緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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井戸

#4

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 「強力な魔封の札…。」
 その答えはすぐに出た。私の足元が急に白い光で覆われた。白い光はかなりの熱を持っているのか、火傷してしまうのではないかと思う程だ…。
 「な、何だ…!アツッ!」
 「やはり貴方には感じますか…。それが先ほど申し上げた魔封の札を陣にしたものです…。」
 陣…。眩い地面に目をやると、確かに何かを線や曲線を繋ぎ合わせた円形の模様がきれいに彫られていた。
 「こ、これは、どういう…。」
 「遥か昔に井戸に投げ込まれた赤子たちは、長い年月をかけ、憎しみと怨念を募らせた。そこへ、最近になって新たな赤子が投げ込まれた。投げ込まれた赤子は井戸の底の瘴気に触れ、即死と共にこの世の者ではなくなった。
 赤子は自力で井戸を這い上がり、この街で普通の人間として、今の今まで生きてきた。」
 お坊さんは語りながら、持っていた竹箒を置き、両手で指を絡め、何度か印を結んだ後、右手だけ残し人差し指と中指だけ立てた。すると、指先から何本かの糸状の光が現れた。
 「そして、この間の落雷で蓋が破壊され、本体が放たれてしまった…。そしておそらく同じ力を持った者も元へと向かった。
 昨日来ましたよね?貴方の元へ、影の様なモノが…。」
 光の糸は私の顔の近くまで来たかと思うと、口の中に飛び込んできた。その時初めて、自分の体の自由が利かないことが分かった。
 「昨日初めて会ったときに、直ぐにわかりました。貴方が、こっちの世界の者ではないことが…。ですが、貴方自身それを自覚していない…。だからこうする他ありませんでした…。」
 最初は何を言われているのか分からなかったが、次第に記憶の片隅にしまっていた風景が断片的に脳裏に浮かんできた…。
 暗い深い穴に落ちていく時に見上げた空の色。こちらを覗き込んでいる女性の顔。井戸の壁を這っているときの蓋の裏に貼り付けられたお札。
 「意識をしっかり持って下さい!そうしないと貴方の体も持ちませんよ!」
 その声と共に、視界がようやく鮮明になり、私の口から飛び出している真っ黒い影が見える様になった。
 「!」
 「それが、貴方の体に取りついている、瘴気と呪いの本体です。それを無理やり引き剥がします。しっかりと、自分の意識を持って下さい。」
 私の頭一つ分くらいの大きさの影が出てきたころ、耳元で溜息の様な唸り声が聞こえた。その声は、昨夜聞いた声と似ていた…。
 「…こんな縛陣で私を留められると思うなよ…。」
 そう聞こえた瞬間、体が急に重くなりまたしても、視界がぼやけてきた…。
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