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31~40話
被害状況の確認と……【中】
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大切な大切な宝物みたいに、すっぽりと両手に包み込まれる。
「クロ、クロ……!」
拐われてから一時間も経っていないというのに、この手のひらの温もりがひどく懐かしい。
寄せられた額にへばりついて、ぐりぐりと潤む目元を擦りつける。
クロが助けにきてくれた。私を探してくれた。
クロの側にさえいればもう大丈夫だと、心がほどけていく。
「……ねぇ~、いい加減その魔力放出やめてくれるぅ? 壊した備品もちゃ~んと弁償――ぅぐっ!」
ぐったりと机に突っ伏したまま顔だけをこちらに向けて不満を口にしたミディルアードが、鈍い呻き声を残して後方へ吹っ飛んだ。
ガッシャーンと派手な音を立てて棚に激突し、ボロ雑巾のように崩れ落ちてゲホゴホとひどく咳き込む。
突然椅子が爆発でもしたのかと驚いて下を見れば、クロの脚が真っ直ぐ横に突き出されているのが見えた。
「ヒナ、無事か!? 何かされなかったか!?」
ミディルアードのことなど意に介さず、クロは迷子になった子どものような、今にも泣き出しそうな顔で私を覗き込む。
クロまで泣きそうな顔をしていたら、私だってますます涙が滲んできてしまう。
「いろいろされました……」
潤む瞳でそう口にした途端、クロの顔から色が消えた。
「――ヒナ、少々待っていてくれるか? 元凶を消してくる」
私に語りかける口調は優しいけれど、め、目が……。
空洞の中を覗き込んでいるかのような感情の読めない瞳が恐ろしくて、涙も引っ込む。
「あ、あの……、私のためにクロが人殺しになっちゃうのは嫌です」
「ゲホッ、僕のことはぁ……?」
「ヒナの心と身体に取り返しのつかない傷をつけたんだ。死を以て――」
「待って待って! 待ってください! 私、そこまでのことはされてませんっ!」
ミディルアードを庇うつもりはさらさらない。さらさらないけれど、私が深く傷ついたと誤解したままクロが悲しむことになるのは嫌だ。
「クロ、クロ……!」
拐われてから一時間も経っていないというのに、この手のひらの温もりがひどく懐かしい。
寄せられた額にへばりついて、ぐりぐりと潤む目元を擦りつける。
クロが助けにきてくれた。私を探してくれた。
クロの側にさえいればもう大丈夫だと、心がほどけていく。
「……ねぇ~、いい加減その魔力放出やめてくれるぅ? 壊した備品もちゃ~んと弁償――ぅぐっ!」
ぐったりと机に突っ伏したまま顔だけをこちらに向けて不満を口にしたミディルアードが、鈍い呻き声を残して後方へ吹っ飛んだ。
ガッシャーンと派手な音を立てて棚に激突し、ボロ雑巾のように崩れ落ちてゲホゴホとひどく咳き込む。
突然椅子が爆発でもしたのかと驚いて下を見れば、クロの脚が真っ直ぐ横に突き出されているのが見えた。
「ヒナ、無事か!? 何かされなかったか!?」
ミディルアードのことなど意に介さず、クロは迷子になった子どものような、今にも泣き出しそうな顔で私を覗き込む。
クロまで泣きそうな顔をしていたら、私だってますます涙が滲んできてしまう。
「いろいろされました……」
潤む瞳でそう口にした途端、クロの顔から色が消えた。
「――ヒナ、少々待っていてくれるか? 元凶を消してくる」
私に語りかける口調は優しいけれど、め、目が……。
空洞の中を覗き込んでいるかのような感情の読めない瞳が恐ろしくて、涙も引っ込む。
「あ、あの……、私のためにクロが人殺しになっちゃうのは嫌です」
「ゲホッ、僕のことはぁ……?」
「ヒナの心と身体に取り返しのつかない傷をつけたんだ。死を以て――」
「待って待って! 待ってください! 私、そこまでのことはされてませんっ!」
ミディルアードを庇うつもりはさらさらない。さらさらないけれど、私が深く傷ついたと誤解したままクロが悲しむことになるのは嫌だ。
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