ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

文字の大きさ
143 / 165
51~最終話

一にレッスン、二にレッスン【上】

しおりを挟む
 マナーの先生によるレッスンが始まった。
 取り急ぎ婚約発表までに覚えることは三つ。
 挨拶と、食事の作法と、ダンス。

 その他はクロの側にいればどうにかなるだろうという判断だ。

「ということで、今日から食事は自分で食べます!」

「そんな……っ!」

 信じられない理不尽を突きつけられたかのようにショックを受けるクロはさておき。

 そもそも、元の大きさに戻ったのだから食べさせてもらう必要性はなかったのだ。昨日はクロが私を抱えたままどうしても放さないものだから、甘んじて受け入れたけども。

「実践を積まないと上達しないので! クロも特訓を応援してくれますよね!?」

「ああ、もちろんだ……。だが、俺の膝の上に座っておくくらいはいいんじゃないか?」

「…………」

「決して邪魔はしない。間近で見て、おかしな点があればすぐに伝えよう」

「ぐぬぬ……」

 二週間足らずという僅かな時間しかない自分にとって、食事の時間を活用して指導してもらえるというのは魅力的な申し出である。

「ちゃんと……チェックしてくれますか?」

「もちろん。さあ、ヒナの皿を俺の席へ移そう。――――おっと」

 倒れたワイングラスから零れた液体が、みるみる私の料理を赤紫に染めていく。

「すまない。すぐに新しいものを用意させる」

「えっ、今……」

 クロがわざとグラスを倒したように見えたけれど……って、そんなわけないか。
 そんなことをする理由がないのだから。

 「ワインがかかってても食べられますよ」という私の主張は却下され、呼び鈴でやってきた騎士たちによってすべての料理を下げられてしまった。







 レッスンのなかで一番楽しいのはダンスの時間だ。
 やはり私は身体を動かすほうが性に合っているらしい。

「ワン、ツー、スリー、ここでターン!  テンポが遅い! ツー、スリー、優雅に微笑んで! ワン、ツー、肘の高さはキープ!」

 ――全身つりそうだけれど。
 優雅さはともかく、持ち前の運動神経のおかげで形だけはなんとかなりつつある。

「ウルカノン先生、やっぱりヒールの高い靴だとバランスのほうに気を取られて、テンポが遅れそうになります」

 長年陸上に情熱を注いでいた弊害か、足元が不安定になると両手を縛られるくらいの不自由さを感じてしまう。
 そうするとどうしても意識の大半が足元に行ってしまい、音への反応が遅れるのだ。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

落ちて拾われて売られて買われた私

ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。 最終的には溺愛になる予定です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...