ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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21~30話

苦労人は突然に【下】

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「差し支えなければ、私にも触れてみていただいてよろしいですか?」

「はい、構いませんよ」

 私が了承の返事をすると、なぜだか背後で残念そうなため息が漏れた。

「やめておいたほうがいいと思うぞ」

「いいえ、この身で確かめさせていただきたく思います。では……」

 ヤシュームは緊張感たっぷりに、そろそろと手を差し出す。

 そんなに身構えられるとこちらまで緊張してくるのでやめてほしい……。
 何も、取って食うわけじゃないのだから。

 緊張感が伝染する前に早く済ませてしまおうと、手近な位置に差し出された中指の先端にぺたりと手を触れた。

 ドサッ

「…………えっ?」

 生い茂る草葉を体内にぎゅうぎゅうと押し込まれるような不快感に私が顔をしかめている間に、ヤシュームが目の前から消えた。
 ――否。下を見れば、椅子から転げ落ちたヤシュームが倒れていた。

「ヤシュームさん!?」

 また剣が飛んできたのだろうか!?
 真っ青になって寝室を見渡す私の背を、温かな指先がさする。

「大丈夫、ヤシュームは無事だ」

「でもっ、急に倒れて……!」

「ヤシューム、意識はあるだろう。ヒナが心配するからさっさと起き上がれ」

 クロの声に応じるように、ヤシュームがふらふらと身体を起こした。
 青白い顔をして、見るからに体調が悪そうだ。

「も、申し訳ありません……。ヒナ様、貴重なお力を見せていただきありがとうございます……」

「いえ、そんな……」

 触れた瞬間倒れ込んだヤシューム。
 こうなることがわかっていたかのように、動じないクロの反応。
 これはまさか……。

「倒れたのって、もしかして魔力吸収のせいですか……?」

「はい。私程度の魔力量ではヒナ様の吸収に耐えきれず、大変失礼いたしました」

「そんな! 私のせいで――」

「ヒナ、これはヤシュームが望んだことだ。何も気にすることはない」

 クロの言葉に私を擁護するような気配はなく、本心からそう思って言っているのだと伝わってくる。

「ええ、ヒナ様にはご協力いただき感謝しております。申し訳ありませんが、私はこれで……」

「ああ。ゆっくり休むといい」

 安静を言い渡されても仕事を続けるクロの言葉に、ヤシュームは苦笑しながらよろよろと席を立った。

「……ヤシューム」

「はい?」

扉の前で振り返ったヤシュームへと、クロが右手を向ける。

「マフェクト」

「――! 恐れ入ります……っ」

「有り余っているからな」
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