ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

文字の大きさ
63 / 165
21~30話

怪我のチェックもほどほどに【下】

しおりを挟む


 ヤシュームが退室したのを見届けて、私もクロの陰から出る。

「お仕事するんですか?」

「そのつもりだ。すまない、ヒナには退屈な思いをさせてしまうと思うが……」

「私のことは大丈夫ですよ。ただ、安静第一ですから、くれぐれも無茶はしないでくださいね!?」

 ビシッと指を突きつけて釘を刺せば、クロも神妙な顔で頷いてくれた。

「ああ――ヒナを泣かせたくはないからな」


 仕事に打ち込むクロの手元をじっと見つめる。
 書類をめくる左手や、羽根ペンを走らせる右手……に触れていては邪魔だろう。

 少し考え、上体を起こしたクロの腰元まで掛かった布団へと潜り込んだ。
 ゴソゴソと目的地を目指して内部を進む。

「ヒナ!? 何をしているんだ……?」

 クロの寝衣の裾から忍び込んだ私は下穿きの布の上を進み、一方の太ももに跨がって腰を下ろすと、素肌の腹筋にピトリとへばりついた。
 クロが少しでも安静に過ごせるよう、肌に触れて魔力を吸収しておくのだ。

「私のことはお構いなく!」

「いや、しかし……」

 うんうん、これで心置きなく仕事に集中してもらえるはず!



 夕食が運び込まれてクロの寝衣から出ると、クロはずいぶんと疲れたような顔をしていた。

「やっぱり! 怪我したばかりなのに仕事なんてするから、ゲッソリしちゃってるじゃないですか!」

「………………そうだな」

 無茶は禁物だと言っておいたのに、まったくもう!

 私が自分でやると言うのも聞かずせっせと料理を切り分けたクロは、いつも通り私を左手に抱き上げた。
 しかしこれでは、クロが怪我をした右腕だけで食事をとることになってしまう。

「あの……肩の怪我は痛みませんか?」

「ああ、すっかり元通りになっている。痛みも違和感もないから安心してくれ」

「でも私、自分で食べられますよ……?」

 私の言葉を聞いたクロは、残念な宣告でもするかのように目を閉じて首を振った。

「それでは治るものも治らなくなる」

 すっかり治ったと言っていたはずでは……。




 食後にもまた少し仕事をして、お風呂の時間になった。
 湯船に浸かるクロに、改めて抱っこをせがむ。

「右肩が見える位置まで抱っこしてください!」

 左手のひらに乗せてもらいクロの右肩へと接近した私は、肩先から首元までぺたぺたと触れて確かめた。

「本当に傷がない……」

 ついでに周辺も入念に確認する。
 大きな怪我に気をとられ、小さな傷を見落としているかもしれないので。

 ぺたぺた……
 ぺたぺた……

「…………ヒナ、もうそれくらいでいいだろう」

 声をかけられハッと気付くと、息がかかりそうな距離にクロの顔があった。
 私はいつの間にやら両手でクロの顔を抱え込んで、顔の傷をチェックしていたらしい。

「あっ、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって」

「それは構わないんだが……少々問題が生じてな……」

「問題?」

 もしや痛みがぶり返してしまったのだろうか?
 クロが無言で視線を落とすものだから、私も釣られて下を見る。

 湯面から覗く盛り上がった胸筋、お湯の中に見えるボコボコと割れた腹筋、そして――――。

「なっ……」

 真っ直ぐ天を向いてそそり立ったソレと、ばっちり目が合った。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

落ちて拾われて売られて買われた私

ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。 最終的には溺愛になる予定です。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...