ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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51~最終話

大きくなっても変わらないこと【上】

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「王妃といってもそう難しく考えることはない。覚えるべきことはいくつかあるが、一番重要なのは俺の隣で笑っていてくれることだ」

「笑って……」

 それくらいなら自分にもできそうだ。
 布団から顔を出し、両手でむにむにと頬を揉んでみる。
 表情豊かなほうだとは思うけれど、どれくらいの笑顔を求められているのだろう。

「国の象徴たる国王夫妻が仲むつまじく幸せそうに笑っていれば、民は平和を実感して安心できる」

「ふむぅ」

 なかなかに責任重大である。
 特に『幸せそうに笑う』という点において、常に眉間にシワを寄せているクロの表情には全く期待できないので、私にすべてが懸かっているといっても過言ではない。

 しかしどこの馬の骨ともわからない小娘が突然『王妃です』なんて言って登場したところで、みんなに受け入れてもらえるものだろうか。

 考えながらむにむにと動かし続けていた手をそっとどかされたかと思えば、なぜか代わりにクロが私の頬を揉みだした。

 むにむにむにむに

「なにも無理に笑えというわけではない。ヒナが笑顔でいられる環境を作るのは、俺の役目だからな」

ふろろクロの?」

「ああ。俺のすべてを懸けてヒナを幸せにしてみせる」

 改めてプロポーズされている気分だ。
 両頬を摘まんでむにーっと引き伸ばされた唇へ、ついばむような口づけが落ちた。



 たっぷりと寝てしまった気がするけれど、行為に及んだのが昨日の日暮れ前だったため、起床時刻を少し過ぎたくらいで済んだらしい。

 昨夜のうちに手配してくれたという既製のワンピースを受け取り、調達に奔走したであろう人物の顔を思い浮かべながらありがたく袖を通す。

「それから、これを」

 そう言ってクロが丁重に差し出してくれたのは、真新しい白金のペンダントチェーンに通された遺骨入りカプセルだった。
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