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9 神獣との出会い・ポーション成功
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「森の風が運んできた香りに誘われてみれば――まさか、これほど心満たす香気とはな」
見上げると、空から舞い降りてきたのは黄金の毛並みの狐。背にはふわりと広がる柔らかな翼が生え、全身から淡く光をまとうような神々しさがあった。
「……神殿の壁画に描かれていた神獣様に、そっくり……?」
その瞬間、私の前にあった小鍋がふわりと浮かんだ。神獣様がそっと翼を一振りすると、銀の粒子をまとった風が小鍋を包み込み、あっという間に熱を霧散させる。
鍋がひんやりとした光をまとったその刹那、彼は一息で中身を飲み干した。
「……うむ。これは見事な出来だ。まるで神力を内に宿したかのようだな」
金色の瞳が細められ、どこか満足げに笑う。
「礼を言う、娘よ。我が名はセイルズ。気まぐれに空を旅する神獣――かの隣国王家に仕える者なり……困難に遭えば、思い出すがよい。名を呼べば、風とともに応じよう。」
私は息をのんだ。その名前は確かに聞いたことがある。姿を見た者は少なく、“神々の使い”とも“空の守護者”とも囁かれる伝説の存在。
「ふむ、スフレドリたちがこれほど懐いているとは……なるほど、おぬしは……」
語尾が風に消えると同時に、セイルズの姿もまた、そっと空へと溶けていった。
――これが、私とセイルズの出会いだった。
その背を見送りながら、私は呟いた。
「……やっぱり、なにか、とても効能があったみたいね。でも、あなたが持ってきてくれた葉がどこにあるのかわからないと、再現するのは難しいわね」
肩にいたスフレドリに向かって呟くと、その子がぴぃと一声鳴いて飛び立った。そして私の前を舞いながら、導くように森の奥へ。
たどり着いたのは、淡いブルーの葉が群生する一角だった。私はそっと一枚摘み取り、あのときと同じように調合を始める。
できあがったポーションは、澄んだブルーに淡く光る、不思議な透明感をもっていた。私はそれを、小瓶にそっと詰める。全部で十本。ふたを閉めて軽く振ると、液体が小さなきらめきを放った。
これが、あの子たち――スフレドリたちと作ったポーション。
まずは自分で試してみないと。
私はその場で一本を開けて、慎重に口をつけた。口当たりはやわらかく、ほんのり甘い。そして、飲み下したあとで、体の内側がじんわりと温まってくるような感覚があった。その夜は、深く、穏やかな眠りについた。
二日目も、私は一本を飲んでから仕事に向かった。薬師塔での調合や記録作業がスムーズに進み、途中で集中が切れることもなかった。しかも、午後には不意に鏡を見て驚いた。
――肌、明るくなってる……?
目元のくすみが取れ、頬に自然な艶が戻っている。髪もさらりと落ち着いて、まるで上質な髪用香油で整えたような感触だった。
三日目の朝もポーションを飲むと、仕事が終わってからも薬草研究に集中できた。新しいポーションのアイデアも次々と浮かんでくる。これなら、自信を持ってナナさんたちに渡せそうだ。
私は、上質な布に包んで一本ずつリボンを結び、小さなラッピング袋に詰めた。それを抱えて、夕食後、リビングでくつろぐナナさんとリゼさんのもとへ向かう。
「おふたりに、お礼がしたくて……これ、私が調合したポーションなんです。疲労回復と集中力の向上、それに美容と快眠効果も……ちょっと欲張って、いろいろ詰め込んでみました」
思わず照れて早口になってしまった私に、ナナさんとリゼさんが同時に目を丸くした。
「リーナ、それ全部!? 一度でそんなに? あんたすごすぎない?」
「……どれだけ試行錯誤したの? 無理はしなかったでしょうね? 気持ちは嬉しいけど、リーナの身体だってちゃんと大切にしないとだめよ」
私は小さく笑って答えた。
「三日かけて、自分でも試してみました。体調はばっちりです。むしろ、元気になりました」
ふたりは顔を見合わせて、「それなら安心」と微笑み、すぐに小瓶の栓を抜いてくれた。
ナナさんがひとくち飲んで、ぱちぱちと瞬きをする。
「……ん? あれ? これ、すごくいい香り。しかも、頭がすーっと冴えてくる感じ……え、ちょっと待って? 体がふわっと軽い……って、うそ、これ効きすぎじゃない!?」
リゼさんも慎重にひとくち……そして、柔らかくため息をついた。
「……リーナ、本当にあなた一人で作ったの? 私、さっきまで唇がカサついてたのに、もうしっとりしてる。……肌も……潤ってる。なにこれ……まさか、ここまでとは……」
ふたりは再び目を見合わせ、そして同時に声を上げた。
「リーナ、もう天才だわ!」
そして、躊躇なく私を抱きしめてくれた。
――よかった。本当によかった。
この想いがちゃんと届いたこと。お世話になっているふたりに、ちゃんと“恩返し”ができたこと――それが、なにより嬉しかった。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※このポーションのおかげで、リーナに転機が訪れます。しかし、それを良く思わない聖女が……これから物語がゆっくりですが、大きく動きます! お見逃しなく😄
※明日も朝7時、夜19時更新です。
見上げると、空から舞い降りてきたのは黄金の毛並みの狐。背にはふわりと広がる柔らかな翼が生え、全身から淡く光をまとうような神々しさがあった。
「……神殿の壁画に描かれていた神獣様に、そっくり……?」
その瞬間、私の前にあった小鍋がふわりと浮かんだ。神獣様がそっと翼を一振りすると、銀の粒子をまとった風が小鍋を包み込み、あっという間に熱を霧散させる。
鍋がひんやりとした光をまとったその刹那、彼は一息で中身を飲み干した。
「……うむ。これは見事な出来だ。まるで神力を内に宿したかのようだな」
金色の瞳が細められ、どこか満足げに笑う。
「礼を言う、娘よ。我が名はセイルズ。気まぐれに空を旅する神獣――かの隣国王家に仕える者なり……困難に遭えば、思い出すがよい。名を呼べば、風とともに応じよう。」
私は息をのんだ。その名前は確かに聞いたことがある。姿を見た者は少なく、“神々の使い”とも“空の守護者”とも囁かれる伝説の存在。
「ふむ、スフレドリたちがこれほど懐いているとは……なるほど、おぬしは……」
語尾が風に消えると同時に、セイルズの姿もまた、そっと空へと溶けていった。
――これが、私とセイルズの出会いだった。
その背を見送りながら、私は呟いた。
「……やっぱり、なにか、とても効能があったみたいね。でも、あなたが持ってきてくれた葉がどこにあるのかわからないと、再現するのは難しいわね」
肩にいたスフレドリに向かって呟くと、その子がぴぃと一声鳴いて飛び立った。そして私の前を舞いながら、導くように森の奥へ。
たどり着いたのは、淡いブルーの葉が群生する一角だった。私はそっと一枚摘み取り、あのときと同じように調合を始める。
できあがったポーションは、澄んだブルーに淡く光る、不思議な透明感をもっていた。私はそれを、小瓶にそっと詰める。全部で十本。ふたを閉めて軽く振ると、液体が小さなきらめきを放った。
これが、あの子たち――スフレドリたちと作ったポーション。
まずは自分で試してみないと。
私はその場で一本を開けて、慎重に口をつけた。口当たりはやわらかく、ほんのり甘い。そして、飲み下したあとで、体の内側がじんわりと温まってくるような感覚があった。その夜は、深く、穏やかな眠りについた。
二日目も、私は一本を飲んでから仕事に向かった。薬師塔での調合や記録作業がスムーズに進み、途中で集中が切れることもなかった。しかも、午後には不意に鏡を見て驚いた。
――肌、明るくなってる……?
目元のくすみが取れ、頬に自然な艶が戻っている。髪もさらりと落ち着いて、まるで上質な髪用香油で整えたような感触だった。
三日目の朝もポーションを飲むと、仕事が終わってからも薬草研究に集中できた。新しいポーションのアイデアも次々と浮かんでくる。これなら、自信を持ってナナさんたちに渡せそうだ。
私は、上質な布に包んで一本ずつリボンを結び、小さなラッピング袋に詰めた。それを抱えて、夕食後、リビングでくつろぐナナさんとリゼさんのもとへ向かう。
「おふたりに、お礼がしたくて……これ、私が調合したポーションなんです。疲労回復と集中力の向上、それに美容と快眠効果も……ちょっと欲張って、いろいろ詰め込んでみました」
思わず照れて早口になってしまった私に、ナナさんとリゼさんが同時に目を丸くした。
「リーナ、それ全部!? 一度でそんなに? あんたすごすぎない?」
「……どれだけ試行錯誤したの? 無理はしなかったでしょうね? 気持ちは嬉しいけど、リーナの身体だってちゃんと大切にしないとだめよ」
私は小さく笑って答えた。
「三日かけて、自分でも試してみました。体調はばっちりです。むしろ、元気になりました」
ふたりは顔を見合わせて、「それなら安心」と微笑み、すぐに小瓶の栓を抜いてくれた。
ナナさんがひとくち飲んで、ぱちぱちと瞬きをする。
「……ん? あれ? これ、すごくいい香り。しかも、頭がすーっと冴えてくる感じ……え、ちょっと待って? 体がふわっと軽い……って、うそ、これ効きすぎじゃない!?」
リゼさんも慎重にひとくち……そして、柔らかくため息をついた。
「……リーナ、本当にあなた一人で作ったの? 私、さっきまで唇がカサついてたのに、もうしっとりしてる。……肌も……潤ってる。なにこれ……まさか、ここまでとは……」
ふたりは再び目を見合わせ、そして同時に声を上げた。
「リーナ、もう天才だわ!」
そして、躊躇なく私を抱きしめてくれた。
――よかった。本当によかった。
この想いがちゃんと届いたこと。お世話になっているふたりに、ちゃんと“恩返し”ができたこと――それが、なにより嬉しかった。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※このポーションのおかげで、リーナに転機が訪れます。しかし、それを良く思わない聖女が……これから物語がゆっくりですが、大きく動きます! お見逃しなく😄
※明日も朝7時、夜19時更新です。
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