ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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31~40話

全エネルギーを使い果たした【下】

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「いやはや、遊びなどとは人聞きの悪い。僭越せんえつながらわたくしめが、第二王子殿下のお勉強を見させていただいていたのですよ」

「ほう、宰相というのは随分と時間を持て余しているものらしい」

を育むことこそ、国の発展にとっての最重要案件ですからな」

「それは忠義なことだ」

 男性のやり取りを眺めつつ、『慇懃無礼いんぎんぶれい』とはこういう態度のことを指すのかと知見を得る。

 見えない刃の応酬のような会話を終え、クロはまた長い長い廊下を渡って部屋へと戻った。





「つっ……かれたぁーーーっ!」

 執務室の机の上に降ろされ、ぱたりとその場に倒れ込む。

 いろんな人に会ったし、王様との謁見は緊張したし、とんでもない失敗に心臓が縮みあがったし。
 とにかく疲れた。
 もうダメ。
 何もできない。

「気苦労をかけてすまない。父上への紹介に応じてくれてありがとう、ヒナを紹介できて嬉しかった」

 机の上に置かれたクロの手にぴとりと頬を付けて寝そべると、流れ込むぬるま湯のような心地よさにほぅと息をついた。

「でも私、失礼なことばっかりしちゃって……」

「そんなことはない。父上は俺を信じているようなことを言っていたが、実際に自分の目で見てダメだと判断すれば、冷たくあしらわれ即座に追い出されていたはずだ」

 なにそれ怖い!
 起こったかもしれない『もしも』を想像して、ぶるりと震える。

「そういうことは事前に教えておいてほしかったです……」

「ヒナなら必ず認められると思っていたからな」

 話しながら、クロは寝そべる私の背面のボタンを一つ一つ外しだした。
 着なれないドレスの緩められていく解放感に、緊張に固まった身体もほどけて呼吸が深まる。

 取り急ぎひとまとめに執務机の引き出しに突っ込まれていた衣装の山から、クロはシンプルなワンピースを取り出した。

「ほら、着替えるだろう?」

「はーぃ……」

 脱皮のようにズルズルとドレスを抜け出した私は、シュミーズ姿のまま目の前に置かれたワンピースへもそもそと潜り込んだ。
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