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第二十八筆 龍、合コンに参加する!
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今日の出来事はまるで夢のようであった。
あの鬼丸まりあが異世界令嬢教の教祖まるぐりっとだった。
世の中は本当に広いようで狭い。
SNSで絡んできた書籍化作家様が、まさか同じ街に住んでいるとは思わなかった。
「……ラノベって夢がないんだな」
運転する車の中でそう呟く龍。
ラノベ作家の――プロの世界の厳しさを見せつけられた。
専業だけでは食っていけない、非情の世界であったのだ。
「書籍化って何だろう……」
運転する車の中で龍は一人考える。
自分の夢はワナビの脱却、つまり書籍化作家だ。
先程のことを「ありのままに起こったことを話すぜ!」とすると、専業作家は過酷な生活を送っていたことを知った。
超売れっ子にならない限りは、生活を切り詰めながら暮らしているリアル。
まるぐりっとの体はカリカリのゴボウさんだ。かなり食費を削りながら生きていたのだろう。
こいつぁ肉体的に辛いもんだ。
「しかし、レーベルが潰れるってこともあるんだな。世知辛い世の中だぜ」
それにメンタルも相当削られる。
毎回、四球を連発してサヨナラ負けを演出する劇場型クローザーを観戦する気分だ。
作品がうまく書籍化したところで打ち切りになったらサヨナラ。
それにこのご時世だ。今回のようにレーベルが爆死してサヨナラだってありうる。
サヨナラ負けをくらった鬼丸の顔を思い出し、龍は一言述べる。
「さよなライオン……」
さらにバトル漫画のように次々と現れる新人作家達。
その競争に打ち勝たねばならない。
また、売れればそれなりの信者も獲得するが、アンチも現れて理不尽な評価を与えられるのだ。
ああ、修羅の世界かラノベ業界。
光が強ければ強いほど、同時に影の部分も強くなるのだ。
これぞ、古代中国神話に登場する『陰陽説』であるといえよう。
森羅万象、全ての事柄は『陰』と『陽』が相反する形で存在するのだ。
「ふっ……センチメンタルになっちまったな。早く帰って『ライオン令嬢道』を書くぜ」
ラノベ作家のリアルな生活を胸に置きながらも、ライオン令嬢道の執筆に燃える龍。
それは『現実を知りながらも創作意欲に燃やすWeb小説家のサガ』なのか。
それとも『現実を目の当たりにしたことに対する防衛反応』なのか。
陰陽説的にはどちらの思いもあるのだろう、龍はそんな気持ちを抱きつつ職場へと帰還するのであった。
「遅かったわね」
「うぐっ!」
龍がご帰還すると鬼軍曹殿が待っていた。
上司である古田島姐さんである。
「終業時間から約十分オーバー。どこかで道草でも食っていたのかしら」
「さ、最後の配送で道に迷ってしまいまして……」
適当なウソをつく龍の浅はかな言葉。
いつものルートを走っているのに、んなこたーない。
古田島は薄っぺらいウソを知りながらも、腰に手を当てて述べる。
「早くタイムカードを切りなさい」
「ど、どうもです!」
「……残業代は出ないけどね」
「は、はいっ!」
そそくさと、ロッカールームへ向かおうとする龍であるが――。
「阿久津川くん、終わったら行くわよ」
古田島に牽制球を投げられた。
鬼軍曹からのお誘いである。
「い、行くってどちらまで?」
「坂崎くんが合コンやるんですって」
「ええーっ!?」
なんと、泰ちゃんが合コンを「またかよ」な具合に開催するという。
龍は以前、古田島に『女がいる』と言った。(架空の自キャラ、クリスティーナであるが)
それなのに、軽薄な合コンへ行こうと言うのだ。
(おめェのキャラが崩壊してっぞ!)
と心の中で叫ぶ龍。
お堅い印象のある古田島が言ったことが実に不思議だった。
そういえば、泰ちゃんが以前龍を合コンに誘ったときも、古田島も参加すると言っていたような気がする。
「す、すみません。俺は彼女に合わなくてはいけませんので」
彼女、即ちクリスティーナのファンアートを脳裏に浮かべる龍。
クリスティーナが、ディスプレイの中で待っているのだ。
従って、龍は体よく断ろうとするが――。
「本当に彼女はいるの?」
(ドキッ!)
古田島は、龍の『痛い真実』を『薄っぺらいウソ』と断定した。
グイグイと龍に迫り、古田島はメガネを光らせる。
「いるならさ、彼女の写真を見せてよ」
「え、えっと……それは……」
流石に貰ったファンアートを見せたらドン引きされるだろう、と冷静で的確な判断を持つ龍。
視線を逸らして、どう誤魔化すか必死のパッチで思案するが古田島をドンドンと問い詰めていく。
「よくよく考えると阿久津川くんって、休憩時間はスマホでいつも漫画を読んでるし、世間で言うところの『オタク』ってやつよね? まさかと思うけど『実在しない女性を自分の彼女』だなんて、恥ずかしくて死にたくなるようなことを考えてないでしょうね」
(古田島メガネは漫画を読んでるだけでオタク扱いなのか! どんな偏見を持ってるんだ! 半分当たってるけど!)
心の中で大いに叫ぶ龍。
しかし、古田島メガネは探偵、刑事、スパイのようだ。
龍のことをやたら調査しているようで、休憩時間にいつもスマホで『マスターカラテ迅』や、研究の一環として『ストギル小説のおもんないコミカライズ』を読んでいたことを知っていたようだ。
「部下の教育をするのも上司の仕事の一つ。これ以上、阿久津川くんが重症化しないうちに実在の女性と接する機会を作るわよ」
(ク、クリスティーナアアアアアッ!)
龍は心の中で涙を流し、クリスティーナに別れを告げた。
運転中の「さよなライオン」の台詞はフラグ、これが言霊というやつだ。
ライオン令嬢道の執筆は中止、クリスティーナとまた会えなくなった。
こうして、龍は半強制的に古田島に連行されるのであった。
「今日は龍さんも来てくれて最高っス!」
(俺は最高じゃないぞ、泰ちゃん)
場所は『肉チーズ大満足館』。
ジューシーなお肉の料理と様々な種類のチーズが食べ放題なダイニングバーである。
「龍さんずっと顔が固くないっスか?」
「……」
貸し切りの個室で坂崎泰助、こと泰ちゃんが合コンの主催者だ。
部屋には龍と泰ちゃんを含め男性が計四名、古田島を含め女性が計四名。
里見八犬伝の八犬士と同じく計八名での合コン。
そして、男女が対になり席に並んでいるのだが――。
(メガネと何で対面しなければならんのだ)
龍は運の悪いことに、正面に古田島がいる。
合コンが始まってから、龍は緊張で顔と体が固くなりずっと仏頂面。
腕を組んで座り、まるで攻め達磨と呼ばれる状態になっていた。
「あ、あのう……阿久津川さんって普段何をしているんですか」
女子大生っぽい女の子が戸惑いながら、龍に話しかけてきた。
童顔で長い黒髪、服装はブラウスとスカート。如何にもオタクを殺しそうな女の子だ。
「……俺か」
龍は渋く、グラス(梅酒のロック)に口をつける。
別にカッコつけてないが、様になるよう脳内で西部劇のガンマンをイメージして飲んでいる。
「は、はい」
「小説を読んでいる」
「小説?」
「ああ……」
コミュ障な返事をする龍。
ストギル小説のことを話そうとするが――。
「そうそう! 小説で思い出したんやけどな!」
オタク殺しの女の子の隣にいる、野球帽を被ったポニーテール女子が割って入った。
部屋の中くらい帽子を脱げよ。
「この間、うちの弟が小説を読んどってん!」
顔立ちが幼くてかわいい。
元気系の女の子で、こいつもオタクを殺しそうな感じだ。
しかも、関西弁訛りという特殊能力があってベネ。
(泰ちゃん……そういう趣味が……)
と龍は心の中で呟きながら、水差しポニーテール女子の会話が始まった。
「読むのはええけど、ストギル系の小説はアカンわ」
(むっ!)
グラスの中で氷がカラリと音を立てた。
龍は『ストギル系』の言葉にピクリと反応したのだ。
あの鬼丸まりあが異世界令嬢教の教祖まるぐりっとだった。
世の中は本当に広いようで狭い。
SNSで絡んできた書籍化作家様が、まさか同じ街に住んでいるとは思わなかった。
「……ラノベって夢がないんだな」
運転する車の中でそう呟く龍。
ラノベ作家の――プロの世界の厳しさを見せつけられた。
専業だけでは食っていけない、非情の世界であったのだ。
「書籍化って何だろう……」
運転する車の中で龍は一人考える。
自分の夢はワナビの脱却、つまり書籍化作家だ。
先程のことを「ありのままに起こったことを話すぜ!」とすると、専業作家は過酷な生活を送っていたことを知った。
超売れっ子にならない限りは、生活を切り詰めながら暮らしているリアル。
まるぐりっとの体はカリカリのゴボウさんだ。かなり食費を削りながら生きていたのだろう。
こいつぁ肉体的に辛いもんだ。
「しかし、レーベルが潰れるってこともあるんだな。世知辛い世の中だぜ」
それにメンタルも相当削られる。
毎回、四球を連発してサヨナラ負けを演出する劇場型クローザーを観戦する気分だ。
作品がうまく書籍化したところで打ち切りになったらサヨナラ。
それにこのご時世だ。今回のようにレーベルが爆死してサヨナラだってありうる。
サヨナラ負けをくらった鬼丸の顔を思い出し、龍は一言述べる。
「さよなライオン……」
さらにバトル漫画のように次々と現れる新人作家達。
その競争に打ち勝たねばならない。
また、売れればそれなりの信者も獲得するが、アンチも現れて理不尽な評価を与えられるのだ。
ああ、修羅の世界かラノベ業界。
光が強ければ強いほど、同時に影の部分も強くなるのだ。
これぞ、古代中国神話に登場する『陰陽説』であるといえよう。
森羅万象、全ての事柄は『陰』と『陽』が相反する形で存在するのだ。
「ふっ……センチメンタルになっちまったな。早く帰って『ライオン令嬢道』を書くぜ」
ラノベ作家のリアルな生活を胸に置きながらも、ライオン令嬢道の執筆に燃える龍。
それは『現実を知りながらも創作意欲に燃やすWeb小説家のサガ』なのか。
それとも『現実を目の当たりにしたことに対する防衛反応』なのか。
陰陽説的にはどちらの思いもあるのだろう、龍はそんな気持ちを抱きつつ職場へと帰還するのであった。
「遅かったわね」
「うぐっ!」
龍がご帰還すると鬼軍曹殿が待っていた。
上司である古田島姐さんである。
「終業時間から約十分オーバー。どこかで道草でも食っていたのかしら」
「さ、最後の配送で道に迷ってしまいまして……」
適当なウソをつく龍の浅はかな言葉。
いつものルートを走っているのに、んなこたーない。
古田島は薄っぺらいウソを知りながらも、腰に手を当てて述べる。
「早くタイムカードを切りなさい」
「ど、どうもです!」
「……残業代は出ないけどね」
「は、はいっ!」
そそくさと、ロッカールームへ向かおうとする龍であるが――。
「阿久津川くん、終わったら行くわよ」
古田島に牽制球を投げられた。
鬼軍曹からのお誘いである。
「い、行くってどちらまで?」
「坂崎くんが合コンやるんですって」
「ええーっ!?」
なんと、泰ちゃんが合コンを「またかよ」な具合に開催するという。
龍は以前、古田島に『女がいる』と言った。(架空の自キャラ、クリスティーナであるが)
それなのに、軽薄な合コンへ行こうと言うのだ。
(おめェのキャラが崩壊してっぞ!)
と心の中で叫ぶ龍。
お堅い印象のある古田島が言ったことが実に不思議だった。
そういえば、泰ちゃんが以前龍を合コンに誘ったときも、古田島も参加すると言っていたような気がする。
「す、すみません。俺は彼女に合わなくてはいけませんので」
彼女、即ちクリスティーナのファンアートを脳裏に浮かべる龍。
クリスティーナが、ディスプレイの中で待っているのだ。
従って、龍は体よく断ろうとするが――。
「本当に彼女はいるの?」
(ドキッ!)
古田島は、龍の『痛い真実』を『薄っぺらいウソ』と断定した。
グイグイと龍に迫り、古田島はメガネを光らせる。
「いるならさ、彼女の写真を見せてよ」
「え、えっと……それは……」
流石に貰ったファンアートを見せたらドン引きされるだろう、と冷静で的確な判断を持つ龍。
視線を逸らして、どう誤魔化すか必死のパッチで思案するが古田島をドンドンと問い詰めていく。
「よくよく考えると阿久津川くんって、休憩時間はスマホでいつも漫画を読んでるし、世間で言うところの『オタク』ってやつよね? まさかと思うけど『実在しない女性を自分の彼女』だなんて、恥ずかしくて死にたくなるようなことを考えてないでしょうね」
(古田島メガネは漫画を読んでるだけでオタク扱いなのか! どんな偏見を持ってるんだ! 半分当たってるけど!)
心の中で大いに叫ぶ龍。
しかし、古田島メガネは探偵、刑事、スパイのようだ。
龍のことをやたら調査しているようで、休憩時間にいつもスマホで『マスターカラテ迅』や、研究の一環として『ストギル小説のおもんないコミカライズ』を読んでいたことを知っていたようだ。
「部下の教育をするのも上司の仕事の一つ。これ以上、阿久津川くんが重症化しないうちに実在の女性と接する機会を作るわよ」
(ク、クリスティーナアアアアアッ!)
龍は心の中で涙を流し、クリスティーナに別れを告げた。
運転中の「さよなライオン」の台詞はフラグ、これが言霊というやつだ。
ライオン令嬢道の執筆は中止、クリスティーナとまた会えなくなった。
こうして、龍は半強制的に古田島に連行されるのであった。
「今日は龍さんも来てくれて最高っス!」
(俺は最高じゃないぞ、泰ちゃん)
場所は『肉チーズ大満足館』。
ジューシーなお肉の料理と様々な種類のチーズが食べ放題なダイニングバーである。
「龍さんずっと顔が固くないっスか?」
「……」
貸し切りの個室で坂崎泰助、こと泰ちゃんが合コンの主催者だ。
部屋には龍と泰ちゃんを含め男性が計四名、古田島を含め女性が計四名。
里見八犬伝の八犬士と同じく計八名での合コン。
そして、男女が対になり席に並んでいるのだが――。
(メガネと何で対面しなければならんのだ)
龍は運の悪いことに、正面に古田島がいる。
合コンが始まってから、龍は緊張で顔と体が固くなりずっと仏頂面。
腕を組んで座り、まるで攻め達磨と呼ばれる状態になっていた。
「あ、あのう……阿久津川さんって普段何をしているんですか」
女子大生っぽい女の子が戸惑いながら、龍に話しかけてきた。
童顔で長い黒髪、服装はブラウスとスカート。如何にもオタクを殺しそうな女の子だ。
「……俺か」
龍は渋く、グラス(梅酒のロック)に口をつける。
別にカッコつけてないが、様になるよう脳内で西部劇のガンマンをイメージして飲んでいる。
「は、はい」
「小説を読んでいる」
「小説?」
「ああ……」
コミュ障な返事をする龍。
ストギル小説のことを話そうとするが――。
「そうそう! 小説で思い出したんやけどな!」
オタク殺しの女の子の隣にいる、野球帽を被ったポニーテール女子が割って入った。
部屋の中くらい帽子を脱げよ。
「この間、うちの弟が小説を読んどってん!」
顔立ちが幼くてかわいい。
元気系の女の子で、こいつもオタクを殺しそうな感じだ。
しかも、関西弁訛りという特殊能力があってベネ。
(泰ちゃん……そういう趣味が……)
と龍は心の中で呟きながら、水差しポニーテール女子の会話が始まった。
「読むのはええけど、ストギル系の小説はアカンわ」
(むっ!)
グラスの中で氷がカラリと音を立てた。
龍は『ストギル系』の言葉にピクリと反応したのだ。
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