緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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因果の部屋

#3

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 人影の正体は、古い紺色の着流しに朱色の花模様が目立つ羽織を着た男だった。腰の帯の部分には、刀を携えており、一目にも私の生きていた時代とは違う人物だということが、分かった。
 「貴様もこの屋敷に迷い込んでしまったのか?」
 久々に聴く、人の声は何とも懐かしく、思わず泣きだしてしまいそうだったのだが、それを必死で堪え、彼の言葉に返事をした。
 「はい…。ただ、どうやってここに入ってきたのか。どうやったらここを出られるのか。そもそもここがどこなのかも分からないんです…。」
 「儂も一緒じゃ。服装を見るに、儂とは違う時代か国から来たのじゃろう…。」
 男は私の来ていた、パーカーの紐や、ポケットの部分を物珍しそうに眺めた。
 男は“藤原”と名乗り、彼の寝床としている部屋へと案内された。
 対岸の部屋も、私が今まで見てきた部屋と全く一緒の作りだった。だが。数部屋進んだところに、座卓を階段状に重ね、上階や下階に行けるようになっていた。
 なんでも、男が天井や床を刀で斬り開き、行き来できるように、工作したらしい。
 男の部屋は、そこから3階分上がったところにあり、行灯や箪笥が2つずつある以外は、変わったところはない…。
 「あの藤原さんは、一体いつごろからここに居るんですか?」
 「…さて…。忘れちまった…。」
 藤原は蝋を何本も溶かして湯飲みに入れ、さらにその中央に蝋燭を十何本を束ねて、巨大な炎が出る様にしていた。
 更に、蝋燭以外に火が燃え移らないことを逆手に取り、箪笥に丸く穴をあけ、そこに鉄瓶を乗せ、コンロの様にこしらえていた。私では到底思い付かない様な知恵で、生活している様だった。
 「これ、藤原さんが作ったんですか?」
 藤原は、照れくさそうに頷くと、湧いたお湯を使い、茶を入れてくれた。
 この茶も、最初の頃はよく飲んでいたが、最近は全く…。まさか、ここにきて、ここの物に懐かしさを感じるときが来るとは、夢にも思わなかった。
 「…貴様は、ここについて何も知らないといっていたが、儂が居た時代には噂が流れるほど、有名な場所だった…。」
 藤原はゆっくりと語りだした。
 どうやらここは、『因果の部屋』と言われる、話に酷似した場所らしい。
 「その、“因果の部屋”ってどんな話なんですか?」
 藤原が言うには、昔、若い女性が、山菜を獲りに山に出かけた帰り道のこと。普段通っている筈の道の傍に、古い屋敷が立っているのに気が付いた。女性は、不思議に思い、門から屋敷の中を覗いた。
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