ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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21~30話

適切に処理しましょう【上】 ※

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「その……、それ……なんで…………」

 目を逸らすこともできず、ソレと見つめ合ったまま問いかける。
 だって、昨日のお風呂ではなんともなかったはずなのに。

「……申し訳ない」

「いや、それは別に……いい(?)んですけど……」

 盛大に困惑する頭のなかで、女としてのプライドがちょっぴり喜んでいるのも事実なので。

「申し訳ないついでに、この場で処理させてもらってもいいだろうか」

「えっ」

 申し訳ない???

「できれば、目を閉じていてもらえるとありがたい」

「――はっ!」

 その言葉にようやく我に返った私は、慌ててぎゅっと目をつむり、さらには両手でしっかりと目元を覆った。

 なんてこと! 未知の生物と遭遇したかのごとく、思いっきり見つめ合ってしまった!
 だって、だってクロが視線を下げるから! まさかになってるなんて全然……!

「すみません!! もう見ませんから……っ!」

 目を塞いで口もつぐめば、浴室に静寂が訪れる。

 ――――ゴクリと、クロの喉が鳴った。

 ゆっくりと吐き出された吐息が、ぺたんと座る私の膝頭を撫でる。
 クロは一体何をしようというのだろう。『処理』と言っていたけれど……。

 様子を探るように耳を澄ませれば、ちゃぷ、ちゃぷ、と湯面の揺れる音が聞こえる。
 私の乗っている左手にも僅かに振動が伝わるので、クロはどこかしら身体の一部分を動かしているようだ。

 視線――を、感じる気がするのは気のせいだろうか。視界を塞いでいるのでわからない。

「はぁ……、っ……」

「!」

 妙に艶っぽい吐息が聞こえ、心臓が跳ねる。

「はっ……」

 熱を帯びた吐息は耳から勝手に私の中に侵入し、身体の奥底に微かな熱を蓄積していく。

 なんだか居たたまれない気持ちになってくるのはどうしてだろう。
 耳も塞いでしまいたいのに、両手はぎゅっと目元を押さえたまま動かせない。
 何が起こっているかわからないけれど、絶対に視界を解放してはいけない予感がするので。

「うひゃっ!?」

 ちゅ、と、こめかみに口付けられる感触。

「はっ……」

 そのまま耳元を熱い吐息に撫でられ、ゾクリと背筋が反った。

 唇はすぐに離れたけれど、クロの顔はまだ近くにある気がする。
 徐々に荒くなる息遣いが、お腹にかかっているから。

 ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ

 規則的に湯面を揺らす音も、速度を増していく。

「ヒナ……」

「っ――!」

 目の前で名前を呼ばれたものの、返事をしてはいけない気がしてきゅっと唇を引き結んだ。

 艶めいた空気が、お腹にかかる吐息が、身体の奥が――熱い。

「はっ、ヒナ……」

 余裕なく名前を呼ばれるたび、胸が騒ぐ。
 どうしようもなくそわそわとして、熱を逃がそうと身をよじる。
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