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51~最終話
助けになりたい【上】
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「――ヒナ!」
こちらに気付いてクロがやって来る。
「俺のために駆けつけてくれたのか。ああ……思った通りドレスがよく似合うな。ふんわりとラッピングされたようで、ヒナの愛らしさが際立っている。みなに見せるのが惜しいくらいだ」
先ほどまでの剣呑な雰囲気は消えて、そこにはいつもと同じ穏やかな眼差しがあった。
人だかりに揉まれくしゃくしゃになっているだろう髪を愛おしげに撫でられる。
「……っ」
私は僅かに残った一歩分の距離を詰め、人目もはばからずクロにしがみついた。
「危ないことはしないって言ったのに……っ!」
滲む目元をぐりぐりと押しつけてクロを責める。
クロの無事を実感した途端、心配の大きさの分だけ沸々と怒りが込み上げてきた。
何事もなかったからよかったようなものの、クロに何かあれば私が悲しむとわかっていたはずなのに!
クロは私を抱きしめ返し、戸惑うような、気遣うような声で言う。
「備えているから心配いらないと、事前に伝えておいただろう……?」
「そんなので安心できるわけないじゃないですか!! 言葉が足りなすぎます! クロが襲われたって聞いて、すっごくすっごく心配したんですからね!? 護衛も私にばっかりつけちゃうし、もしクロに何かあったらどうしようって、わっ、わたし――――っ」
「ヒナ――ヒナ、すまなかった」
回された腕に力が籠もり、どこにも行かないと示すかのように力強く抱きしめられる。
「表立ってヒナの身辺警護を厳重にしておけば、ヒナの安全は担保されつつ敵の注意がこちらに向くと思ったんだ。だからあえてこちらの警護を手薄にして敵を誘った。内情に詳しい者ならば、俺の魔力干渉によって護衛が離れる『穴』を利用してくると思ってな。伏兵作戦がうまくいったのはヒナの魔力吸収のおかげだ」
「…………」
スン、と鼻を鳴らす。
私は何もしていない。知らないうちにずっと、クロに守られていただけだ。
私だってクロの助けになりたいのに……。
「……もう、危ないことはしませんか?」
「ああ。首謀者は捕らえた。共犯者も見つけ次第拘束するが、指揮者を失ってまで動く者もいるまい。もうこれ以上危険が及ぶことはない」
私と出逢うずっと前から、日常的に緊張を強いられてきたのだろう。なんとなく、クロの全身を取り巻く空気が和らいだように感じる。
――敵は捕まり、危険は去ったのだ。
「よかった……」
「のちほど戴冠式で会おう。ヒナとの婚約披露を楽しみにしている」
優しい口づけがおでこに触れて、クロは儀式の続きへと戻っていった。
こちらに気付いてクロがやって来る。
「俺のために駆けつけてくれたのか。ああ……思った通りドレスがよく似合うな。ふんわりとラッピングされたようで、ヒナの愛らしさが際立っている。みなに見せるのが惜しいくらいだ」
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人だかりに揉まれくしゃくしゃになっているだろう髪を愛おしげに撫でられる。
「……っ」
私は僅かに残った一歩分の距離を詰め、人目もはばからずクロにしがみついた。
「危ないことはしないって言ったのに……っ!」
滲む目元をぐりぐりと押しつけてクロを責める。
クロの無事を実感した途端、心配の大きさの分だけ沸々と怒りが込み上げてきた。
何事もなかったからよかったようなものの、クロに何かあれば私が悲しむとわかっていたはずなのに!
クロは私を抱きしめ返し、戸惑うような、気遣うような声で言う。
「備えているから心配いらないと、事前に伝えておいただろう……?」
「そんなので安心できるわけないじゃないですか!! 言葉が足りなすぎます! クロが襲われたって聞いて、すっごくすっごく心配したんですからね!? 護衛も私にばっかりつけちゃうし、もしクロに何かあったらどうしようって、わっ、わたし――――っ」
「ヒナ――ヒナ、すまなかった」
回された腕に力が籠もり、どこにも行かないと示すかのように力強く抱きしめられる。
「表立ってヒナの身辺警護を厳重にしておけば、ヒナの安全は担保されつつ敵の注意がこちらに向くと思ったんだ。だからあえてこちらの警護を手薄にして敵を誘った。内情に詳しい者ならば、俺の魔力干渉によって護衛が離れる『穴』を利用してくると思ってな。伏兵作戦がうまくいったのはヒナの魔力吸収のおかげだ」
「…………」
スン、と鼻を鳴らす。
私は何もしていない。知らないうちにずっと、クロに守られていただけだ。
私だってクロの助けになりたいのに……。
「……もう、危ないことはしませんか?」
「ああ。首謀者は捕らえた。共犯者も見つけ次第拘束するが、指揮者を失ってまで動く者もいるまい。もうこれ以上危険が及ぶことはない」
私と出逢うずっと前から、日常的に緊張を強いられてきたのだろう。なんとなく、クロの全身を取り巻く空気が和らいだように感じる。
――敵は捕まり、危険は去ったのだ。
「よかった……」
「のちほど戴冠式で会おう。ヒナとの婚約披露を楽しみにしている」
優しい口づけがおでこに触れて、クロは儀式の続きへと戻っていった。
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