緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

文字の大きさ
1 / 72
カワミ様・アラミ様

#1

しおりを挟む
 この地域には、古くから、カワミ様アラミ様という、蛙の神様が居るという、言い伝えがあった。
 カワミ様と言うのは、無色透明な蛙だ。大きさは、普通のアマガエルと変わらない、三センチほどで、複数体居る。無色透明とは言え、完全な透明ではなく、葛餅の様に、少しだけ濁った感じだ。内蔵は見えず、目だけがギラリと光っているらしい。
 一方アラミ様は、強大なアマガエルだ。大きさは曖昧で、山の様にという人も居れば、漬物石程度という人も様々だ。
 これらを、『実際』に見るのではなく、『夢』に現れる。更には、二体を同時に現れる事は、無いらしい。
 それぞれどちらかが、夢に現れると、近日中に、その恩恵や危害を受ける。
 カワミ様を見た物は、仕事で出世したり、宝くじが当たったりと幸運が訪れる。
 アラミ様は、その逆で、翌朝事故に遭ったり、畑が荒らされていたりと、不運が降りかかる。
 噂には尾ひれがついて、カワミ様が現れた数、アラミ様の大きさでそれぞれの運の強さを計れるらしい。

 何故そんな話をしたかと言うと、私も今朝、その夢を見て飛び起きてしまったのだ。
 しかし、私のそれは噂とは、まるで違っていた。
 カワミ様とアラミ様、両方出現したのだ…。
 そんな噂等、一度も聞いたことがなかった…。

 目を覚まし、部屋を出ると、一目散に視界に入ったのは、葛餅の様な半透明な蛙だった。
 普通のアマガエル程の大きさの半透明の蛙が、廊下に鎮座していたのだ。
 最初は一匹だけかと思ったが、彼等は、廊下の壁や扉等、至る所に点在し、鳴き袋の辺りを動かし、呼吸していた。
 夢の中だと言うのに、私は嬉しくなり、廊下を走り抜け、意味もなく台所に向かった。
そして、そこで視界に飛び込んできたのは、漬物石サイズの大きな蛙だった。
 おどろおどろしい、黄緑色の大きなアマガエルは、台所の隅の方に鎮座し、じっとこちらを見つめていた。
 そこで私は気が付いた。廊下に居た、半透明な蛙たちも、余すことなく、こちらを見つめていた…。

 そこで、目が覚めた…。
 身体からは、まるで雨に打たれたのではないかと、錯覚するくらい、寝汗を掻いていた。
 時計を見ると、六時を少し過ぎたあたりだった。
 仕事が始まるまでは、まだ少し時間があるが、もう一度目を瞑る事が出来なかった。
 夢の話。将又、噂話とは言え、そんな物を見た後だ。流石にそこまで図太い性格をしている訳ではない…。
 すっかり目が冴えた私は、取り敢えず煎餅布団を畳み、押し入れに仕舞った。
 二対の神様が出て来るとはどういう事なのか…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

雨が止むとき、人形は眠る

秋初夏生
ホラー
「雨の日に人が突然倒れる」という不可解な事件が、金沢で続発していた。 冥府庁調査課の神崎イサナと黒野アイリは調査の末、ひがし茶屋街に佇む老舗の人形店「蓮月堂」へ辿り着く。 そこでは“誰も作った覚えのない人形が、夜ごと少しずつ増えている”という奇妙な噂が立っていた。 病に伏す人形師・桐生誠士は、異変の真相解明を二人に託し、さらに姿を消した元弟子の人形師“斎宮”を探してほしいと願う。 増え続ける人形、曖昧に濁される証言、消えた記録。静かな雨音の下で、隠された想いが少しずつ輪郭を帯びていく。 これは、失ったものを手放せなかった人間の執念が引き起こす、じわじわと心を侵す怪異の物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

処理中です...