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31~40話
被害状況の確認と……【下】
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瞬きもせずこちらを見つめるクロに、『いろいろ』の内容について説明する。
「えっと……変な実験器具みたいなのを取り付けてあれこれ計測されたり、目や口内をルーペでじっくり観察されたり、綿棒で唾液を取られたり、髪を一本抜かれたりしただけ……です」
要は、研究材料として扱われたのだ。
込み上げる不快感に耐えるのはきつかったけれど、被害といえる被害は髪を一本抜かれたことくらいである。
「……服を脱がされたりは」
クロの言葉にぶんぶんと首を振る。
ワンピースの裾をめくられはしたけれど、あれは単にワンピースの素材を確認していただけだった。
「なので、私はどこも傷つけられてませんよ。拐われたことはもちろん、すごく怖かったですけど……クロなら助けに来てくれるって、信じてました!」
「そう、か…………。っ、無事でよかった……っ」
体中の空気が抜けるような長い長いため息を吐き出して、クロはそれでもまだ不安そうにきゅうと私を抱きしめた。
「本当はクロと練習した『いっぱい吸い込む』で反撃したかったんですけど、あの人ずっと手袋をはめてて……」
毎晩寝る前に行なっている『制御訓練』の一環で、最近は『多量の魔力を吸い込む』練習もしているのだ。
一気に吸い込んでおければ、私と離れている時間でもクロが楽に過ごせるのではと考えたのだけれど……。結局クロの魔力の回復速度が速くて、大した時間稼ぎにはならなかった。
今回だって、初めて見る素材に素手で触れるのは馬鹿のすることだと言って、ミディルアードは最初から実験用手袋をはめていたため、素肌に触れての魔力吸収ができなかった。
『吸い込まない』と併せて練習を続けてはいるものの、あまり役立ちそうにない能力だ。
「いいや、俺がもっと早くに気付ければよかったんだ。そもそも離れたりしなければ……。すまないヒナ。贖罪にもならないが、元凶は裁判にかけたうえで正当に始末しておく。もう二度と、ヒナに不埒な考えを抱かないように」
「もぅ、手なんか出さないってぇ……ッゴホ」
「罪人の戯れ言など誰が信じる」
「だってソレ、霊力どころか魔力さえないただの人間じゃないかぁ」
「えっと……変な実験器具みたいなのを取り付けてあれこれ計測されたり、目や口内をルーペでじっくり観察されたり、綿棒で唾液を取られたり、髪を一本抜かれたりしただけ……です」
要は、研究材料として扱われたのだ。
込み上げる不快感に耐えるのはきつかったけれど、被害といえる被害は髪を一本抜かれたことくらいである。
「……服を脱がされたりは」
クロの言葉にぶんぶんと首を振る。
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「なので、私はどこも傷つけられてませんよ。拐われたことはもちろん、すごく怖かったですけど……クロなら助けに来てくれるって、信じてました!」
「そう、か…………。っ、無事でよかった……っ」
体中の空気が抜けるような長い長いため息を吐き出して、クロはそれでもまだ不安そうにきゅうと私を抱きしめた。
「本当はクロと練習した『いっぱい吸い込む』で反撃したかったんですけど、あの人ずっと手袋をはめてて……」
毎晩寝る前に行なっている『制御訓練』の一環で、最近は『多量の魔力を吸い込む』練習もしているのだ。
一気に吸い込んでおければ、私と離れている時間でもクロが楽に過ごせるのではと考えたのだけれど……。結局クロの魔力の回復速度が速くて、大した時間稼ぎにはならなかった。
今回だって、初めて見る素材に素手で触れるのは馬鹿のすることだと言って、ミディルアードは最初から実験用手袋をはめていたため、素肌に触れての魔力吸収ができなかった。
『吸い込まない』と併せて練習を続けてはいるものの、あまり役立ちそうにない能力だ。
「いいや、俺がもっと早くに気付ければよかったんだ。そもそも離れたりしなければ……。すまないヒナ。贖罪にもならないが、元凶は裁判にかけたうえで正当に始末しておく。もう二度と、ヒナに不埒な考えを抱かないように」
「もぅ、手なんか出さないってぇ……ッゴホ」
「罪人の戯れ言など誰が信じる」
「だってソレ、霊力どころか魔力さえないただの人間じゃないかぁ」
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