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51~最終話
助けになりたい【下】
しおりを挟む体育館の二倍はありそうな広いホールに、きらびやかな衣裳を纏った人々。
座席はなくみんな思い思いの位置に立っているけれど、なんとなく位置順は決まっているらしい。五段ほど高くなった壇の手前には、異国からの貴賓と思しき服装の人たちと、貴族名鑑で見た公爵家の顔ぶれが並んでいる。
えーと、あれはたしか……クィンコット公爵夫妻。一歩引いた位置に、クロの元婚約者であるマリエラの姿もある。
公爵家の後ろには侯爵家の面々、さらにその後方にちらりとウルカノン伯爵夫人の姿が見えたので、おそらく壇に近い側から家格順に並んでいるのだろう。
その周囲を壁沿いにぐるりと警備の騎士たちが取り囲む。
参加者は、事前に習った通り全員が手袋を着用している。
『変化魔法』と同様に『攻撃魔法』も城内では使えないらしいので、手袋を外したところで何ができるでもないけれど、無闇に外せば不敬罪に問われる可能性があると念を押された。
そして、公爵家に囲まれた最前列の中央には――。
「おじいちゃん……」
胸の高さほどあるクッション敷きの高台に乗せられ、ガラスケースに覆われて、高価な美術品のように鎮座するおじいちゃんの遺骨入りカプセルがあった。
とんでもない祭り上げられ方に、おじいちゃんの慌てふためく様子が浮かぶかのようだ。
――ごめん、おじいちゃん。私には救えなかった……。
よかれと思って私の『親族』を丁重に扱ってくれているクロやヤシュームに、どうしてやめてくれと伝えられようか。いや、伝えられない(反語)。
周囲の貴族たちは珍しい美術品だろうかと不思議そうにカプセルを観察してみたり、じろじろとこちらを観察してみたり。
私は今、舞台袖に待機している。
――といっても壇上へと続く幅広の階段の脇に立っているだけなので、列席者からは丸見えだ。
戴冠を終えたクロに呼ばれて壇上に上がり、ついでのようにサラッと紹介される流れらしい。先生からメインはあくまで戴冠式だと聞かされて、どれほど安心したことか。
教皇が登壇し、壇奥の幕を割って王妃様とクロが姿を現す。第二王子のネラウェルはまだ幼いため、公的な式典には参加できないのだそうだ。
最後に王様が威風堂々と登場すると、場内は水を打ったようにシンと静まり返った。
みんなの視線が壇上に注がれ、教皇が開国の神話を語り始める。
それに気付いたのは、本当に偶然だった。
誰もが壇上を見つめるなか、ちらりとおじいちゃんの様子を気にして送った視線が不審な動きを捉えた。
マリエラが……手袋を外している。
なんで!? だって、手袋を外したら不敬罪になるって……!
マリエラの射るような険しい視線に、ただならぬ事態だと直感する。
夫妻の陰に隠れ、周囲からは手元が見えないだろう。
騎士たちは気付いているだろうか!? いいや、周囲を見渡している余裕はない。
それよりも――!
壇上へ向けてゆっくりと持ち上がっていく手を目掛け、気が付けばトップスピードで走りだしていた。
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