ワナビスト龍

理乃碧王

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第五十一筆 闇の編集者からの誘い!

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 龍はうまむすこに接触を図った。
 先程、サイバーラウンジ『黒鳥の宴』で起こった事件でのことだ。
 それは黒鳥が仲間に指示させ、ストギルのランキング操作を行ったことを匂わす発言。

 本当であるとしたら大問題だ。
 それが真実マジだとしたらヤバイ、かなりヤバイ。
 まうざりっとは『三日で書籍化した』を謳い文句にこれからデビューする。
 それがもし『作られたもの』だったとしたら――。

「ウ、ウソだと言ってよ、うまむすこ!」

 そう祈りながら、返信を待つ龍。
 時刻は既に0時近くになっている。
 早く寝ないと体力がいる配送業なので差し当たりがある。

「……」

 沈黙の時が流れる。

「…………」

 沈黙の時が流れる。

「………………」

 沈黙の時が流れ――。

 シュートが強いうまむすこ:返事が遅れてすまねェな。

 ないッ!

「キ、キタアアアアアッ!」

 返信が来た。
 あのシュートが強いうまむすこからである。

 シュートが強いうまむすこ:ちょっくら、黒鳥達や他のヤツラの反応を別垢で見ていた。なんせ、ブロックやら何やらされているからな。

 ギアドラゴン:あ、あのう……。

 シュートが強いうまむすこ:リスナーの中にあんたがいたことを知っている。を聞きたいんだろうけど、その前に一つ聞きたいんだが『スパイ』じゃねェだろうな?

 ギアドラゴン:ど、どういうことでしょうか。

 シュートが強いうまむすこ:おめえさんが、黒鳥主催の『レイヴンクラブ』に入っているのは知っている。

「ギョッ! ギョギョギョ!?」

 龍はビックリしてしまった。
 クローズドサロンだと思っていた、レイブンクラブの存在をうまむすこが知っていたからだ。
 ここで誤魔化してもしょうがないので龍は素直に白状した。

 ギアドラゴン:よ、よくご存じで。

 シュートが強いうまむすこ:こちらとて仲間がいる。まあ、黒鳥の野郎は既にわかってるだろうけどな。

 ギアドラゴン:仲間?

 シュートが強いうまむすこ:情報提供者だよ。黒鳥のインチキに手を貸して良心がさい悩まされ、告発する作家もいるってことさ。

 ギアドラゴン:俺は……。

 シュートが強いうまむすこ:鎌をかけるようなマネをしてすまなかったな。大丈夫だ、あんたのことは信用している。本物のスパイだったら、本垢でスクショ魚拓されるようなDMで接触なんて図らないだろうしな。

 うまむすこはどうやら龍を信用してくれているようだ。

 シュートが強いうまむすこ:単刀直入に言うけど、まうざりっとの書籍化は『出来レース』だ。

「で、出来レース!?」

 龍は再びビックリした。
 まうざりっとのサンバ令嬢書籍化は出来レースだというのだ。
 あの「黒鳥の命令で取り巻き達が一斉にポイントを入れた」という発言とリンクしているのだろう。
 しかし、レイヴンクラブのメンバー全員がポイントを投入したとしても、せいぜい600ポイントくらいにしかならない。

 ギアドラゴン:でも、レイヴンクラブのメンバーはだいたい五十人くらいですよ。全員が入れたとしても600ポイントほどにしか……。

 素直に疑問をぶつける龍。
 すると、うまむすこからとんでもない答えが返ってきた。

 シュートが強いうまむすこ:複垢だよ。

 ギアドラゴン:ふ、複垢!?

 シュートが強いうまむすこ:ストーリーギルドは、メールアドレスさえ送れば誰でも登録できる。パソコンの、スマホの、家族や恋人のメールアドレス。それに使い捨てのフリーメールアドレスなどなど、一人で何十個もアカウントを作れてしまうシステムだ。

 ギアドラゴン:な、なんと……。

 シュートが強いうまむすこ:俺が知っているのは『一人最低でもニ十個のアカウント作成がノルマ』。それで行った場合の計算式がこれだ。

 うまむすこは計算式を算出した。

 複垢ニ十刀流!

 ブックマーク:50人×20アカウント×2ポイント=2000ポイント!

 評価ポイント:50人×20アカウント×10ポイント=10000ポイント!

 総合評価:2000+10000=お前らを上回る『12000ポイント』だーっ!

 シュートが強いうまむすこ:今のは仮にレイヴンクラブにいるメンバー五十名でやった計算だ。黒鳥のフォロワーは1万人以上、その中にレイヴンクラブ以外の隠れ信奉者はかなりの人数がいる。実際はもっと多いかもな。

 龍はこの悪魔の計算式に愕然とした。
 一人でアカウントをいくつも作る複垢。
 協力者が何人もいれば、このようなランキング操作など『いともたやすく行われるえげつない行為』が実行可能であると。

 シュートが強いうまむすこ:ストギルは百万人以上登録しているサイトだ、運営側もいちいちチェックしている余裕はない。一人の作品にポイントを集中して投下し簡単に操作出来る――それがあのサイトのランキングシステムの盲点だ。

 ギアドラゴン:う、うまむすこさん。それは証拠があるんでしょうか。

 証拠。
 そうよ、証拠が、証拠が必要なのよ金田一くん。
 これまでのうまむすこの発言は全て憶測にしか過ぎない。云わば妄想だ。
 しかし、この問いに対しうまむすこは力強く言い放った。

 シュートが強いうまむすこ:こいつを見な!

 端的でありながら強力。
 まるで160キロの剛速球のようなスクショ画像が送りつけられた。
 どうやら、誰かとDMのやり取りをしているようである。
 その誰かはうまむすこにより加工され、名前は伏せられていた。

 星ヶ丘墨染:はじめまして、〇〇〇〇〇さん。私はUDAGAWAで編集をやっていた星ヶ丘というものです。実はあなたにお願いがありましてDMを送らせて頂きました。突然ですが黒鳥響士郎先生の教え子である『紅蓮まうざりっと君の作品にブクマと評価をつけて欲しい』のです。

「こ、こいつは!?」

 それは不正行為のお誘い。
 そして『星ヶ丘墨染』という名前にも見覚えがある。

「た、確か……こいつはまるぐりっとの……」

 星ヶ丘墨染、まるぐりっとの塩対応令嬢の担当だった男。
 倒産したレーベル『ムラマサ文庫』の編集者であった。
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