ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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21~30話

手のひらまでの距離【下】

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「利用……?」

「ああ。きつく魔力抑制を続けた今、俺の中では膨大な魔力があふれ出そうと渦巻いている。そんな状態でヒナに触れるなど、ヒナの能力魔力吸収を利用して楽になろうとしているようなものじゃないか」

「……楽に、なったらいいじゃないですか……?」

 それならなおのこと、一刻も早く私に触れるべきだろう。
 話が見えない。

「能力があるから側にいるわけではないのだと、ヒナに示したかったんだ。――いや、その結果ヒナを傷つけたのだから失敗だったが」

「…………」

 私は生きるための何もかもをクロに助けられていて、その厚意に報いたいからと自分にできることをしているに過ぎない。
 先に手を差し伸べてくれたのはクロだ。
 それを今さら、能力のために側にいるだなんて思うわけがないのに。

「本音を言えば、顔を見た瞬間からずっと……今だって、ヒナに触れたくてたまらない。能力のためでなく、『ヒナ』だから触れたいんだ」

「……本当に?」

 拗ねてクロを困らせる私のご機嫌とりではなくて?

 本音を探るようにクロを見つめれば、冬空のようなアイスブルーの瞳が、嬉しそうに、穏やかに、すべてを包み込むような深さをもって私を受け止めた。

「もちろん。ヒナ、触れる許可をもらっても?」

 かたわらに差し出された手のひらが、じっと私の返事を待つ。
 与えられた居場所。言い知れぬ安堵にすんと鼻をすすり、涙の残る瞳でクロを見つめる。

「……はい。気付いたんですけど私、クロに触られるのが好きみたいで――」

 話も終わらぬうちに優しい手のひらに抱きすくめられ、押しいただくように額を寄せられた。

「――――っはぁぁ、もう無理だ……」

「そんなにお疲れですか?」

 クロが弱音を吐くなんて珍しい。

 目の前にある額に両手を触れ、ぺたりと頬まで付けて寄り添う。
 触れた部分からは、ぬるま湯のような温かさがせきを切ったように流れ込んでくる。

「これくらいの疲労はなんでもない。……なあヒナ、先ほどの言葉はヤキモチだろうか?」

「それは……」

 拒絶されたと思い込んだショックで、余計なことを口走った気がする。
 あれは勢いで口をついて出てしまっただけなので、どうか蒸し返さずに忘れていただきたい。

 ゆっくりと顔を起こしたクロは、鼻先が触れそうなほどの至近から真っ直ぐに私を見つめて告げた。

「ヤキモチだと言ってほしい。――ヒナ、愛しているんだ。一人の女性として」
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