（完結））恋人よ、貴方は誰を見ているの？（５話完結）

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人気モデルレイチェル嬢の熱愛、お相手は妹のマライア嬢の婚約者？　
王家ご用達オウエンズ商会の跡取り御曹司との許されぬ恋？　
衝撃密会現場で熱い接吻！！

大きな文字がゴシップ紙を賑わす。あやふやな情報は文字化されると、それがあたかも真実のようにうつるから不思議ね。クレメント様とはお付き合いをしていたけれどまだ婚約者にはなっていない。それでも『？』を語尾につけることで記者達は確認もせずに書いていく。

ほぼ男性からの人気で持っていたお姉様のモデル生命は徐々に絶たれていく。さらに、相手が私とお付き合いしているクレメント様だったことは女性ファンの反感を買った。女性は略奪愛を歓迎しないのよ。だからお姉様の仕事はますます減っていった。

雑誌の記者達は私を質問攻めにしたけれど、私はあらかじめ用意していた言葉しか言わない。

「お姉様とクレメント様がお互い愛し合っているのならば、悲しいですけれど喜んで身を引きますわ。私はレイチェルお姉様が大好きですから」

ゴシップ紙の記者達は私を姉に恋人を寝取られた可哀想なヒロインにしてくれたの。




学園卒業後の私は本格的に女優業に専念した。今では主役も脇役もできる演技派女優として活躍している。そして姉はたまに私の代役を務めて、いつも大根役者と言われ笑われている。

「演技派女優の姉はモデルしかできないお人形さんだものね。綺麗なうちしか需要がない着せ替え人形なんて、年を取ったらなんの価値もないわ」

「それに比べてマライア様のあの演技！　マライア様が泣くところは絶対もらい泣きしますもの」

　巷の声のほとんどはこのようなものだった。もう私は姉の陰に隠れる子供ではない。







　実は･･････あの密会現場を雑誌記者に知らせたのも私だし、たまにわざと姉を代役になるように仕向けているのも私だ。

　
「大好きなお姉様。女優の私には子供を産む時間なんてないわ。お姉様とクレメント様の間にできた子供はとても可愛いですわね。3人目を私の養子にくださらない？」

　さらに数年後、すっかり大女優として地位を確立した私はお姉様夫婦にそう提案した。二人は顔を青くして下を向く。あの時におっしゃった会話を忘れているのかしら？　

「ふふふ、冗談ですわ。では、さようなら。もうお会いすることもないでしょう」
　
　私は明日、隣国へ旅立つ。映画作成の本場、ハリウッダイに。もうこの国に二度と戻らない覚悟で･･････






完