ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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31~40話

その姿を求めて《クロ視点》【上】

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「――により――、――で根を広げ――――」

 ちょうど温室に居合わせた栽培担当者から、詳しい説明を聞く。

 魔法薬調合における有用性や、生育に広いスペースを要することは理解したものの、隣接した区画で栽培されているのも繊細な扱いを要する希少種だ。

「ふむ……、スペース確保のために付近の植物を移動させるというのは少々難しいな。ここよりも多少奥まった位置になるが、新たな温室の建設を検討してもいい。ミディルアードはそれで…………ミディルアード?」

 意見を聞こうと振り返ってようやく、の不在に気付いた。

「ウルカノン先輩でしたら、温室に入ってすぐに引き返していきました。てっきりお渡しする資料を取りに行ったのかと思っていたのですが……まだ戻りませんね」

 不思議そうに首を傾げる研究員を前に、嫌な予感が胸をよぎる。

「急用を思い出した」

「承知いたしました。本日はご多忙のなか貴重なお時間をいただき――」

 挨拶を聞き終えることさえもどかしく、くるりときびすを返す。
 礼を欠いて申し訳ないが、火急の確認を要する懸念事項がある。

 不安に急き立てられるように歩を進め、気が付けば駆け足で執務室を目指していた。





 ガチャッ

「ヒナ!」

 ざっと室内を見渡し、大股で執務机へと向かう。

「ヒナ!?」

 机の上に姿はない。
 積み上げた本の陰にも、封蝋を熱する小型ランプの後ろにも。
 隠れ場所として半分だけ開けておいたはずの引き出しがなぜか全開になっているのを見て、ゾワリと心臓の凍るような心地がした。

 すべての引き出しを開く。
 インク壺の中を覗き込み、本のページの間をあらため。
 床に頬を擦りつけて机の下まで入念に確認し、それでも見えぬ小さな姿に今一度呼びかける。

「ヒナ、どこにいる!?」

 ……………………

 答える者のない静寂こそが、だった。
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