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51~最終話
万全を期して臨みましょう【下】
しおりを挟むまずは入浴とのことで、その前に許可をもらい入念なストレッチで身体をほぐす。
「いっち、にっ、さっん、しっ」
クロが何をするつもりかはわからないけれど、もしかしたら私でも助けになれることがあるかもしれない。
魔法は使えなくとも、備えあれば憂いなしだ!
ストレッチを終えると、付き添いの多さにたじろぐあいだにもテキパキと服を剥かれ、花びらの浮かぶお風呂に入れられる。
お湯から出れば垢すりとオイルマッサージで全身ぴっかぴかに磨きあげられた。
私の能力はごく限られた人物にしか知らされていないものの、クロの指示かメイドは全員薄い手袋を着用していて直接私の肌に触れることはない。
私も私で、うっかり魔力を吸収してしまわないよう気を引き締めておく。
マッサージの心地よさにうっとりと浸る隙もなくガウンを着せられ椅子に座らせられると、さらにメイドが増えて髪のお手入れと爪のお手入れとメイクが同時進行で始まった。
大勢のメイドに囲まれ、もはやどこに何をされているのかわからない。
口紅と思しき小さな容器と小筆を手に正面にやってきたメイドが私の顔へと手を伸ばした瞬間、バッと音を立てて視界が遮られた。
私の視界を覆う真っ黒な扇子――の、持ち主である夫人を見上げる。
「ウルカノン夫人……?」
夫人は、扇子の向こうで同じように夫人を見上げているだろうメイドを一瞥して言った。
「貴女、見かけない顔ね?」
「はい、まだ勤めて日が浅いもので……」
「そう。ここは新人のいていい場所ではないわ。騎士様、この娘を相応しい場所にお連れしてくださる?」
いつの間にかこちらへ来ていた女性騎士は、戸惑う新人メイドを引きずって扉向こうの騎士へと引き渡した。
「…………」
「――さあ、お支度を続けましょう!」
夫人がパンパンと手を打ち鳴らすと、黙って一部始終を見守っていたメイドたちも我に返ったように各々の作業を再開した。
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