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第六十九筆 龍の檄!
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「よいか諸君! Web小説とは闘争なのだ! 戦場で勝つには頭を動かし行動に移さねばならん!」
講演も終盤に差しかかってきた。
龍は一時間以上、黒鳥の自慢も交えられた講義を受けうんざりフェイスだ。
(話がくどいうえに長い。それに最初は対談形式の講演のハズが、いつの間にかイカスミまんの講義になってるぞ)
しかし、龍の周りにいるダークワナビスト達は修羅の形相で耳を澄まし、メモをとる。
そんな必死のダークワナビスト達を見て、黒鳥はほくそ笑み、ホワイトボードに文字を書き込む。
「戦略! 戦術! 市場戦略! 市場調査! それが『総合ポイント』を集めるコツだ!」
それら四文字の言葉が盤上で踊る。
「総合ポイント! これらが多ければ多いほど『ランキング上位』へと駆け上がることが出来る! 上位に食い込めば拾い上げの可能性があり! 公募では下読み及び審査員の目にも止まりやすい!」
これまで総統閣下のようなオーバーアクションをしてきた黒鳥。
その言葉を終えると、ピタリと動きを止めた。
「しかしなァ……ここまでの話はラノベ業界という小さな範囲だけのものだ。私はそれ以上のものを目指している」
(ん? まだイカスミまんの話が続くのか)
龍の眉がピクリと動く。
これまで散々SNS上にばら撒いてきた攻略法という創作論以外に何があるのだろうか。
「配っちゃうぜ☆」(指パッチンしながら)
司会進行役の星ヶ丘が、講演に集まる参加者達に何やらビラを配り始めた。
それはA4サイズの紙でカラー印刷されたものである。
「おらよ」
「あ、ども……」
隣りの鷹の目の女から愛想悪く紙を渡される龍。
その紙にはこう書かれていた。
――――――
黒鳥響士郎のオンラインラノベ講座『最強黒鳥塾』
開講!
「この講座はただの講座ではない! 勝つための武器を授ける場所だ!」
対象: ラノベ作家志望者、現役作家、ランキングに伸び悩む作家
・内容
市場戦略講座:「ジャンル選びとターゲット層の徹底分析」
作品磨きテクニック:「第一話で掴め! 読者の心とランキングトップ!」
SNS運用戦略:「バズらせる投稿術とファンコミュニティ構築」
黒鳥響士郎の執筆法:「テンプレとアイデアの融合!」
・特典
黒鳥自身による作品添削。(希望者のみ)
あなたの作品を三万字まで読んで褒めます。
直筆サイン入りノベル解説書『麗しき黒鳥様の指南書』
受講料:月額5,000円 (税込) ※学生割引あり
新レーベル『ダスクフェザー文庫』設立のお知らせ
ダスクフェザー文庫が始動する!
この新文庫は執筆に命を懸けた者だけが集う場だ!
クリエイターの声を広げ、光を当てるためのラノベ業界の新星となる!
そして、創刊を記念し『ダスクフェザー賞』 を開催いたします!
・募集テーマ
ダークでエッジな冒険譚
― 絶望の中で光を掴む英雄の物語や、影に生きる者たちの叛逆劇。
禁断の愛
― 決して許されない愛、運命に抗う恋。美しさと狂気が交錯するロマンス。
ジャンル不問! あなたの熱い物語が、ここで輝きを放つ時です。
応募期間
来年度1月1日~3月31日
・採用特典
ダスクフェザー文庫の創刊タイトルとして書籍化確約!
豪華イラストレーターによるカバーアート制作!
黒鳥響士郎による直接アドバイス(希望者のみ)
・選考基準
独創的なアイデア。
読者を惹きつける強烈な世界観とキャラクター。
心を揺さぶるテーマ性と物語の完成度。
審査員は黒鳥響士郎が担当! あなたの才能を見極めます!
何かが違う作品が勝利の鍵を握るぞ!
さぁ! 共にラノベ業界の新時代を切り開こう!
――――――
「な、なんじゃこりゃアアアアア!?」
龍は古い刑事ドラマの登場人物のように叫んでしまった。
配布された紙には黒鳥のラノベ講座と――。
「ダ、ダストフェザー文庫だとオオオオオ!」(※ダスクフェザー文庫です)
新レーベル『ダスクフェザー文庫』の宣伝と、謎コンテストのお知らせが書かれていた。
その宣伝チラシを食い入るように見つめるはダークワナビスト達。
彼ら彼女らは目をギンギンに光らせ、涎を撒き散らす。
その様はまさに『飢える野獣』のようであった。
「ドフッドフッ! 黒鳥先生!」
「ここに書かれているのは何でありんすか!」
「おひょー! 黒鳥先生の講座は前から知っておりましたが!」
「ダスクフェザー文庫とはなんぞなもし!」
「コ、コンテスト! コンコンコンコンコンテストーっ!」
次々と質問が投げかけられる。
黒鳥は指で数字の『8』を描きながらこう答えた。
「私は業界に『革命』を起こしたくてね」
革命。
この黒鳥響士郎というラノベ作家は確かにそう述べた。
「出版業界は大物作家ばかりに目を向けているが『真の才能』は無名の中に眠っている。私はその隠された宝石を掘り起こしたい」
掘り起こす。
黒鳥はまうざりっとをチラリと目をやりながら『真の才能』をスコップしたいのだという。
この黒きラノベ作家の芝居がかった演説は続く。
「私もこの業界で長いこと飯を食っていて感じているが――『ラノベは軽視されがち』だ」
ラノベは軽視されているという。
その理由を黒鳥は次のように説明する。
「世間一般ではラノベは『低俗』だの『子供騙し』だのと評価されていることが多い。特に伝統的な文学や高尚な小説の支持者から、ラノベを見下すような態度を取られることが多い」
その言葉に会場のダークワナビスト達が「確かに……」とざわつく。
そして、龍も――。
(そ、そういえばそうだよなァ)
最初、黒鳥のことをイカスミまんと心の中で失言していた龍。
ラノベは『低俗』で『子供騙し』という話は何度もSNS上で飛び交っていた。
そもそも、ラノベは若年層をターゲットにしている。
読みやすさを重視しているため、文学的な『重厚さ』や『深み』を求める層からは『軽い』『浅い』と見られることがままあった。
また、アニメ化やマンガ化されたラノベが派手な演出やキャラクターデザインで注目されるが『ラノベ=アニメや漫画の原作』程度に思われがちで識者からは軽くみられる傾向があった。
「ラノベが何故軽視されるのか? それは一部の人間が『安易な娯楽』と決めつけ! 真摯に創作している者達の努力を見ようとしないからだ!」
黒鳥は手をホワイトボードに叩きつけ、聴衆の注意を引きつける。
その様は一流の政治家のようである。
「ラノベには何がある? 冒険がある! ロマンスがある! 笑いがあり、涙があり、人生がある! それを軽視するヤツに尋ねたい――『では、君達が語る小難しいだけの高尚な文学は読者を幸せにしてきたのか』と!」
会場の熱気が一段と高まる中、黒鳥は続ける。
「革命だ! 私達はラノベを文化の頂点に押し上げる!」
らんらんと目を輝かせるダークワナビスト達、ボルテージは十分だ。
黒鳥は席を埋める聴衆を見渡しながら拳を突き上げる。
「ジークラノベ!」
どっかで聞いたような台詞の黒鳥に反応は――。
――ジークラノベ!
――ジークラノベ! ジークラノベ!
――ジークラノベ! ジークラノベ! ジークラノベ!
上々、ダークワナビスト達の咆哮が一斉に木霊する。
ここは龍が住むH市の『H市立図書館』。
この静かにすべき小さな図書館は興奮と熱狂が渦巻くライブ会場へと変貌していた。
お前ら静かにしろ! と注意するものはいない、いや注意出来なかったが正しいだろう。
それほどまでにこいつらは暴走していた。
「私と共に革命を起こそうではないか諸君! そのためには戦う武器『小説を書く技法』が必要なのだ!」
黒鳥のメガネが怪しく輝く。
その目はどこを見つめているのか判別不能、この男の話術にダークワナビスト達は引き込まれていた。
「そこで是非とも『最強黒鳥塾』に入塾し、私の講座で学んだことを活かし、ダスクフェザー文庫が主催するコンテストに応募し挑戦して欲しいのだ!」
黒鳥響士郎の熱弁は止まる気配を見せない。
ホワイトボードに『最強無双のチート方程式』と題し、大胆に『最強黒鳥塾 ➡ ダスクフェザー文庫賞に応募 ➡ 書籍化』と書き込む。
「この三段階が勝利への道だ! 最強黒鳥塾で基礎を学び、コンテストに参加し、ダスクフェザー文庫で華麗にデビューする!」
黒鳥は両手でドンと勢いよくホワイトボードを叩いた。
「戦いは始まっている! 我々で文学界に旋風を巻き起こしてやろう!」
しんと静まる会場。
数秒経ったであろうか、龍の前列に座るカーミラとサクリンのグラトニーズはヒソヒソ話を始めた。
「これって……黒鳥先生の最強黒鳥塾に入った方がいいってこと?」
「話の流れからして、塾生はコンテストに通過しやすいって意味にとれるけど……」
その小さな虫の声を聞き取った黒鳥は意味深に述べた。
「勘違いしてもらいたくないが応募作品は公平に見るし、いい作品なら拾い上げる。ただこの業界にはコネというものがあるらしいからね」
ザワつく会場。
ダークワナビスト達は宣伝チラシに見つめ、手を震わせる。
(な、なんだそりゃ。それって、このイカスミまんの塾生は公募に通過しやすいって意味じゃないか)
龍は複雑な表情で黒鳥とまうざりっとを見ていた。
黒鳥はニヤニヤとした表情で聴衆を見渡し、椅子に座るまうざりっとは下を向いたままだ。
(こんなわかりやすいものに誰が――)
龍が呆れていると隣に座るガリメガネは呟いた。
「お、俺……最強黒鳥塾に入塾する!」
「え!?」
同じくして、龍の隣に座る鷹の目の女も興奮気味に述べた。
「あ、あたいも……あたいも最強黒鳥塾に入塾するわ!」
「お、お前もか!」
続き、ダークワナビスト達も!
「キースキスキス! 黒鳥先生の講座で勉強して! 学んだことを作品に活かして!」
「チェストー! ダスクフェザー文庫のコンテストに参加するばい!」
「受賞して夢の書籍化作家になるけんよ! ワンワン!」
「でへっでへへっ! 業界で随一の黒鳥先生が創設したレーベルだ! 安心の品質保証ゥ!」
「他にも、これまで多くのコミカライズ化やアニメ化してきた先生だサラマンダー! 漫画やアニメ業界とのパイプも太いはずだサラマンダー!」
また、書籍化経験を持つグラトニーズも!
「サクリンちゃん! 入塾しましょう!」
「オス! これまで私達って『我流は無形』ってな感じが強すぎたもんね!」
「最強黒鳥塾でお作法を覚えてコンテストに応募しましょう!」
「そうしましょう! そうしましょう! もう一度書籍化作家になりましょう!」
「私達はもう二度と!」
「打ち切りという泪を飲まないために!」
――書籍化や!コミカライズや!アニメ化や!
――書籍化や!コミカライズや!アニメ化や!
――書籍化や!コミカライズや!アニメ化や!
異様、まさに異様だった。
ダークワナビスト達は一心不乱にそう連呼する。
脳内で繰り広げられる自分勝手な夢という妄想を彼ら彼女らは繰り広げていた。
「目ぇ覚ませもっとお前ら!」
会場に響き渡る声。
このドラゴンな檄を飛ばしたのは――。
「いつまで甘えてやってんねん創作!」(エセ関西弁)
ギアドラゴンこと阿久津川龍太郎である。
講演も終盤に差しかかってきた。
龍は一時間以上、黒鳥の自慢も交えられた講義を受けうんざりフェイスだ。
(話がくどいうえに長い。それに最初は対談形式の講演のハズが、いつの間にかイカスミまんの講義になってるぞ)
しかし、龍の周りにいるダークワナビスト達は修羅の形相で耳を澄まし、メモをとる。
そんな必死のダークワナビスト達を見て、黒鳥はほくそ笑み、ホワイトボードに文字を書き込む。
「戦略! 戦術! 市場戦略! 市場調査! それが『総合ポイント』を集めるコツだ!」
それら四文字の言葉が盤上で踊る。
「総合ポイント! これらが多ければ多いほど『ランキング上位』へと駆け上がることが出来る! 上位に食い込めば拾い上げの可能性があり! 公募では下読み及び審査員の目にも止まりやすい!」
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「しかしなァ……ここまでの話はラノベ業界という小さな範囲だけのものだ。私はそれ以上のものを目指している」
(ん? まだイカスミまんの話が続くのか)
龍の眉がピクリと動く。
これまで散々SNS上にばら撒いてきた攻略法という創作論以外に何があるのだろうか。
「配っちゃうぜ☆」(指パッチンしながら)
司会進行役の星ヶ丘が、講演に集まる参加者達に何やらビラを配り始めた。
それはA4サイズの紙でカラー印刷されたものである。
「おらよ」
「あ、ども……」
隣りの鷹の目の女から愛想悪く紙を渡される龍。
その紙にはこう書かれていた。
――――――
黒鳥響士郎のオンラインラノベ講座『最強黒鳥塾』
開講!
「この講座はただの講座ではない! 勝つための武器を授ける場所だ!」
対象: ラノベ作家志望者、現役作家、ランキングに伸び悩む作家
・内容
市場戦略講座:「ジャンル選びとターゲット層の徹底分析」
作品磨きテクニック:「第一話で掴め! 読者の心とランキングトップ!」
SNS運用戦略:「バズらせる投稿術とファンコミュニティ構築」
黒鳥響士郎の執筆法:「テンプレとアイデアの融合!」
・特典
黒鳥自身による作品添削。(希望者のみ)
あなたの作品を三万字まで読んで褒めます。
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受講料:月額5,000円 (税込) ※学生割引あり
新レーベル『ダスクフェザー文庫』設立のお知らせ
ダスクフェザー文庫が始動する!
この新文庫は執筆に命を懸けた者だけが集う場だ!
クリエイターの声を広げ、光を当てるためのラノベ業界の新星となる!
そして、創刊を記念し『ダスクフェザー賞』 を開催いたします!
・募集テーマ
ダークでエッジな冒険譚
― 絶望の中で光を掴む英雄の物語や、影に生きる者たちの叛逆劇。
禁断の愛
― 決して許されない愛、運命に抗う恋。美しさと狂気が交錯するロマンス。
ジャンル不問! あなたの熱い物語が、ここで輝きを放つ時です。
応募期間
来年度1月1日~3月31日
・採用特典
ダスクフェザー文庫の創刊タイトルとして書籍化確約!
豪華イラストレーターによるカバーアート制作!
黒鳥響士郎による直接アドバイス(希望者のみ)
・選考基準
独創的なアイデア。
読者を惹きつける強烈な世界観とキャラクター。
心を揺さぶるテーマ性と物語の完成度。
審査員は黒鳥響士郎が担当! あなたの才能を見極めます!
何かが違う作品が勝利の鍵を握るぞ!
さぁ! 共にラノベ業界の新時代を切り開こう!
――――――
「な、なんじゃこりゃアアアアア!?」
龍は古い刑事ドラマの登場人物のように叫んでしまった。
配布された紙には黒鳥のラノベ講座と――。
「ダ、ダストフェザー文庫だとオオオオオ!」(※ダスクフェザー文庫です)
新レーベル『ダスクフェザー文庫』の宣伝と、謎コンテストのお知らせが書かれていた。
その宣伝チラシを食い入るように見つめるはダークワナビスト達。
彼ら彼女らは目をギンギンに光らせ、涎を撒き散らす。
その様はまさに『飢える野獣』のようであった。
「ドフッドフッ! 黒鳥先生!」
「ここに書かれているのは何でありんすか!」
「おひょー! 黒鳥先生の講座は前から知っておりましたが!」
「ダスクフェザー文庫とはなんぞなもし!」
「コ、コンテスト! コンコンコンコンコンテストーっ!」
次々と質問が投げかけられる。
黒鳥は指で数字の『8』を描きながらこう答えた。
「私は業界に『革命』を起こしたくてね」
革命。
この黒鳥響士郎というラノベ作家は確かにそう述べた。
「出版業界は大物作家ばかりに目を向けているが『真の才能』は無名の中に眠っている。私はその隠された宝石を掘り起こしたい」
掘り起こす。
黒鳥はまうざりっとをチラリと目をやりながら『真の才能』をスコップしたいのだという。
この黒きラノベ作家の芝居がかった演説は続く。
「私もこの業界で長いこと飯を食っていて感じているが――『ラノベは軽視されがち』だ」
ラノベは軽視されているという。
その理由を黒鳥は次のように説明する。
「世間一般ではラノベは『低俗』だの『子供騙し』だのと評価されていることが多い。特に伝統的な文学や高尚な小説の支持者から、ラノベを見下すような態度を取られることが多い」
その言葉に会場のダークワナビスト達が「確かに……」とざわつく。
そして、龍も――。
(そ、そういえばそうだよなァ)
最初、黒鳥のことをイカスミまんと心の中で失言していた龍。
ラノベは『低俗』で『子供騙し』という話は何度もSNS上で飛び交っていた。
そもそも、ラノベは若年層をターゲットにしている。
読みやすさを重視しているため、文学的な『重厚さ』や『深み』を求める層からは『軽い』『浅い』と見られることがままあった。
また、アニメ化やマンガ化されたラノベが派手な演出やキャラクターデザインで注目されるが『ラノベ=アニメや漫画の原作』程度に思われがちで識者からは軽くみられる傾向があった。
「ラノベが何故軽視されるのか? それは一部の人間が『安易な娯楽』と決めつけ! 真摯に創作している者達の努力を見ようとしないからだ!」
黒鳥は手をホワイトボードに叩きつけ、聴衆の注意を引きつける。
その様は一流の政治家のようである。
「ラノベには何がある? 冒険がある! ロマンスがある! 笑いがあり、涙があり、人生がある! それを軽視するヤツに尋ねたい――『では、君達が語る小難しいだけの高尚な文学は読者を幸せにしてきたのか』と!」
会場の熱気が一段と高まる中、黒鳥は続ける。
「革命だ! 私達はラノベを文化の頂点に押し上げる!」
らんらんと目を輝かせるダークワナビスト達、ボルテージは十分だ。
黒鳥は席を埋める聴衆を見渡しながら拳を突き上げる。
「ジークラノベ!」
どっかで聞いたような台詞の黒鳥に反応は――。
――ジークラノベ!
――ジークラノベ! ジークラノベ!
――ジークラノベ! ジークラノベ! ジークラノベ!
上々、ダークワナビスト達の咆哮が一斉に木霊する。
ここは龍が住むH市の『H市立図書館』。
この静かにすべき小さな図書館は興奮と熱狂が渦巻くライブ会場へと変貌していた。
お前ら静かにしろ! と注意するものはいない、いや注意出来なかったが正しいだろう。
それほどまでにこいつらは暴走していた。
「私と共に革命を起こそうではないか諸君! そのためには戦う武器『小説を書く技法』が必要なのだ!」
黒鳥のメガネが怪しく輝く。
その目はどこを見つめているのか判別不能、この男の話術にダークワナビスト達は引き込まれていた。
「そこで是非とも『最強黒鳥塾』に入塾し、私の講座で学んだことを活かし、ダスクフェザー文庫が主催するコンテストに応募し挑戦して欲しいのだ!」
黒鳥響士郎の熱弁は止まる気配を見せない。
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「これって……黒鳥先生の最強黒鳥塾に入った方がいいってこと?」
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その小さな虫の声を聞き取った黒鳥は意味深に述べた。
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ザワつく会場。
ダークワナビスト達は宣伝チラシに見つめ、手を震わせる。
(な、なんだそりゃ。それって、このイカスミまんの塾生は公募に通過しやすいって意味じゃないか)
龍は複雑な表情で黒鳥とまうざりっとを見ていた。
黒鳥はニヤニヤとした表情で聴衆を見渡し、椅子に座るまうざりっとは下を向いたままだ。
(こんなわかりやすいものに誰が――)
龍が呆れていると隣に座るガリメガネは呟いた。
「お、俺……最強黒鳥塾に入塾する!」
「え!?」
同じくして、龍の隣に座る鷹の目の女も興奮気味に述べた。
「あ、あたいも……あたいも最強黒鳥塾に入塾するわ!」
「お、お前もか!」
続き、ダークワナビスト達も!
「キースキスキス! 黒鳥先生の講座で勉強して! 学んだことを作品に活かして!」
「チェストー! ダスクフェザー文庫のコンテストに参加するばい!」
「受賞して夢の書籍化作家になるけんよ! ワンワン!」
「でへっでへへっ! 業界で随一の黒鳥先生が創設したレーベルだ! 安心の品質保証ゥ!」
「他にも、これまで多くのコミカライズ化やアニメ化してきた先生だサラマンダー! 漫画やアニメ業界とのパイプも太いはずだサラマンダー!」
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「サクリンちゃん! 入塾しましょう!」
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「最強黒鳥塾でお作法を覚えてコンテストに応募しましょう!」
「そうしましょう! そうしましょう! もう一度書籍化作家になりましょう!」
「私達はもう二度と!」
「打ち切りという泪を飲まないために!」
――書籍化や!コミカライズや!アニメ化や!
――書籍化や!コミカライズや!アニメ化や!
――書籍化や!コミカライズや!アニメ化や!
異様、まさに異様だった。
ダークワナビスト達は一心不乱にそう連呼する。
脳内で繰り広げられる自分勝手な夢という妄想を彼ら彼女らは繰り広げていた。
「目ぇ覚ませもっとお前ら!」
会場に響き渡る声。
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