緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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井戸

#5

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 次に目が覚めた時には、私は寺の本堂の中の仏像の前で横になっていた。
 一体、何時間眠っていたのかは分からないが、外の風景を見るに夕方になっているのは確かだ…。
 私の口から出ていた、黒い影の様なモノは既に居なくなっており、気のせいか体が軽くなっている様に感じた。
 「気が付きましたか。」
 私がその声に釣られ、体を起こすとお坊さんが一人、別の仏像の前に座り、蝋燭と線香を供えていた。
 「あの影は、協力者の助けもあり、何とか貴方の体から引っ張り出し、井戸の底へ封印しました。
 今まで以上に強く、重く、硬い術をかけましたので、井戸の底から這い上がることすら、できないでしょう。それに、蓋も今まで以上に強固なものに変えておきましたので、これまで以上に安心かと思います。」
 お坊さんは、近くにあった水桶から、水を汲み、私の前に持ってきた。
 「これをお飲み下さい。」
 渡された茶碗の中には、綺麗な水が入っていた。私はそれを一口で飲み干し、茶碗を元の場所へ戻した。
 「貴方はこれからの事を、決めなければいけません。」
 「決めなければいけないとは?」
 私が聞き返すと、背後の戸が開く音がした。振り返ると、浴衣の様な和服と羽織を着こみ、腰には日本刀の様な物を携えた男性が一人と、モダンなメイド服を姿の女性が一人、こちらにやってきた。
 「少し手こずりましたが、井戸は完全に封鎖できました。」
 メイド服の女性がそう言うと、男は近くの座布団に腰を下ろし、刀を体に立て掛けた。
 「楔も一応打ってきたし、蓋が開いた程度じゃぁ、簡単には出てこないだろう。」
 「恩に着ます。」
 男性の言葉に、お坊さんは軽くお辞儀をし、彼らの元にお茶の入った湯飲みを差し出した。
 「さ、本題に入ろうか…。」
 男がお茶を一啜りすると、“妖の世界”について、語りだした。
 その話を聞き、俺はこの街を離れ、“妖の世界”で生きることにした。
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