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41~50話
惜しみない愛情を【下】
しおりを挟むまだ私の髪が長かった、小学一年生のころ。
毎朝凝った髪型に結われて弾むように登校していく女の子たちを見て、おじいちゃんは髪を結ってあげられなくて申し訳ないと言った。結い方がわからないのだと。
だから私はショートカットで過ごすことにした。髪型なんて些細なことで、おじいちゃんが悲しまなくてすむように。
次々と新しい文具を買ってもらってはメモ帳やシールを交換しあう女の子の輪には入れず、身体を動かすのが好きだったこともあって男の子と遊ぶことが多かった。
周囲からは、きっと男の子のように見えていたと思う。
それでも可愛いものは好きだった。
ある年の誕生日、思い切っておねだりして、お姫様のようなフリフリのワンピースを買ってもらった。
嬉しくて嬉しくて、本物のお姫様になったような心地で学校に着ていくと、男友達は言ったのだ。
『あはは、小猿みてぇ!』
そこに悪意なんてなかった。
しかし純粋さはこのうえなく残酷で。
数日前に放送された人気番組で、リボンたっぷりのドレスを着せられた小猿が紹介されていたのもタイミングが悪かった。
口々に『小猿』と言われ。お姫様ではないのだと突きつけられ。
幼い私が自信を失うには、十分すぎるほどだった。
だからもう、可愛いものを表立って身につけることはやめたのだ。
好きだと口に出すことさえ、似合わないと笑われそうな気がして。
それをクロは――
「不安なら、安心できるまで言うだけだ。愛している。見知らぬ世界へと飛ばされてもなお他者を思いやれる、強く愛らしいヒナのことを」
「…………はい」
「ヒナのいない未来など考えられないほどに、心の底から求めてやまない」
「わ……かり、まし、た……」
見つめ合って愛を囁かれるたび、何度だってクロに堕ちていくような心地がする。
どんどん深みにはまって、帰ってこられない所まで。
耳まで熱くなっているのがわかる。
顔を隠してしまいたいのに、じっと瞳を覗き込まれれば目を逸らすことも叶わない。
「俺の愛のすべてをヒナに。――もちろん、肉欲込みで」
大きく開いた襟ぐりの縁に指を引っかけ、くいと引かれる。
「へっ?」
「俺の服に着られている姿もたまらなく可愛いが、今は中身を確認したい。どこにも異常なく、薬が効いているのかどうか」
クロの言い分はもっともだ。
自分では見えない箇所に異常があったりしては大変だから。
けれど、私を案じてくれているだけにしては、妙に目つきが……、なんというか……獲物を前にした猛獣みたいな……。
「…………確認、するだけですよね……?」
私の質問に返ってきたのは、先ほどよりも深い口づけだった。
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