(完結)伯爵家嫡男様、あなたの相手はお姉様ではなく私です

青空一夏

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5 愚かな長男と賢い次男 ワイアット視点/バーノン視点

(ワイアット視点)

 ウォーク公爵家には毎日のように通っているが、カトレア嬢からはなんの返事もいただけないでいた。時間だけが過ぎていき、焦り始めている僕だ。

 思い悩みながらも父上の執務室の前を通りかかる。

「え! なぜエルズバー伯爵家との取引から手を引くとおっしゃるのですか? 長年、持ちつ持たれつやってきた仲ではありませんか?」
 執務室から漏れてくる父上の悲痛な声にただならぬ雰囲気を感じ、僕は慌てて聞き耳を立てる。立ち聞きは行儀の良いことではないが、たまたま聞こえてきてしまったのだ。やむを得まい。

 お次は母上の声がサロンの方から響いてきた。

「なんですって? エジンバラ公爵家の夜会の招待状が皆様にもう届いておりますの? そんな・・・・・・私はまだ頂いておりませんわ・・・・・・エジンバラ公爵家は筆頭公爵家で社交界での影響が大きいのに・・・・・・去年はお招きいただいたのになぜ・・・・・・え? お帰りになるのですか? 皆様、お待ちになって。まだお茶会は始まったばかりでしてよ?」
 母上の切羽詰まる困り果てた声が僕を動揺させた。

 内容からして我が家はエジンバラ公爵家から嫌われたらしい。それを察知した今日のお茶会にお呼びした客人達は早々と退散したのだろう。権力者から疎まれている家の者と仲良くしていても何のメリットもないからだ。

(なぜいきなりこのようにエルズバー伯爵家に打撃を与えることばかりが起こるのだろうか?)

 しかも、ぐっすり眠っているはずなのに頭が痛く身体もだるい。最近は頻繁に倒れることがあって、お抱えの医者に診せたら貧血だと言われた。





「兄上はもっと空気の良いのどかな場所に静養に向かわれた方がよろしいかと思います。父上もこの機会に引退なさってゆっくりしたらいかがですか? このエルズバー伯爵家の存続の為です」
 ある日、弟のバーノンがきっぱりとした口調でそう言った。

「お前は次男だぞ! まだ僕が家督を継がないと決めたわけではない。カトレア様からまだお返事がない今、あの妹の方を妻に迎えるしかなさそうだ」

「は? ティベリア嬢よりカトレア嬢が良いなどと失礼なことを言っておいて、相手にされなかったからティベリア嬢で我慢する、とでもおっしゃるつもりですか? さらに怒りを買うだけです」

「これは家同士の結びつきだろう? お互いにメリットがあるからあちらは縁を結ぼうとエルズバー伯爵家に縁談を持ち込んできたと思う。対等な関係だ。なんなら、あちらが最初に打診してきたのだから、こちらが優位だと思っている。姉がダメなら妹にしたって全く問題ないはずだ」

「バカなのですか? エルズバー伯爵家の事業の取引先を全部書き出して見ると良いです。全てウォーク公爵家の息のかかった貴族達や子飼いの大商人に繋がります。つまり、我がエルズバー伯爵家はウォーク公爵家の恩恵の下で繁栄している。あちらの不興を買ったら生き残れません。明らかにこちらは格下、養われている身なのですよ」

「ウォーク公爵家は怒っているのか? なぜ?」

「鈍いですね! カトレア様を激怒させたのでしょう? あの方は妹のティベリア嬢を溺愛しています」

(まさか、そんな感じには見えなかったけど。少しも怒っているようには見えなかったぞ)

 僕はバーノンの言葉を全く信じていなかった。




(バーノン視点)

 兄上に縁談が来たけれどその相手に驚愕した。相手は筆頭公爵家に引けを取らない権勢を誇るウォーク公爵家の次女ティベリア嬢だという。

 わたしは徹底的にウォーク公爵家を調べた。多岐にわたる事業は諸外国でも展開されており、その資産は莫大なものであろうことが予想された。しかも大商人として活躍しているほとんどの者達が、子飼いの部下だということもわかる。なんてことだ、筆頭公爵家よりも力があるじゃないか。

 これなら王家よりもずっと影響力があるのに、なぜあの立場のままでいるのか? 能ある鷹は爪を隠す、か。多分、そうなのだろう。だから想像できた。あの方達は感情を他人の前では露わにしない。

 だから兄上達がした愚かな申し込みにも声を荒げなかったのだ。しかし、ウォーク公爵家に出入りしている商人達に聞けばすぐにわかる。姉妹仲の良さと家族愛に溢れている一族だということが。

 つまり、きっと我が家は報復される。あちらはただ小バエにいちいち声をかけないだけだ。ただ黙って潰す。きっとそういうことなのだ。

 だからわたしはこれから謝りに行こうと思う。どうにか話しだけでも聞いてくれることを願うだけだ。失礼なことをした両親と兄上の非礼を詫びて頭を下げよう。

 とりあえずはティベリア嬢が好きだというデイジー(ひなぎく)の花束を持って行こう。

 
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