87 / 165
31~40話
世界の始まりを迎える指輪【下】
しおりを挟む
「この指輪の名は『宵明く光』。世界の始まりの光を意味している。――にも関わらず、宝石が闇色をしていることがずっと不思議だった」
とうとう話が指輪のことに及び、ぐっと身構える。
お腹に力を込めて、何を言い渡されても心臓が飛び出してしまわないよう歯も食いしばっておく。
「しかし、この透明になった宝石を見てようやくわかった。これこそがこの指輪の本来の姿なのだろう。――光の名を冠し、運命の相手へ導くという、闇色の指輪。それはつまり――」
ゴクリと、喉を鳴らしたのは誰だったろうか。
「運命の相手が触れることで、『世界の始まりを迎える』指輪だったということだ」
運命の相手。
世界の始まり。
本来の指輪の姿。
クロの言葉を頭の中で反芻しながら、まじまじとクロの持つ指輪を見つめる。
「………………つまり…………私より先に、誰かが指輪に触ってたってことですね……?」
「どうしてそうなる」
クロがじとりと私を見つめる。
うむ、やはりそう都合よく別の真犯人は出てこないか……。
「指輪はヒナが触れた瞬間変化したと言ったな」
「はい……、内側から光るみたいにパァッと……」
「ならば、俺の『運命の相手』は決まっているだろう」
「……?」
長引く緊張感に動きの鈍くなった思考をカタコトと巡らせながら、目の前に差し出された手のひらに無意識に乗り込む。
気が付けば、いつものようにクロの顔の高さへと持ち上げられて、じっと顔を覗き込まれていた。
「当事者の意思を度外視したような『運命』という言葉はあまり好きではないが……。やはり俺の相手は、ヒナしかいないということだ」
ちゅ、と頬に口づけが落ちると同時に、「ひゃっ」と小さな悲鳴が上がった。
クロの視線が、すいと悲鳴の主に移る。
「ヤシューム、父上と話がしたい」
「ひっ、はっ、はひ! かしこまりました! ただちに確認して参ります……っ!」
赤い顔をしたヤシュームは、転げるようにソファを下りて執務室を飛び出していった。
二人きりの部屋のなか、カタコト、カタコト、思考を回す。
「私が、クロの、『運命』……?」
「ああ」
「指輪の弁償は……?」
「ふっ、なぜそんなことをする必要がある。運命の相手が見つかり、しかもそれがヒナだったんだ。こんなに喜ばしいことはない」
「……私、死刑になりませんか……?」
「そんなことは絶対に起こりえない。例えヒナが、この指輪を壊していたのだとしてもだ」
その言葉を聞いた途端、ずっと張り詰めていた身体中の空気が抜けた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ…………よかった……」
とうとう話が指輪のことに及び、ぐっと身構える。
お腹に力を込めて、何を言い渡されても心臓が飛び出してしまわないよう歯も食いしばっておく。
「しかし、この透明になった宝石を見てようやくわかった。これこそがこの指輪の本来の姿なのだろう。――光の名を冠し、運命の相手へ導くという、闇色の指輪。それはつまり――」
ゴクリと、喉を鳴らしたのは誰だったろうか。
「運命の相手が触れることで、『世界の始まりを迎える』指輪だったということだ」
運命の相手。
世界の始まり。
本来の指輪の姿。
クロの言葉を頭の中で反芻しながら、まじまじとクロの持つ指輪を見つめる。
「………………つまり…………私より先に、誰かが指輪に触ってたってことですね……?」
「どうしてそうなる」
クロがじとりと私を見つめる。
うむ、やはりそう都合よく別の真犯人は出てこないか……。
「指輪はヒナが触れた瞬間変化したと言ったな」
「はい……、内側から光るみたいにパァッと……」
「ならば、俺の『運命の相手』は決まっているだろう」
「……?」
長引く緊張感に動きの鈍くなった思考をカタコトと巡らせながら、目の前に差し出された手のひらに無意識に乗り込む。
気が付けば、いつものようにクロの顔の高さへと持ち上げられて、じっと顔を覗き込まれていた。
「当事者の意思を度外視したような『運命』という言葉はあまり好きではないが……。やはり俺の相手は、ヒナしかいないということだ」
ちゅ、と頬に口づけが落ちると同時に、「ひゃっ」と小さな悲鳴が上がった。
クロの視線が、すいと悲鳴の主に移る。
「ヤシューム、父上と話がしたい」
「ひっ、はっ、はひ! かしこまりました! ただちに確認して参ります……っ!」
赤い顔をしたヤシュームは、転げるようにソファを下りて執務室を飛び出していった。
二人きりの部屋のなか、カタコト、カタコト、思考を回す。
「私が、クロの、『運命』……?」
「ああ」
「指輪の弁償は……?」
「ふっ、なぜそんなことをする必要がある。運命の相手が見つかり、しかもそれがヒナだったんだ。こんなに喜ばしいことはない」
「……私、死刑になりませんか……?」
「そんなことは絶対に起こりえない。例えヒナが、この指輪を壊していたのだとしてもだ」
その言葉を聞いた途端、ずっと張り詰めていた身体中の空気が抜けた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ…………よかった……」
42
あなたにおすすめの小説
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる