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31~40話
その姿を求めて《クロ視点》【下】
しおりを挟むミディルアード=ウルカノン。
乳母として世話になったウルカノン子爵夫人の第三子であり、一般的には幼馴染みと呼べるであろう関係にあった男。
魔力量は平均を少し上回る程度にも関わらず魔力の親和性が高く、俺の側にいても魔力酔いを起こしにくい相手。
側に置ける相手のいることに、安心感を覚えたことがないと言えば嘘になる。
――しかし、それももう過去の話だ。
奴は姿を見たことさえない『妖精』という存在に焦がれ、心酔している。
ならばひとまず、妖精であるヒナが害される心配はないだろう。
しかし奴は、妖精を愛しているとも言ったのだ。
己の欲求を満たすためには手段を選ばない男に、倫理観など期待するのも馬鹿馬鹿しい。
禁書庫の扉を破ろうとして捕まったことも一度や二度ではない。
そんな人間が愛する存在を手中に収めたなら――何をするのかなど、想像もつかない。
まさか……愛しあいたいと暴走して、口にするのも憚られるような行為を――――
バチンッ!
両手で頬を打ち思考を切り換える。
冷静になれ。とにかく今は、一刻も早くヒナを救うのだ。
専用の個人研究室にミディルアードの姿はなかった。
共同研究室を覗くも、作業中の研究員たちのなかに奴の姿は見えない。
どこかに身を潜められてしまったなら厄介だ。
「ミディルアード=ウルカノンはいるか」
「! っお、王太子殿下にご挨拶申し上げ――」
「挨拶はいい。ミディルアードの居場所に心当たりは」
「それでしたら、普段は大抵第二備品室に籠もっているかと……」
「礼を言う」
魔術師棟の見取り図を思い浮かべながら廊下を進み、《第二備品室》の文字を見るや蹴破るようにドアを開けた。
バキッ!
むわりと、薬品特有の臭いが押し寄せる。
整頓とは程遠い雑多な部屋の中。薬草や器具の散乱する机の片隅に――心の底から渇求した姿があった。
全身にどっと血液が巡る。
その一点を中心に、急速に視界がクリアになっていく。
ようやく息を吸い込むと、愛する者の名を呼んだ。
「ヒナ!!」
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