさと研究室に戻れ」
「釣れないなぁ~」
てっくてっくとのんびりした足音が離れると、クロも一つため息をついて、また目的地へと歩を進めた。
訓練場の奥まった一角。
先ほどたくさんの人が見えた場所からは木を隔てて死角になっている、小規模なスペース。
「シャバだーーーーっ!」
ベンチの上に立ち全身に眩しい日差しを浴びながら、私はこのうえない解放感に大きく伸びをした。
ポケットは狭かった! 外側からぎゅうぎゅうに押さえられて狭かった! とっても!!
「思わぬ足止めを食ってしまってすまなかった」
「大丈夫ですよ!」
晴れ晴れとした大空の下にいると、自分の心までも大きくなったような気がしてくるというもの。
今なら『そのケーキ一口ちょうだい』と言いながら半分近く食べられても笑顔で赦せてしまいそうな…………いや、それはどうかな?
「さっき剣士っぽい人が大勢いましたね。クロのお家って道場か何かやってるんですか?」
「いいや、道場は経営していないな。あれは騎士団の者たちだ」
「へぇー」
やはり豪邸住まいともなると警備には相当力を入れるものなのだろう。
庭に飾られていたオブジェ一つとっても、ものすごく高そうだったので納得だ。
「可愛さ? あっはは、面白いことを言うねぇ! 自然界の霊力を帯びて無から生じた生命、神の愛し子。人間の理解の範疇を超えた存在そのものの神秘性に惹かれるのさ。きっと一生かかっても理解しきれないよぉ……なんて得難く尊い存在だろう」
「…………」
「でもさぁ、クローヴェルが僕の妖精話に興味を持つなんて、一体どういう心境の変化ぁ?」
「……俺の心境に興味などないだろう」
「まあねぇ。あぁでも、禁書庫の閲覧権限と引き換えになら聞いてあげなくもないよぉ?」
「遠慮しておく。おまえもさっさと研究室に戻れ」
「釣れないなぁ~」
てっくてっくとのんびりした足音が離れると、クロも一つため息をついて、また目的地へと歩を進めた。
訓練場の奥まった一角。
先ほどたくさんの人が見えた場所からは木を隔てて死角になっている、小規模なスペース。
「シャバだーーーーっ!」
ベンチの上に立ち全身に眩しい日差しを浴びながら、私はこのうえない解放感に大きく伸びをした。
ポケットは狭かった! 外側からぎゅうぎゅうに押さえられて狭かった! とっても!!
「思わぬ足止めを食ってしまってすまなかった」
「大丈夫ですよ!」
晴れ晴れとした大空の下にいると、自分の心までも大きくなったような気がしてくるというもの。
今なら『そのケーキ一口ちょうだい』と言いながら半分近く食べられても笑顔で赦せてしまいそうな…………いや、それはどうかな?
「さっき剣士っぽい人が大勢いましたね。クロのお家って道場か何かやってるんですか?」
「いいや、道場は経営していないな。あれは騎士団の者たちだ」
「へぇー」
やはり豪邸住まいともなると警備には相当力を入れるものなのだろう。
庭に飾られていたオブジェ一つとっても、ものすごく高そうだったので納得だ。
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