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第五十九筆 形作る創作という魂!
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龍は世界樹の記憶を開いた――。
そこには『無名の人々の活きた詩』が流れていた。
そよ風のように優しく、水のように静かに、そして火のように熱く――。
――――――
「優しい手」
たくさんの夢があった
大事な夢は手からいつもこぼした
お父さんと暮らしたかった、歌手になりたかった、あの人と添い遂げたかった
でも、夢はいつも手からこぼれていく
こぼせばこぼすほど、私の手に涙が落ちた
涙はキラキラと宝石のように手の上で弾けたとき
私の手に優しい手が置かれた
その手は暖かく私を慰めてくれた
私はその手を掴むことにした
夢という幻をつかむより
今を優しく包んでくれた手を掴むことにした
私の手のシワの数だけ思い出がある
あのときの涙も、今では宝物
振り返れば、過去も今日も
その優しい手はいなくなったけど
今でも暖かさはいつも残っている
ありがとう、優しい手
――――――
龍の視界には、幾重にも重なり合う記憶の断片が映し出されていた。
無数の生命の営み、喜び、哀しみがまるで一つの旋律となって流れ込み、龍の心を深く揺り動かしていた。
――――――
「心の大地」
小さな部屋の古びた窓
揺れるカーテン、優しい太陽
遠くに聞こえる子ども達の声
それだけで胸の内が優しくなる
足は不自由になったけど
ゆっくり、ひとつずつ
この部屋の隅を眺めながら
今日も自分と向き合っている
昔は駆け足で行けた大地も
今は車椅子しか踏みしめない
それでも、私は自由に生きれる
足は不自由とも、心は自由なのだから
日々、生きることのありがたさを踏みしめ
心で創った大地に一歩一歩と足形をつける
今はこの部屋が世界の全て
ここで過ごす静かな休日に感謝し
私は心の大地を翔けていく
妻も友人達は遠くに行ったけど
時折そっと瞼を閉じれば
あの笑顔や声が「心の大地」に蘇る
――――――
それは名もなき者達の生涯が編まれた壮大な詩。
命の一つ一つが微かなさざ波となり、大海原に広がっていくようだった。
――――――
「まるまるの命」
コンコンコロコロコンコロロ
コンコンコロコロコンコロロ
ころんとまんまる、私のいのち
ふんわりとゆれて、いのちの風にのる
コンコンコロコロコンコロロ
コンコンコロコロコンコロロ
ころころとまわる歳月も
ひとつずつ宝物、かさねてく
ひらひらと舞う花びらに
心の芯を映してみる
コンコンコロコロコンコロロ
コンコンコロコロコンコロロ
ころころと、でもしっかりと
根を張って咲く小さな花
たゆたう光をあびながら
一日とともに輝いて
コンコンコロコロコンコロロ
コンコンコロコロコンコロロ
ころころ続く終わりの先にも
私らしく、命を咲かせる
――――――
龍はその詩を目にし、心の底から湧き上がる何かを感じていた。
それは過去、現在、未来を紡ぐ刻の調べだった。
「う……ううっ……おおお……」
泣いた、龍は何故だか泣いてしまった。
そこには命の息吹があったからだ。
懸命に生きる命がそこに根付いていたからだ。
「これは……これはまさに『旋律』! 『命の旋律』だ!」
龍は感動の涙を流しながらページをめくる。
本から命の鼓動が聞こえてくる。
ちょっと傍から見るとデンジャラスな人に見えるかもしれない。
しかし、しかしである。
良き本というものは自然と『言葉の音』が奏でられるのだ。
子気味の良いリズムは心音となりオーケストラとなる。
今、心の中で美しい言葉の音楽が流れ、この尊い老賢者達の調べに龍は感動していたのだ。
「言葉の交奏曲!」
運命。
これはまさしく運命であろう。
ベートーヴェンではないが『龍』と『世界樹の記憶』を結びつけたものは『運命』に他ならない。
心の中で演奏される詩、振られる読書というタクト。
そして、いよいよ物語のフィナーレが近づく。
それなるは『あとがき』という終焉だ。
――――――
あとがき
この詩集を手にとって頂き、誠にありがとうございます。
この詩は世界樹の里に住む人々の人生を言葉にし、磨き、言葉の勾玉として書き記しました。
辛いこと、哀しいこと、嬉しかったこと、楽しかったこと――。
素人の詩ではございますが一人一人がこれまでの人生を刻みました。
一つ一つの詩には題名はありますが、作者の名前はありません。
この詩には創ったものの魂の結晶として残すためにそうしたのです。
おかしな話と思われるかもしれません。
我々としては「見るもの、聞くものの心に継承するだけでよい」と思ったのです。
小説、音楽、絵画、映画、彫刻、陶磁器などなど。
あらゆる作品には題名と共に作り手の名前があることが一般的ではあります。
しかし、そのことにどれだけの意味があるのでしょうか。
生み出した創作物に魂が宿るならば、そこに作者の名前があるのは必要なのか。
名前に縛られず、ただ詩そのものが存在し、読者の心に届くことこそが大切ではないか。
そう考えたとき、これから終わりを迎える我々はあえて「名前を残す」ことをやめることにしました。
詩そのものが語り部となり、先を歩む皆様の心に直接届くようにしたかったからです。
この世界樹の記憶があなたの手にあることは何かの運命。
この詩の言葉があなたの心に灯り、あなたの世界を彩りますように。
――世界樹の記憶より。
――――――
「ありがとうございました」
龍は深く、深く、世界樹の記憶を両手に持ちながら頭を下げていた。
この詩集を刻んだ老賢者達に龍は教えられた。
創作という魂は見るもの、聞くものの心に何かを伝え、残ればいい。
これまで書籍化を目標に精進してきたた龍。
この詩集を通して新たな学びがあった、それは己の創作道は功名心だけを追い求めてはいけないことだ。
謙虚さを忘れず、名を残さずとも創りを続ける――大木の根っこのような強さが必要なのだと。
「やるぞッ!」(右手拳を突きあげながら)
世界樹の記憶。
魂の鼓動を宿した作品は、龍の胸に静かな想いを広げていく。
創作とは名を刻むことではなく、心を刻むこと――。
形作る創作という魂が、龍に「創作とは何か」を再び問いかけてくれた。
阿久津川龍太郎というワナビスト、いや創作者は「名も無き作品」を通し成長を果たしたのだ。
そこには『無名の人々の活きた詩』が流れていた。
そよ風のように優しく、水のように静かに、そして火のように熱く――。
――――――
「優しい手」
たくさんの夢があった
大事な夢は手からいつもこぼした
お父さんと暮らしたかった、歌手になりたかった、あの人と添い遂げたかった
でも、夢はいつも手からこぼれていく
こぼせばこぼすほど、私の手に涙が落ちた
涙はキラキラと宝石のように手の上で弾けたとき
私の手に優しい手が置かれた
その手は暖かく私を慰めてくれた
私はその手を掴むことにした
夢という幻をつかむより
今を優しく包んでくれた手を掴むことにした
私の手のシワの数だけ思い出がある
あのときの涙も、今では宝物
振り返れば、過去も今日も
その優しい手はいなくなったけど
今でも暖かさはいつも残っている
ありがとう、優しい手
――――――
龍の視界には、幾重にも重なり合う記憶の断片が映し出されていた。
無数の生命の営み、喜び、哀しみがまるで一つの旋律となって流れ込み、龍の心を深く揺り動かしていた。
――――――
「心の大地」
小さな部屋の古びた窓
揺れるカーテン、優しい太陽
遠くに聞こえる子ども達の声
それだけで胸の内が優しくなる
足は不自由になったけど
ゆっくり、ひとつずつ
この部屋の隅を眺めながら
今日も自分と向き合っている
昔は駆け足で行けた大地も
今は車椅子しか踏みしめない
それでも、私は自由に生きれる
足は不自由とも、心は自由なのだから
日々、生きることのありがたさを踏みしめ
心で創った大地に一歩一歩と足形をつける
今はこの部屋が世界の全て
ここで過ごす静かな休日に感謝し
私は心の大地を翔けていく
妻も友人達は遠くに行ったけど
時折そっと瞼を閉じれば
あの笑顔や声が「心の大地」に蘇る
――――――
それは名もなき者達の生涯が編まれた壮大な詩。
命の一つ一つが微かなさざ波となり、大海原に広がっていくようだった。
――――――
「まるまるの命」
コンコンコロコロコンコロロ
コンコンコロコロコンコロロ
ころんとまんまる、私のいのち
ふんわりとゆれて、いのちの風にのる
コンコンコロコロコンコロロ
コンコンコロコロコンコロロ
ころころとまわる歳月も
ひとつずつ宝物、かさねてく
ひらひらと舞う花びらに
心の芯を映してみる
コンコンコロコロコンコロロ
コンコンコロコロコンコロロ
ころころと、でもしっかりと
根を張って咲く小さな花
たゆたう光をあびながら
一日とともに輝いて
コンコンコロコロコンコロロ
コンコンコロコロコンコロロ
ころころ続く終わりの先にも
私らしく、命を咲かせる
――――――
龍はその詩を目にし、心の底から湧き上がる何かを感じていた。
それは過去、現在、未来を紡ぐ刻の調べだった。
「う……ううっ……おおお……」
泣いた、龍は何故だか泣いてしまった。
そこには命の息吹があったからだ。
懸命に生きる命がそこに根付いていたからだ。
「これは……これはまさに『旋律』! 『命の旋律』だ!」
龍は感動の涙を流しながらページをめくる。
本から命の鼓動が聞こえてくる。
ちょっと傍から見るとデンジャラスな人に見えるかもしれない。
しかし、しかしである。
良き本というものは自然と『言葉の音』が奏でられるのだ。
子気味の良いリズムは心音となりオーケストラとなる。
今、心の中で美しい言葉の音楽が流れ、この尊い老賢者達の調べに龍は感動していたのだ。
「言葉の交奏曲!」
運命。
これはまさしく運命であろう。
ベートーヴェンではないが『龍』と『世界樹の記憶』を結びつけたものは『運命』に他ならない。
心の中で演奏される詩、振られる読書というタクト。
そして、いよいよ物語のフィナーレが近づく。
それなるは『あとがき』という終焉だ。
――――――
あとがき
この詩集を手にとって頂き、誠にありがとうございます。
この詩は世界樹の里に住む人々の人生を言葉にし、磨き、言葉の勾玉として書き記しました。
辛いこと、哀しいこと、嬉しかったこと、楽しかったこと――。
素人の詩ではございますが一人一人がこれまでの人生を刻みました。
一つ一つの詩には題名はありますが、作者の名前はありません。
この詩には創ったものの魂の結晶として残すためにそうしたのです。
おかしな話と思われるかもしれません。
我々としては「見るもの、聞くものの心に継承するだけでよい」と思ったのです。
小説、音楽、絵画、映画、彫刻、陶磁器などなど。
あらゆる作品には題名と共に作り手の名前があることが一般的ではあります。
しかし、そのことにどれだけの意味があるのでしょうか。
生み出した創作物に魂が宿るならば、そこに作者の名前があるのは必要なのか。
名前に縛られず、ただ詩そのものが存在し、読者の心に届くことこそが大切ではないか。
そう考えたとき、これから終わりを迎える我々はあえて「名前を残す」ことをやめることにしました。
詩そのものが語り部となり、先を歩む皆様の心に直接届くようにしたかったからです。
この世界樹の記憶があなたの手にあることは何かの運命。
この詩の言葉があなたの心に灯り、あなたの世界を彩りますように。
――世界樹の記憶より。
――――――
「ありがとうございました」
龍は深く、深く、世界樹の記憶を両手に持ちながら頭を下げていた。
この詩集を刻んだ老賢者達に龍は教えられた。
創作という魂は見るもの、聞くものの心に何かを伝え、残ればいい。
これまで書籍化を目標に精進してきたた龍。
この詩集を通して新たな学びがあった、それは己の創作道は功名心だけを追い求めてはいけないことだ。
謙虚さを忘れず、名を残さずとも創りを続ける――大木の根っこのような強さが必要なのだと。
「やるぞッ!」(右手拳を突きあげながら)
世界樹の記憶。
魂の鼓動を宿した作品は、龍の胸に静かな想いを広げていく。
創作とは名を刻むことではなく、心を刻むこと――。
形作る創作という魂が、龍に「創作とは何か」を再び問いかけてくれた。
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