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51~最終話
【最終話】この世界で手に入れたもの【中③】
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「マリエラ=クィンコットを連行しろ」
力なく俯いたマリエラが、騎士二人に挟まれ、両親に後を追われて粛々とホールを去る。
「…………彼女、どうなっちゃうんですかね」
「計画性のない突発的な犯行で、家の後ろ楯もある。狙ったのも『国王』ではなく『王太子』だからな。国外追放か修道院あたりに落ち着くだろう。ヒナに救われた命を無駄にさせはしない」
マリエラが死罪にはならなそうだと聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。
自分には何もないと思ったまま死ぬなんて悲しすぎる。これからの人生で、彼女が自分の『持っているもの』に気付ければいいと思う。
「ウォッホン!」
しんみりと静まったホールに、大きな咳払いが響いた。
「クローヴェル殿下、至急お戻りを」
壇上から教皇が呼ぶ。
見上げた壇上では、王様が王冠を手に捧げ持ったまま戴冠のときを待っていた。
王様は咎めるようにクイと片眉を上げてみせるけれど、その眼差しは温かい。
クロはなんと、王冠を戴こうというタイミングで儀式を抜けて私の元へ駆けつけてくれたらしい。
「あわわわわ……クロっ! クロ早く戻って! 戴冠を中断しちゃうなんて!」
ぐいぐいとクロを押せば、その手をひょいとすくって甲に口づけられた。
「自分にとって一番大事なものを見誤ってはならない。――ヒナ、見ていてくれ」
くるりと踵を返したクロが登壇すると、式は何事もなかったかのように再開した。
誓約の言葉を終え、跪いたクロの頭上に王冠が載せられた途端、盛大な拍手が巻き起こる。
立派なマントを掛けられて立ち上がったクロが片手を挙げて応じれば、「クローヴェル陛下万歳!」の声とともに、拍手はさらに熱を増してホールを呑み込んだ。
新国王の誕生である。
第一王子であるクロはきっと、幼い頃から王になるために教育を受けてきたのだろう。
周囲へ魔力干渉を起こさないために強すぎる魔力を抑え続け、蝕まれる痛苦に独りで耐えて。さらに即位のためには結婚相手を見つけるようにとの条件を課せられたとき、クロは何を思っただろうか。
今日この日に、努力は、過去は、――想いは報われただろうか。
私も手袋を着け直した手で、クロの門出に目一杯の拍手を送った。
力なく俯いたマリエラが、騎士二人に挟まれ、両親に後を追われて粛々とホールを去る。
「…………彼女、どうなっちゃうんですかね」
「計画性のない突発的な犯行で、家の後ろ楯もある。狙ったのも『国王』ではなく『王太子』だからな。国外追放か修道院あたりに落ち着くだろう。ヒナに救われた命を無駄にさせはしない」
マリエラが死罪にはならなそうだと聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。
自分には何もないと思ったまま死ぬなんて悲しすぎる。これからの人生で、彼女が自分の『持っているもの』に気付ければいいと思う。
「ウォッホン!」
しんみりと静まったホールに、大きな咳払いが響いた。
「クローヴェル殿下、至急お戻りを」
壇上から教皇が呼ぶ。
見上げた壇上では、王様が王冠を手に捧げ持ったまま戴冠のときを待っていた。
王様は咎めるようにクイと片眉を上げてみせるけれど、その眼差しは温かい。
クロはなんと、王冠を戴こうというタイミングで儀式を抜けて私の元へ駆けつけてくれたらしい。
「あわわわわ……クロっ! クロ早く戻って! 戴冠を中断しちゃうなんて!」
ぐいぐいとクロを押せば、その手をひょいとすくって甲に口づけられた。
「自分にとって一番大事なものを見誤ってはならない。――ヒナ、見ていてくれ」
くるりと踵を返したクロが登壇すると、式は何事もなかったかのように再開した。
誓約の言葉を終え、跪いたクロの頭上に王冠が載せられた途端、盛大な拍手が巻き起こる。
立派なマントを掛けられて立ち上がったクロが片手を挙げて応じれば、「クローヴェル陛下万歳!」の声とともに、拍手はさらに熱を増してホールを呑み込んだ。
新国王の誕生である。
第一王子であるクロはきっと、幼い頃から王になるために教育を受けてきたのだろう。
周囲へ魔力干渉を起こさないために強すぎる魔力を抑え続け、蝕まれる痛苦に独りで耐えて。さらに即位のためには結婚相手を見つけるようにとの条件を課せられたとき、クロは何を思っただろうか。
今日この日に、努力は、過去は、――想いは報われただろうか。
私も手袋を着け直した手で、クロの門出に目一杯の拍手を送った。
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