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51~最終話
大きくなっても変わらないこと【中】
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カプセルは昨日、脱いだ服とともに居室のテーブルに置き去りにしてしまっていたのだ。
「これって……」
「元はペンダントだと言っていただろう? 今の姿でなら着けられるだろうと思い、チェーンを用意したんだ。勝手に選んでしまったが、気に入らなければまた新しいチェーンを買えばいい」
受け取ったペンダントをぎゅっと胸に握りしめ、ブンブンと首を振る。
「いえ……いいえっ! これがいいです! あの……、ありがとうございます……っ!」
ペンダントからじわじわと、胸の奥へ温かさが伝う。
私の大切なものを、クロも大切にしようとしてくれる。
交際期間もなく一足飛びに決まってしまった結婚だけれど、この人となら大丈夫。きっと幸せな家庭を築ける。
ペンダントを着けてもらえば、首に感じる懐かしい重みに、ようやくこの幸せな日々が現実なのだと心の底から実感できた気がした。
「すでに朝食の準備はできている。行こう」
「はいっ」
いつもの癖でクロへと両手を伸ばし、はたと気付く。
大きく戻った今、もう手のひらに乗せて運んでもらう必要はないのだ。
「あ、えっと……」
抱っこされる気満々でいた恥ずかしさをどう誤魔化したものかと視線をさ迷わせていると、太ももの裏に腕を回されぐんっと視界が浮いた。
「うわっ!?」
上半身がぐらついて、がしっとクロの頭に抱きつく。
「ヒナからも抱きしめ返してもらえるのは嬉しいな」
「でも……重くないですか?」
「まさか。さあ、朝食にしよう」
クロは上機嫌に言って、片腕に私を抱いたまま足取り軽く寝室を出た。
午前中は仕立て屋さん数人がかりで全身くまなく採寸され、午後はクロの執務室で少しでも覚えておくべく貴族名鑑を眺めて過ごす。
「……本当に、人間でいらしたんですね……」
許可を得て入室したヤシュームは、応接セットのソファーに座る私を見つけ、書類を抱えたまま呆然と立ち尽くした。
驚きのあまり、「てっきり殿下が妄想をこじらせたのかと……」という心の声まで洩れてしまっている。
私は全員同じ顔に見えはじめた分厚い貴族名鑑を閉じると、ヤシュームの元へと駆け寄った。
「これって……」
「元はペンダントだと言っていただろう? 今の姿でなら着けられるだろうと思い、チェーンを用意したんだ。勝手に選んでしまったが、気に入らなければまた新しいチェーンを買えばいい」
受け取ったペンダントをぎゅっと胸に握りしめ、ブンブンと首を振る。
「いえ……いいえっ! これがいいです! あの……、ありがとうございます……っ!」
ペンダントからじわじわと、胸の奥へ温かさが伝う。
私の大切なものを、クロも大切にしようとしてくれる。
交際期間もなく一足飛びに決まってしまった結婚だけれど、この人となら大丈夫。きっと幸せな家庭を築ける。
ペンダントを着けてもらえば、首に感じる懐かしい重みに、ようやくこの幸せな日々が現実なのだと心の底から実感できた気がした。
「すでに朝食の準備はできている。行こう」
「はいっ」
いつもの癖でクロへと両手を伸ばし、はたと気付く。
大きく戻った今、もう手のひらに乗せて運んでもらう必要はないのだ。
「あ、えっと……」
抱っこされる気満々でいた恥ずかしさをどう誤魔化したものかと視線をさ迷わせていると、太ももの裏に腕を回されぐんっと視界が浮いた。
「うわっ!?」
上半身がぐらついて、がしっとクロの頭に抱きつく。
「ヒナからも抱きしめ返してもらえるのは嬉しいな」
「でも……重くないですか?」
「まさか。さあ、朝食にしよう」
クロは上機嫌に言って、片腕に私を抱いたまま足取り軽く寝室を出た。
午前中は仕立て屋さん数人がかりで全身くまなく採寸され、午後はクロの執務室で少しでも覚えておくべく貴族名鑑を眺めて過ごす。
「……本当に、人間でいらしたんですね……」
許可を得て入室したヤシュームは、応接セットのソファーに座る私を見つけ、書類を抱えたまま呆然と立ち尽くした。
驚きのあまり、「てっきり殿下が妄想をこじらせたのかと……」という心の声まで洩れてしまっている。
私は全員同じ顔に見えはじめた分厚い貴族名鑑を閉じると、ヤシュームの元へと駆け寄った。
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