95 / 165
31~40話
全エネルギーを使い果たした【中】
しおりを挟む
「私はね、一国の王として国の未来を想うと同時に、一人の父親として息子の幸せを願っているんだよ。ある令嬢との一件以降すっかり結婚を諦めてしまった息子にも、心を預け、互いを大切に思い合える相手を見つけてほしかったんだ。――守りたいものができて初めて、人は強くなれるからね」
ゆったりと穏やかな口調が心を撫でる。
「少しばかり女性心に疎いきらいがあるが、人の心のわからない人間ではない。なかなかいい男に育ったと思っているが、ヒナ嬢の目から見てどうかな?」
「……本当に……すごく素敵な人だと思います」
日頃から思っていることを口にしただけなのに、なぜかじわりと頬に熱が集まってくる。
私の返事に、王様はにっこりと笑みを深めた。
「そんな息子の選んだ相手だ。ヒナ嬢も、素敵なレディーだと確信しているよ」
来たときよりも軽くなった心を胸に、クロのポケットに収まって王様の寝室を出る。
私の移動用に『輿』のようなものを用意してはどうかという話も出たけれど、それに関してはどうにか遠慮したいところだ。
「――これはこれは王太子殿下」
声のした方を振り返れば、妙に偉そうな初老の男性と小学一年生くらいの少年が、従者を伴ってこちらに歩いてくるところだった。
まだ幼児特有のぷっくり感を残した少年は、やわらかそうな茶色い巻き毛が歩くたびにふわふわと揺れて、天使のように愛らしい。
「珍しい所でお会いしますな。陛下に何か御用でもおありでしたかな?」
「用がなければ父親の見舞いに来てはならないとでも? ……ネラウェル、またバーグ卿に遊んでもらっていたのか」
「遊びじゃありませんっ!」
ネラウェルと呼ばれた少年は、怒ったようにそう言って男性の脚の後ろに隠れてしまった。
くりくりしたアメジストの瞳を吊り上げ、『嫌いだ』と言わんばかりにクロを睨む。
ゆったりと穏やかな口調が心を撫でる。
「少しばかり女性心に疎いきらいがあるが、人の心のわからない人間ではない。なかなかいい男に育ったと思っているが、ヒナ嬢の目から見てどうかな?」
「……本当に……すごく素敵な人だと思います」
日頃から思っていることを口にしただけなのに、なぜかじわりと頬に熱が集まってくる。
私の返事に、王様はにっこりと笑みを深めた。
「そんな息子の選んだ相手だ。ヒナ嬢も、素敵なレディーだと確信しているよ」
来たときよりも軽くなった心を胸に、クロのポケットに収まって王様の寝室を出る。
私の移動用に『輿』のようなものを用意してはどうかという話も出たけれど、それに関してはどうにか遠慮したいところだ。
「――これはこれは王太子殿下」
声のした方を振り返れば、妙に偉そうな初老の男性と小学一年生くらいの少年が、従者を伴ってこちらに歩いてくるところだった。
まだ幼児特有のぷっくり感を残した少年は、やわらかそうな茶色い巻き毛が歩くたびにふわふわと揺れて、天使のように愛らしい。
「珍しい所でお会いしますな。陛下に何か御用でもおありでしたかな?」
「用がなければ父親の見舞いに来てはならないとでも? ……ネラウェル、またバーグ卿に遊んでもらっていたのか」
「遊びじゃありませんっ!」
ネラウェルと呼ばれた少年は、怒ったようにそう言って男性の脚の後ろに隠れてしまった。
くりくりしたアメジストの瞳を吊り上げ、『嫌いだ』と言わんばかりにクロを睨む。
42
あなたにおすすめの小説
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる