異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
59 / 123
お店編

59 彼女の幼馴染だという男

しおりを挟む
 その後、事の報告をするために、中隊本部にソージを連れて向かうことになった。
 家にカツヒトを残すことはなにかと心配だったが、アークが居れば大丈夫だと考え直して向かった。

 走るような速さで歩いていたが、ソージは何かを察したのか、何も言わずに黙って俺の速度に付いてきた。
 
 中隊本部に着いた俺は、直ぐに中隊長の執務室に向かっていた。
 今日は、大人しく書類仕事をしていた中隊長に、ソージは俺達に話したことをもう一度語った。
 中隊長は、話を聞き終えた後、難しい表情をしながら言った。
 
「分かった。大隊長と陛下に報告してくる。ソージと言ったな。付いてこい。ヴェインは、お嬢ちゃんのことが心配だろうから、このまま戻っていい」

 そう言った中隊長は、ソージを連れて王城に向かった。
 俺はと言うと、少しでも早くシズの元に戻ろうと、全力疾走していた。
 
 走る間、あの日見た光景が俺の頭をよぎっていた。
 
 嫌な予感のした俺が、シズの家に向かった時のことをだ。
 
 ドアノブが壊されて、店の入口が開いているのを見た俺は、溢れそうになる殺気を必死に抑えながらも、自分に冷静になれと言い聞かせて、身を潜めながら扉を開けた。
 逸る気持ちを抑えて中の様子を窺うと、中に三人分の気配があった。
 そのうちの一つは、シズのものだとすぐに気がついた。
 シズの近くに一つ。距離を取るようにもう一つ。
 
 腰の剣に手を掛けて、抜きながらシズの近くの気配に切りかかった。
 
 相手は、既の所で俺の剣を弾いていた。
 
 シズから離そうと、剣を振るうも相手はそれなりの使い手らしく、埒が明かなかった。
 剣を合わせながら、もう一つの気配を探ると、意識を失っているようだったので、剣を合わせている男に怒気を孕んだ声で言い放った。
 
「どういうつもりだ。シズから離れろ」

 俺がそう言うと、相手が意外なことに言い返してきたのだ。
 
「お前こそ何者だ。しずを襲ったやつの仲間か?なら、お前も半殺しだ」

「は?何を抜け抜けと!!お前とあそこで伸びているやつでシズを襲ったんだろうが!」

 話は平行線のまま、剣を合わせること数分。
 
 打ち合いは、アークの言葉によって終わったのだった。
 
「兄様!!待ってください!!その男は、シズを助けてくれたんです!!」

 鍔迫り合いの状態で、互いに睨み合っていると、さらに別の声が言った。
 
「ちょっ!カツ、待て待て!!その人は、香澄を保護してくれている、ヴェインさんだ!!剣を納めろ!!」

 その声を聞いた、目の前の男は何故か俺に、さらなる殺気を放ってきた。
 それに気が付いたのだろう、慌てたように謎の声は言った。
 
「カツ!!香澄が泣いて縋った相手だとしても、お前のそれはお門違いだ!!」

 男の言葉に、俺は力の限り目の前の男の剣を弾いていた。
 シズが泣いて縋った?どういうことだ?
 そんなことを一瞬考えたが、相手の男の吐き捨てた言葉を俺は聞き逃さなかった。
 
「こいつが、ヴェイン……。しずが助けを求めた相手……」

 こんな状況だと言うのに、俺は一番に俺のことを思い出して助けを求めたという事実に嬉しさがこみ上げていた。
 そうしていると、アークがシズを介抱している姿が目に入った。
 俺は、剣を収めてアークに聞いた。
 
「アーク、シズは?」

「頬が腫れて、唇も切れてます。頭も打っているようで、瘤になってますね。幸いなことに、衣服に大きな乱れはないので、乱暴はされていないようです。ですが、早く医師を呼ぶべきですね。ポーションがあれば、直ぐに傷は治るとは思いますが、シズに出してもらわないといけないので、今は医師に頼る他にないですね」

 大きな外傷はなさそうだと聞いた俺は、安心した。
 シズをそっと抱き上げて、彼女の部屋に運ぼうとしたが、謎の男がそれを遮った。
 
「おい、俺がしずを運ぶ」

「俺が運ぶ。お前はここにいろ。聞きたいことが山ほどある」

 俺がそう言うと、謎の男は悔しそうに顔を歪めて押し黙った。
 
 シズを寝かせている間に、アークが息を切らした女医を連れてきた。
 診察をしてもらうため、俺とアークは部屋を出て診察結果を待った。
 
 部屋から出てきた女医が言った。
 
「顔と頭の打撲と、唇が切れていること以外に外傷はありませんでした。それと……、性的に乱暴されたという形跡はありませんでしたので、安心してください。これから、熱が上がっていくと思いますので、解熱剤を置いていきますね。明日また診察に来ます」

 女医に礼を言って見送った後に、店に残したままだった謎の男達に声を掛けた。
 
「それで、お前たちは何者なんだ?」

 俺がそう言うと、俺と剣を合わせた方の男が言ったのだ。
 
「俺とそこにいるメガネは、しず……、静弥の……。同郷の者だ……」

 その言葉を聞いた俺は、シズがクラス単位でこの世界に召喚されたという話を思い出していた。
 そんな俺に、男は続けて言った。
 
「俺は……、しずの幼馴染だ。だから、これからは俺がしずを守る……。もう、しずを一人にしない……。絶対だ。もう間違わない。奏弥さんとの約束を今度こそ守る……」

 これが、俺とカツヒトとの最低最悪な出会いだった。
しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

処理中です...