ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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51~最終話

【最終話】この世界で手に入れたもの【中①】

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「…………ヒナ」

 安心している場合ではなかった。
 困ったような、泣きそうなような、怒っているようなクロの眼差しが向けられる。

 危ないことはしちゃダメだよね……、うん。気持ちは痛いほどわかる。クロに危ないことをするなと言ったばかりなのに。

「マリエラの魔力を吸収したのか?」

「はい……。それで……うぇっ、魔力の性質が、うっぷ……合わなかったみたいで、気分が……おぇっ」

「どうすれば治まる? 俺に触れて落ち着くならば触れていてくれ」

 クロは手袋の手で私の手を掴むと、自身の頬へと導いた。
 触れた肌から、ぬるま湯のように穏やかで温かなクロの魔力が流れ込む。

 胃の中にわだかまった不快感を押しのけて、慣れ親しんだ心地よさが私を満たしていく。

「ふぅ……」

「しかし攻撃魔法の使えない城内で、マリエラは一体なんの魔法を発動しようとしたというんだ?」

「はっ! 駆けつけた時点ですでにクィンコット公爵令嬢は意識を失っており、詳細の把握には至っておりません!」

 クロの問いに答える騎士の言葉がやむのを待って、私はおずおずと口を開いた。

「あの……『マフェク』って、聞こえた気がします」

 体調が落ち着いてきたので、クロの手を借りて立ち上がる。
 いつまでもこの場に寝ているわけにはいかない。

「マフェク――『マフェクト』、魔力譲渡の呪文か」

 魔力譲渡なら、クロがヤシュームにかけているのを何度か見たことがある。
 自分の魔力を送って、相手の残存魔力を二倍にする魔法だったはずだ。

 ……え? ただでさえ膨大なクロの魔力を、二倍に……?

 魔力が半減していない人間の魔力を倍増させれば、許容値を超えた魔力が体内をむしばむとクロに習った。
 マリエラの全魔力を送ったとしても、クロの魔力量を二倍にするには至らないだろう。それでも彼女はクロの相手に選ばれるほど多量の魔力を有している。
 普段から痛苦に耐えて魔力を抑え込んでいるクロに、もしも大量の魔力が送られたなら――。

 恐ろしい推測に青ざめる。

「マリエラの全魔力を送られれば、俺も無事では済まなかっただろう。そして自身の魔力量を超えた無茶な魔力譲渡は術者の命にも関わる。――マリエラは自らの命をして俺の『命』を狙ったようだな」

「そんな……」

「結果的にヒナは、二人分の命を救ったということだ」
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