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6ー1 花束と手紙をもらったからって好きになったわけじゃないから
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「お嬢様、エズルバー伯爵家の方がいらっしゃっております」
ある日の午後、ウォーク公爵家の家令が、先触れもなくいらっしゃった迷惑な客人の訪問を知らせた。
「今は、お父様達もお姉様もいらっしゃいませんからお引き取りいただいて。私一人では対応できかねますわ」
「はい、かしこまりました」
家令がお父様達の不在を告げている間も、屋敷の奥に位置するサロンにいた私は、すっかりあの失礼なワイアット様達がいらしたのだとばかり思っていた。
「デイジーの花束?」
来客を追い返した家令が手にしている花束は可憐なピンクのデイジーだった。
「これをワイアット様が持っていらっしゃったの?」
「いいえ、次男のバーノン様です。旦那様達がお留守だと伝えたところ、この花束だけでも渡してもらえないかと懇願されました」
「そう、お姉様にかしら?」
「いいえ、ティベリアお嬢様に、だそうです。ワイアット様とエルズバー伯爵夫妻の非礼をお詫びしたい、とのことでした」
私がデイジーの花束を手に取ると、可憐な花の間に挟んである小さな手紙が床に落ちた。それは私に対する心のこもった謝罪が感じられる手紙だった。同じ両親から産まれてもこれほど違うのね、と感心するぐらいだったわ。
やがてお姉様とお父様達がお戻りになって、私はバーノン様がいらっしゃったことを報告した。
「兄弟揃って愚か者なのかしら? もうエズルバー伯爵家のどの方とも会う気はないですのに」
お姉様はたいして興味もなさそうだ。
「どうせあの家族の一員の弟も似たような性格なのだろう。顔も見たくないな」
お父様は吐き捨てるようにおっしゃった。
「全くですわ」
お母様も、もうエズルバー伯爵家とは関わり合いになるつもりはないらしい。もちろん私もあの手紙を読むまではそう思っていたけれど。
「バーノン様のお話だけでも聞いてみたらどうかしら? 実はデイジーの花束をいただいたの。丁寧な謝罪のお手紙も添えられていたわ。ワイアット様と両親の失礼な言動をとても恥じていました」
「あら、まぁーー。もしかして、その方を気に入ったの? だとしたらお姉様に任せておきなさい」
ちょっとミステリアスな笑みに私はすかさず意見した。
「お姉様、バーノン様はおやつにしてはいけません。あの方は食べないで。それに花束をもらったからといって、すぐに好きになるほど単純ではありません」
私にだって分別はある。可愛い花束や優しい手紙をいただいただけで、今までのエズルバー伯爵家の失礼な言動がなかったことになるわけではないし、いきなり好きになんかならない。
それでもバーノン様のお話を一度は聞いてあげてもいいのに、と思うほどには好意を感じていた。
「綺麗な心の人間の血ってまずいからおやつにはしませんよ。でも、味見すれば善人かどうかわかるのよ。それに恋愛ってインスピレーションもあるから些細なことで好きになっても良いと思うわ」
「味見もダメです。それからまだ好きになっていません!」
「ふーーん。まだ、ね。それって・・・・・・うふふ。バーノン様に興味が湧いたわ。早速、明日にでも招待しましょう」
お姉様は途端にバーノン様に会う気満々になっていた。私はなぜか今日のディナーは控えめにしようと考えている。最近、ワイアット様の言動の影響でストレス解消に食後のデザートを欠かさず食べていたのよ。
お気に入りのドレスが入らなくなったら大変、急にそのようなことを思った私はいったいどうしたのかしら?
ある日の午後、ウォーク公爵家の家令が、先触れもなくいらっしゃった迷惑な客人の訪問を知らせた。
「今は、お父様達もお姉様もいらっしゃいませんからお引き取りいただいて。私一人では対応できかねますわ」
「はい、かしこまりました」
家令がお父様達の不在を告げている間も、屋敷の奥に位置するサロンにいた私は、すっかりあの失礼なワイアット様達がいらしたのだとばかり思っていた。
「デイジーの花束?」
来客を追い返した家令が手にしている花束は可憐なピンクのデイジーだった。
「これをワイアット様が持っていらっしゃったの?」
「いいえ、次男のバーノン様です。旦那様達がお留守だと伝えたところ、この花束だけでも渡してもらえないかと懇願されました」
「そう、お姉様にかしら?」
「いいえ、ティベリアお嬢様に、だそうです。ワイアット様とエルズバー伯爵夫妻の非礼をお詫びしたい、とのことでした」
私がデイジーの花束を手に取ると、可憐な花の間に挟んである小さな手紙が床に落ちた。それは私に対する心のこもった謝罪が感じられる手紙だった。同じ両親から産まれてもこれほど違うのね、と感心するぐらいだったわ。
やがてお姉様とお父様達がお戻りになって、私はバーノン様がいらっしゃったことを報告した。
「兄弟揃って愚か者なのかしら? もうエズルバー伯爵家のどの方とも会う気はないですのに」
お姉様はたいして興味もなさそうだ。
「どうせあの家族の一員の弟も似たような性格なのだろう。顔も見たくないな」
お父様は吐き捨てるようにおっしゃった。
「全くですわ」
お母様も、もうエズルバー伯爵家とは関わり合いになるつもりはないらしい。もちろん私もあの手紙を読むまではそう思っていたけれど。
「バーノン様のお話だけでも聞いてみたらどうかしら? 実はデイジーの花束をいただいたの。丁寧な謝罪のお手紙も添えられていたわ。ワイアット様と両親の失礼な言動をとても恥じていました」
「あら、まぁーー。もしかして、その方を気に入ったの? だとしたらお姉様に任せておきなさい」
ちょっとミステリアスな笑みに私はすかさず意見した。
「お姉様、バーノン様はおやつにしてはいけません。あの方は食べないで。それに花束をもらったからといって、すぐに好きになるほど単純ではありません」
私にだって分別はある。可愛い花束や優しい手紙をいただいただけで、今までのエズルバー伯爵家の失礼な言動がなかったことになるわけではないし、いきなり好きになんかならない。
それでもバーノン様のお話を一度は聞いてあげてもいいのに、と思うほどには好意を感じていた。
「綺麗な心の人間の血ってまずいからおやつにはしませんよ。でも、味見すれば善人かどうかわかるのよ。それに恋愛ってインスピレーションもあるから些細なことで好きになっても良いと思うわ」
「味見もダメです。それからまだ好きになっていません!」
「ふーーん。まだ、ね。それって・・・・・・うふふ。バーノン様に興味が湧いたわ。早速、明日にでも招待しましょう」
お姉様は途端にバーノン様に会う気満々になっていた。私はなぜか今日のディナーは控えめにしようと考えている。最近、ワイアット様の言動の影響でストレス解消に食後のデザートを欠かさず食べていたのよ。
お気に入りのドレスが入らなくなったら大変、急にそのようなことを思った私はいったいどうしたのかしら?
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