75 / 165
21~30話
王子様みたいな王子様【下】
しおりを挟む…………
ガチャッ
「ヒナ」
「あれ?」
夕食の時間には幾分早いクロの訪問を不思議に思いつつも、ドールハウスの玄関を目指す。
ガパッ
「どうしたんで――」
玄関扉を開けて見れば、そこには煌びやかな衣装をまとった凛々しいクロの姿があった。
コバルトブルーの軍服風の詰め襟に、金の飾緒。
襟元にファーのついた白いマントを羽織り、輝きを放つたくさんの宝飾品にも引けを取らない美しく堂々とした佇まい。
いつもとは別人のようで、なんだか少し緊張してしまう。
「…………すごい。王子様みたい……」
「王子だからな」
陶然と洩れた呟きがあっさりと肯定される。
その手には、小さな皿が一枚乗せられていた。
「今夜は夜会があるんだ。欠席したかったんだが、安静期間は終わったのだからと聞き入れられなくてな」
「はぁ……」
「すまないが、今夜は一緒に食事をとれなくなってしまった。スプーンで食べられるものを中心に持ってきたから、気をつけて食べるように」
そう言ってミニチュアテーブルに皿を置くクロの眉間には深い深いシワが刻まれ、戦場にでも向かうかのような厳めしい顔つきをしている。
「戻りも遅くなる。俺に構わず寝ていてくれ」
「それはわかりましたけど……。そんなにパーティーが嫌いなんですか?」
トントンと自分の眉間を指し示して、クロのしかめ面の理由を問う。
いつもは下ろしている前髪を今はオールバックにまとめあげているものだから、より一層眉間のシワが目立つのだ。
「ああ、夜会が嫌いなわけではない。得意でもないがな。……人が多く集まる場では、いつも以上に厳重に魔力を抑制しておく必要がある。その反動で少々痛苦に蝕まれているだけだ。毎度のことだから問題ない」
「それは……」
問題大ありだろう。
私と対面する前の一人きりの休憩室でさえ、魔力を抑制しながら苦しそうにうなされていたというのに。
人ごみの中でさらに強く抑制しなくてはいけないなんて、無茶もいいところだ。
想像もつかないほどの痛みも苦しみもすべて、周囲の人たちを強すぎる自分の魔力から守るためのもの。
今までずっと、そうやって一人で耐えながら過ごしてきたのだろうか。
「私――――」
『私が魔力吸収しながら一緒についていきましょうか?』
身分の違いを痛感させる王子様然としたクロを前に、提案の言葉は喉の奥に貼りついたままどうしても出てはこなかった。
33
あなたにおすすめの小説
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
落ちて拾われて売られて買われた私
ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。
最終的には溺愛になる予定です。
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる