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井戸
#3
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「…うぅ…。苦しい…。寒い…。迎えに来たぞ…。呼びに来たぞ…。」
唸り声は、そう聞こえたかと思うと、急に静かになった。
私は、慎重にカーテンを捲った。ベランダには、人影が一つ、立っていた。
人影は、不気味に揺れており、姿形ははっきりとは、分からなかった。
「おいお前、何者だ…。」
「うぅ…。お前を…迎えに来た…。」
気がつくと夜が明けており、私は自然と目を覚ましていた。どうやら夢を見ていたらしい。寝汗が酷く、鼓動もかなり激しかった。
「最悪な目覚めだな…。」
ベッドを抜け、カーテンを開け、ベランダに出た。
まだ日が出たばかりらしく、空気は澄んでいて、肌寒かった。ベランダは、何か変わったところはなく、強いて言えば、少し苔が生え始めていることだ…。
朝の缶コーヒーを買いにコンビニに向かう途中のアパートに、パトカーが数台と人だかりができていた。
特に興味はなかったが、野次馬たちの言葉から、“子どもが一人居なくなった。”と聞こえてきた。
横目で、アパートの方を見た。そこには、必死で警察に事情を話す、両親の姿が見えた。
私はまた、あの井戸の所へ来ていた。この井戸にはどうしてか、愛着の様なものがあった。
「今日も、いらっしゃったのですか?」
そう声をかけてきたのは、昨日のお坊さんだった。
「昨日あの後、先代に話を聞いたのですが、その井戸の話には、続きがあるんです。」
「続き?」
井戸に封印と蓋をかけたその後、全くその風習が行われなかったわけではなかった。
たった一度だけ、蓋と封印がこじ開けられ、井戸の中に赤子を投げ入れた親が居るらしい。
それも、今から24年前の話しらしい…。
「その親はどうなったんですか?」
「親は翌日、決定的な現場を目撃され、御用となったが、その後井戸やその周辺の捜索を行ったらしいですが、赤子の遺体どころか骨一つ見つからなかったらしいです。」
「遺体一つも?」
「えぇ。昔沈められたはずの赤子たちの骨も…。」
風習があったからには、何かしら遺体が上がってもおかしくはないはずだ…。だが、井戸の中からは、何も見つかっていない…。
「それは妙な話ですね…。」
そう相槌を打つと、お坊さんは、更に声を低くした。
「妙な話といえば、貴方昨日その井戸の蓋の裏に、御札が貼られていなかったかとおっしゃられませんでしたか?」
「え、えぇ。ですが、私の勘違いだったようで…。」
「勘違いではありませんよ。あの蓋の裏には、たしかに御札が貼られていました…。不通の人間には見えない、強力な魔封の札です。」
唸り声は、そう聞こえたかと思うと、急に静かになった。
私は、慎重にカーテンを捲った。ベランダには、人影が一つ、立っていた。
人影は、不気味に揺れており、姿形ははっきりとは、分からなかった。
「おいお前、何者だ…。」
「うぅ…。お前を…迎えに来た…。」
気がつくと夜が明けており、私は自然と目を覚ましていた。どうやら夢を見ていたらしい。寝汗が酷く、鼓動もかなり激しかった。
「最悪な目覚めだな…。」
ベッドを抜け、カーテンを開け、ベランダに出た。
まだ日が出たばかりらしく、空気は澄んでいて、肌寒かった。ベランダは、何か変わったところはなく、強いて言えば、少し苔が生え始めていることだ…。
朝の缶コーヒーを買いにコンビニに向かう途中のアパートに、パトカーが数台と人だかりができていた。
特に興味はなかったが、野次馬たちの言葉から、“子どもが一人居なくなった。”と聞こえてきた。
横目で、アパートの方を見た。そこには、必死で警察に事情を話す、両親の姿が見えた。
私はまた、あの井戸の所へ来ていた。この井戸にはどうしてか、愛着の様なものがあった。
「今日も、いらっしゃったのですか?」
そう声をかけてきたのは、昨日のお坊さんだった。
「昨日あの後、先代に話を聞いたのですが、その井戸の話には、続きがあるんです。」
「続き?」
井戸に封印と蓋をかけたその後、全くその風習が行われなかったわけではなかった。
たった一度だけ、蓋と封印がこじ開けられ、井戸の中に赤子を投げ入れた親が居るらしい。
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「えぇ。昔沈められたはずの赤子たちの骨も…。」
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「それは妙な話ですね…。」
そう相槌を打つと、お坊さんは、更に声を低くした。
「妙な話といえば、貴方昨日その井戸の蓋の裏に、御札が貼られていなかったかとおっしゃられませんでしたか?」
「え、えぇ。ですが、私の勘違いだったようで…。」
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