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私は屋敷に戻り号泣したわ。それからはクレメント様の為ではなく自分の為に努力した。お姉様の真似ではなく自分自身を磨こうとしたけれど、さらに2キロ痩せるとますます顔はお姉様に似てしまった。
でもこれはありのままの自分だから気にしない。お姉様は緩やかなウエーブのついた金髪をふんわりと結ってオレンジの口紅がお気に入りだけれど、私は真っ直ぐな白い髪をハーフアップに整え口紅は淡いピンクにした。
「口紅はオレンジが良いと思うなぁ。それからハーフアップではなくて全体的に巻いてふんわりと結った方が綺麗だよ」
クレメント様の真意を知った今では、ただにこやかに微笑みそんな意見は無視した。これからの私はクレメント様のおっしゃる通りにするつもりは全くない。デートのお誘いも3回に2回は断った。あちらのオウエンズ商会の方が影響力のある大きな商会なので、いきなり全てのデートのお誘いを断って怒らせたくはなかった。
そんな時、お姉様にチョイ役だけれど映画出演のお話しが来た。けれど、その撮影日に体調を崩したお姉様が私に代役を頼んできたの。やりたくはなかった、お姉様のことなんて助けたくなかったわ。
でも演劇の世界には元から興味があったから思い切って引き受けた。任された役はヒロインの友達で出演場面もそれほど多くない。お姉様に見えるようにカツラを被りメイクも寄せた。脇役だからアップにもならず姉の代わりに撮影ができた。
失恋したヒロインと一緒に泣く場面では、クレメント様とお姉様の密会現場を思い浮かべて号泣した。映画監督はびっくりしたようだったけれど、とても良いと褒めてくれたわ。
体調の戻ったお姉様は次の週の撮影日には嬉々として行ったけれど、戻って来た時にはとても怒っていた。
傍らには映画のスタッフがおり、私に頭を軽く下げる。
「監督がね、レイチェルさんではなくてマライアさんに出演してほしいそうです。演技がとても光っていたとおっしゃっていました」
「だめです。妹は華やかな場所が苦手なのですわ。ね、そうでしょう? マライア。この子は私の真似しかできないなんの取り柄もない子なのですから」
お姉様は私の頭をまた以前のように撫でようとする。
「やります。華やかな場所に自分が似合うとは思いませんが、主役を引き立てる脇役なら私にもできると思います」
「やめなさいよ、マライア。私は反対よ」
お姉様がとても怒る。
「ごめんなさい、お姉様。私はやります」
あの優しいお姉様が舌打ちした。
それから半年後に上映された映画は大ヒットし、私はチョイ役だったにも拘わらず絶賛された。私とお姉様が逆転した瞬間だった。
それ以来、私にはたくさんの役が舞い込む。もちろん主役ではないけれど、そんなことはどうでもいい。この時には演技の楽しさにのめり込んでいて、お姉様とクレメント様のこと等どうでも良くなっていた。
「最近、忙しすぎるよね。全然会えなくて寂しいよ」
クレメント様はわざわざ私の教室にまでやって来た。傍らにはお姉様もいる。
「そうよ、さすがにお仕事を入れすぎではないかしら? マライアは学園を卒業したらクレメント様と結婚するのでしょう? だったらもうお仕事はセーブした方がいいと思うの」
「お仕事をセーブすることになるのはお姉様かもしれませんね。お姉様のファンは男性が多いですもの」
「え? どういう意味なのよ? ちょっと映画に出たからっていい気にならないでよ! マライアなんてただの脇役ばかりじゃないの。主役にもなれないくせに女優ぶって偉そうにしないで。そのうち、どちらが上かわかる時がくるわ。マライアは私の後ろにいつも隠れていれば良いのよ!」
声を荒げて怒るお姉様を見るのは初めてだった。
大好きだったお姉様はもういない・・・・・・
でもこれはありのままの自分だから気にしない。お姉様は緩やかなウエーブのついた金髪をふんわりと結ってオレンジの口紅がお気に入りだけれど、私は真っ直ぐな白い髪をハーフアップに整え口紅は淡いピンクにした。
「口紅はオレンジが良いと思うなぁ。それからハーフアップではなくて全体的に巻いてふんわりと結った方が綺麗だよ」
クレメント様の真意を知った今では、ただにこやかに微笑みそんな意見は無視した。これからの私はクレメント様のおっしゃる通りにするつもりは全くない。デートのお誘いも3回に2回は断った。あちらのオウエンズ商会の方が影響力のある大きな商会なので、いきなり全てのデートのお誘いを断って怒らせたくはなかった。
そんな時、お姉様にチョイ役だけれど映画出演のお話しが来た。けれど、その撮影日に体調を崩したお姉様が私に代役を頼んできたの。やりたくはなかった、お姉様のことなんて助けたくなかったわ。
でも演劇の世界には元から興味があったから思い切って引き受けた。任された役はヒロインの友達で出演場面もそれほど多くない。お姉様に見えるようにカツラを被りメイクも寄せた。脇役だからアップにもならず姉の代わりに撮影ができた。
失恋したヒロインと一緒に泣く場面では、クレメント様とお姉様の密会現場を思い浮かべて号泣した。映画監督はびっくりしたようだったけれど、とても良いと褒めてくれたわ。
体調の戻ったお姉様は次の週の撮影日には嬉々として行ったけれど、戻って来た時にはとても怒っていた。
傍らには映画のスタッフがおり、私に頭を軽く下げる。
「監督がね、レイチェルさんではなくてマライアさんに出演してほしいそうです。演技がとても光っていたとおっしゃっていました」
「だめです。妹は華やかな場所が苦手なのですわ。ね、そうでしょう? マライア。この子は私の真似しかできないなんの取り柄もない子なのですから」
お姉様は私の頭をまた以前のように撫でようとする。
「やります。華やかな場所に自分が似合うとは思いませんが、主役を引き立てる脇役なら私にもできると思います」
「やめなさいよ、マライア。私は反対よ」
お姉様がとても怒る。
「ごめんなさい、お姉様。私はやります」
あの優しいお姉様が舌打ちした。
それから半年後に上映された映画は大ヒットし、私はチョイ役だったにも拘わらず絶賛された。私とお姉様が逆転した瞬間だった。
それ以来、私にはたくさんの役が舞い込む。もちろん主役ではないけれど、そんなことはどうでもいい。この時には演技の楽しさにのめり込んでいて、お姉様とクレメント様のこと等どうでも良くなっていた。
「最近、忙しすぎるよね。全然会えなくて寂しいよ」
クレメント様はわざわざ私の教室にまでやって来た。傍らにはお姉様もいる。
「そうよ、さすがにお仕事を入れすぎではないかしら? マライアは学園を卒業したらクレメント様と結婚するのでしょう? だったらもうお仕事はセーブした方がいいと思うの」
「お仕事をセーブすることになるのはお姉様かもしれませんね。お姉様のファンは男性が多いですもの」
「え? どういう意味なのよ? ちょっと映画に出たからっていい気にならないでよ! マライアなんてただの脇役ばかりじゃないの。主役にもなれないくせに女優ぶって偉そうにしないで。そのうち、どちらが上かわかる時がくるわ。マライアは私の後ろにいつも隠れていれば良いのよ!」
声を荒げて怒るお姉様を見るのは初めてだった。
大好きだったお姉様はもういない・・・・・・
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