緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#14

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 壁際にあった、バーカウンターは、所々に、シミが付いて居たり、カビが生えて居たり、しているが、少し磨けば、まだ使えそうだ。
 棚に入っている、酒瓶も、埃を被ってはいるが、飲めないことはないだろう。
 私がバーカウンターの方を、眺めていた時、違和感を覚えた物があった。それは、一本のワインだった。他の酒瓶同様、封は開いており、埃を被っているのは、変わらない。違和感を覚えたのは、ラベルに張られた、数字だ。
 「1987?」
 私が、それを読み上げた。寺井さんも同じことを、思ったのか、そのワインの瓶を、手に取った。
 ラベルに刻印されている4桁の数字は、原料となるブドウが収穫された、年である。詰まり、そのワインは、1987年に、収穫されたブドウを使用して、作られたものだ。
 約40年も前から、空き家になっているこの洋館には、明らかに矛盾している物だ。
 「メーカーは、それなりに有名な所だけど、特別高級ってわけでもないな…。それに、埃は、被っては居る物の、まだ真新しいぞ…。つい最近まで、誰かが、飲んでいた物かもしれない。」
 「他にも、グラスや食器なんかも、真新しいものが、ありますね。」
 大谷も、壁にかけてあった、食器類を、眺めながら、そう言った。
 埃と言うのは、環境や、場所によるが、一周間、放置していれば、それなりに溜まる場合もある。だから、汚れで、その建物や、家具の手付かずを、計ることはできない。
 とはいえ、誰が、何の目的で、この洋館に侵入しているのかも、検討が付かない。今のところ、窓にも、破損は無く、鍵も締まっている。だから、入って来れるとすれば、私たちが入ってきた、玄関からのみ。それでも、鍵が掛かっていた為、ピッキングのうでがあれば、別かもしれないが、侵入するのは、更に、難しいだろう。
 「最近まで、誰かが住んでいたんですかね…。」
 「解らんな…。とりあえず、次の部屋、回るか。部屋の映像、取れたか?」
 寺井さんが、大谷のカメラを、確認しようと、ワインの瓶を、棚に戻した時だった。
 
 カラン…。
 
 と、廊下の方から、音が響いた。空き缶の様な物が、蹴とばされた時の様な、音だ…。
 私たちは、驚き、一斉に、廊下の方に視線を、送った。
 音が、聞こえたのは、玄関とは、真逆の方向の二階に続く、階段が、ある方だ。
 「今の、何?」
 「何かが、落ちたんじゃねぇのか?」
 「落ちたって、どうして?この建物には、僕等しか、居ない筈ですよね?」
 「どっかから、ネズミが、入り込んでいるかもしれないだろ?」
 寺井さんが、言い聞かせる様に、そう言った。
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