緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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因果の部屋

#2

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そんな無限に続く部屋はずっと薄暗く、瀲灔ちらちらと揺らめく蝋燭の火が、部屋全体を柔らかく照らし、疲れていなくても眠気を誘ってくる。
 一体ここはどこで、何なのか…。どうやってここに迷い込んでしまったのか、はっきりとは思い出せない程の時間を過ごしてしまった…。
 私はここで、息絶えてしまうのか…。それとも、息絶えることは許されておらず、永遠の時間を彷徨さまよう存在となってしまうのだろうか…。
 2つに折り畳んだ座布団に頭を乗せ、呆うっと意味もなく、視界に入ったものを見ていた。
 その時だった。微かにだが、蝋燭の火が棚引く音に紛れ、何かを引き摺る様な音が聞こえた。
 最初は幻聴かと思ったが、幻聴ではない。なぜなら、今度は何かが倒れるような音が聞こえたからだ。
 今まで歩んできた部屋の方ではない。次に向かおうと思っていた方の部屋からだ。
 私は起き上がり、音のした方へと向かった。
 まっすぐに十部屋程進むと、襖の隙間から、光が漏れているのが見えた。蝋燭の火の大きさではない。
 更に部屋を進んでいくと、光は段々強くなっていき、遂にその光の近くまで辿り着いたとき、その正体が分かった。
 今まで通ってきた部屋は、不思議と綺麗で、破損や汚れなどは、目立たなかった。今私が居る部屋は、お世辞にも綺麗とは言えない。畳は汚れ、襖は破け、行灯は倒れ、座卓は足が折れていた。
 更に部屋を進むにつれ、部屋は荒んでいき、終いには巨大な空間へと辿り付いた。
 私と同様、この部屋も何年もの歳月を重ね、遂には朽ち果てていた。
 山の様にある鉄瓶から水が零れ、それが集まり、巨大な沼の様になっていた。さっきまで漏れていた光は、この沼に所々に光る蝋燭の火が反射して、眩しく見えていただけだった。
 天を見上げると、無数に存在する部屋が、遥か彼方まで積まれ、胡麻粒程の大きさにまでなっていた。空こそは見えないものの、どこからか、月明かりの様な白い光は差し込んできており、瀲灔ちらちらと揺れる蝋燭の火は、まるで星の様に輝いていた。
 代り映えのしない風景をずっと見てきた所為か、がっかりとした気持ちはまるでなく、この幻想的な風景を目に焼き付けておきたいとまで思った。
 暫くその大空間を眺めていると、向う岸の私のいる部屋から3階程上がった部屋に、人影の様な物が見えた。
 一瞬見間違いかと思ったが、そうではなかった。何せ、行灯を提灯替わり持ち、歩いていたからだ…。
 「おーい!」
 声の出し方など、忘れかけていたが、何とか絞りだし、その人影に向かって叫んだ。
 向うの人も、気が付いたのか、提灯を左右に振り、応えてくれた。
 私は嬉しくなり、何とか向う岸に渡れないかと左右を見回した。すると、左に7部屋程行った所に、何とか生き残っている、梁を見つけ、それを伝い向う岸に渡った。
 向うの人も察しが付いたのか、梁のある階へと降りてきてくれていた。
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