ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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21~30話

王子様みたいな王子様【下】

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 …………

 ガチャッ

「ヒナ」

「あれ?」

 夕食の時間には幾分早いクロの訪問を不思議に思いつつも、ドールハウスの玄関を目指す。

 ガパッ

「どうしたんで――」

 玄関扉を開けて見れば、そこには煌びやかな衣装をまとった凛々しいクロの姿があった。

 コバルトブルーの軍服風の詰め襟に、金の飾緒しょくしょ
 襟元にファーのついた白いマントを羽織り、輝きを放つたくさんの宝飾品にも引けを取らない美しく堂々としたたたずまい。
 いつもとは別人のようで、なんだか少し緊張してしまう。

「…………すごい。王子様みたい……」

「王子だからな」

 陶然と洩れた呟きがあっさりと肯定される。
 その手には、小さな皿が一枚乗せられていた。

「今夜は夜会があるんだ。欠席したかったんだが、安静期間は終わったのだからと聞き入れられなくてな」

「はぁ……」

「すまないが、今夜は一緒に食事をとれなくなってしまった。スプーンで食べられるものを中心に持ってきたから、気をつけて食べるように」

 そう言ってミニチュアテーブルに皿を置くクロの眉間には深い深いシワが刻まれ、戦場にでも向かうかのような厳めしい顔つきをしている。

「戻りも遅くなる。俺に構わず寝ていてくれ」

「それはわかりましたけど……。そんなにパーティーが嫌いなんですか?」

 トントンと自分の眉間を指し示して、クロのしかめ面の理由を問う。
 いつもは下ろしている前髪を今はオールバックにまとめあげているものだから、より一層眉間のシワが目立つのだ。

「ああ、夜会が嫌いなわけではない。得意でもないがな。……人が多く集まる場では、いつも以上に厳重に魔力を抑制しておく必要がある。その反動で少々痛苦にむしばまれているだけだ。毎度のことだから問題ない」

「それは……」

 問題大ありだろう。
 私と対面する前の一人きりの休憩室でさえ、魔力を抑制しながら苦しそうにうなされていたというのに。
 人ごみの中でさらに強く抑制しなくてはいけないなんて、無茶もいいところだ。

 想像もつかないほどの痛みも苦しみもすべて、周囲の人たちを強すぎる自分の魔力から守るためのもの。
 今までずっと、そうやって一人で耐えながら過ごしてきたのだろうか。

「私――――」

『私が魔力吸収しながら一緒についていきましょうか?』

 身分の違いを痛感させる王子様然としたクロを前に、提案の言葉は喉の奥に貼りついたままどうしても出てはこなかった。
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