ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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51~最終話

万全を期して臨みましょう【上】

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 朝。
 寝室のベッドで覚醒との境界も曖昧な薄い眠りから目を覚ます。
 ――今日は戴冠式当日。

「ヒナ、緊張しているか?」

「はい、とっても……」

 クロが王様になり、私が婚約者として紹介される。
 あまりにも現実味がなさすぎて、一周回って緊張しないような気も……いや、やっぱり緊張する。
 こんなに緊張するのは学生時代の陸上競技会以来だ。

「でも――私、本番には強いタイプなので! 今日だって無事にやり遂げてみせますっ!」

 ベストを尽くそうという緊張は、決してマイナスに働くばかりではない。
 うまく付き合えば余計なものを削ぎ落とし、本質への集中を高めてくれる強い味方にもなるのだ。

 姿勢を正して! 動作はゆっくり! 困ったら笑顔!
 先生から教わったマナーの極意を頭の中で復唱し、気合い十分にぐっと拳を握りしめる。

「やはりヒナはな」

「へっ?」

 美しい……?
 ドレスに着替えてばっちりメイクを施したあとならいざ知らず、今はすっぴんに寝衣姿なのに……??




 クロの膝に乗せられて朝食をとっていると、八割ほど食べ終えたあたりで人が入ってきた。

 兜はなくよろいのみ身につけた護衛騎士が四人と、メイドが一人に、ヤシュームが一人。

 恥ずかしさに慌ててクロの膝を飛び下りようとするけれど、がっちりと腰に回された腕がそれを許さない。
 クロはギャラリーなど見えていないかのように、私を抱いたまま平然と食事を終えた。

 このままいつも通りクロの部屋で着替えをとはいかず、それぞれ別室に分かれて私は『私の部屋』で身支度を整えるのだという。

「私の部屋って……初耳なんですけど」

「この部屋の隣にある」

「初耳なんですけど」

 毎朝一体どこから持ってくるのだろうと思っていた私の着替え類は、きっとその部屋のクローゼットに詰まっているのだろう。

 すぐ隣に自分の部屋があるのに毎晩クロの部屋で寝ていただなんて。周囲から一体どう思われていたのかと考えれば、叫びだしたいほどの羞恥心に襲われる。
 ちっ、違う! 違うの! 部屋があるのを知らなかっただけで、私はそんな……っ!

 クロは名残惜しそうに私を下ろして立ちあがると、私の耳元に口を寄せた。
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