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龍の花嫁(リリィ視点)
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私が、大泣きしていると、とても綺麗な先ほどの男性が、優しい眼差しで蕩けそうな表情を浮かべこちらを見つめていた。
思わず、あたりを見回した。あのような視線の先に私がいるなどあり得ないからだ。
キョロキョロしていると、その男性は、クスクスと笑った。
「私の花嫁は、美しいばかりでなく、所作も可愛いな。貴女は、なにを探しているの? 喉でも、乾いたかな? 今、温かいミルクを用意させよう。なにか食べた方がいいかな。まぁ、食べなくても死なない体だが・・・・・・」
この男性の話している内容の半分も理解できない私は、グレイス様の顔を見つめて助けを求めた。
「私は、生きているのでしょうか? ここは天国ではなくて? そして、この綺麗な男性はどなたでしょうか?」
私は、おそるおそる尋ねた。
「あら、この方はリリィの旦那様になる龍神様でしょう? 貴女達は、とてもお似合いだわ! こうしてはいられないわ。お義母様、叔母様方、式の計画をたてなければ、あちらの部屋で打ち合わせをいたしましょう!」
いそいそと、部屋を出て行かれて、私はこの男性と二人っきりになった。
「さぁ、飲んで。なにが食べたい? こういうときは、パン粥がいいとグレイスが言ったが、大丈夫、貴女はもうなんでも食べていい」
私は、この男性から見つめられて、うっとりと幸せな気分になったけれど、戸惑いは隠せない。私は、侍女が持ってきたミルクを飲みながら自分がどういう存在になったかを聞かされた。
「あ、あのぅーー、龍神様に申し上げます。私は、ここが天国だと思ったものですから大それたことを口にいたしました。私は、龍神様の花嫁になれるような女ではないのです。私は貴方様にはふさわしくないです!」
私は、このような方の妻になるなど、恐れ多くて身体が震えてきたのだった。
龍神様は、大きな鏡に埃よけで被せていた布をさっと翻すと、私はそっと抱いてその鏡の前に立った。
黄金色の髪と瞳の神に抱かれた私は、同じく黄金色の髪と瞳をもつ美女になっており、一対の芸術品のように調和がとれていた。
「ほら、見て。私にふさわしいのは、貴女しかいないよ。そのうち、この身体にも慣れるだろう。大丈夫。私達には、いっぱい時間がある。龍の一生は長いが番いを決めたら、その者を一生を愛するんだ。さぁ、私の愛を受け取って」
私の手の甲にキスする優雅な仕草に、目が離せなかった。私は、その男性からそっと床に降ろされ、自分の足でゆっくり歩いた。どこも、怪我をしていない。身体には力がみなぎっていて、足取りは驚くほど軽やかだ。
窓辺に近づくと、サァーーっと一陣の風が舞った。さきほどまで、さえずっていた小鳥達も、しんと静まりかえり空を見上げると、ゴロゴロと雷が呼応するかのように鳴った。
「あぁ、コントロールの仕方は、ゆっくり教えるよ。貴女は、私が番いと認めて血を授けた女性なのだ。いわば、龍神の妻としと自らも力を得たわけだ。さぁ、貴女はなにを望む? この世の全ての財宝も権力も思いのままだ」
龍神様は、少し意地悪い口調でおっしゃった。
「あぁ、そんなものはいらないです。宝物はもう、持っていますもの! グレイス様やアレクサンダー様、アレクサ女公爵様やマイロ女公爵様。仲間の侍女や使用人の方々、全てが私の宝です。ベッツィやフェルゼール様は、どんな財宝にもかなわない大事な子供達です。私は、すでに大金持ちなのですよ? それに、権力なんてなんの役に立つのです? 愛する人がいて、毎日が幸せならばそれが一番です」
「あぁ、花嫁よ! 完璧に合格だ! 貴女こそは私に最も、相応しい」
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は、大聖堂なんて仰々しい場所での結婚式は望まなかった。グレイス様達は、とてもがっかりしたが、私はグレイス様のお屋敷で、見知った方々に囲まれて祝福されて結婚したかった。
薔薇が咲き誇る庭園で、二人で誓いの言葉を紡ぎだす。グレイス様とアレクサ女公爵様は嬉しさで泣いていらっしゃるし、マイロ女公爵様とオータム女公爵様は、にこにこと上機嫌なのだった。
私は、純白のドレスを着て、髪はふんわりと結ってもらった。薔薇の花を髪に挿し、宝石は1つもつけていない。
龍神様は、『ダイヤモンド鉱山まで飛んでいって、一番大きいものを持って帰ってきてやろう!』とおっしゃったが私は即座に断った。
だって、こんなに素敵な男性が側にいて、私の肌は柔らかな陽射しを受けてキラキラと輝いているのに、宝石などつける必要があるだろうか。
「綺麗だ。龍の血を飲んでも、誰もが美しくなるわけではない。心の清らかさが、影響するのかもな・・・・・・」
髪を優しく撫でて、頬にキスしてくださる。恥ずかしさと嬉しさで、顔は真っ赤になっているはず・・・・だけれど、私の新しいクールな顔はポーカーフェイスを決め込んでいるに違いない。
私は、幸せすぎて涙が出てきて天を仰ぐと、龍神様がおっしゃった。
「涙しながら天を仰ぐのは、やめた方が良い。雷や大雨が降るかも・・・・・・さぁ、にっこり笑って」
私が涙を拭いてにっこり笑うと、一瞬だけ鳴った雷の音は消え、からりと晴れた空からは燦々と陽が注がれるのだった。私の身体は、いよいよキラキラと輝き、隣の私の夫は満足げに頷いていた。
すべての過去は塗り替えられて、また新しい時を刻み出した瞬間だった。
「「「「おめでとう!!」」」
「「「リリィ様、おめでとうございます!」」」
「「「龍神様の奥方様に祝福を!」」」
アレクサ女公爵家の懐かしい雑用女達もコック達もいて、祝福の声を上げていた。
最高の幸せを手に入れた瞬間に、事件は起こった。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「王妃様が脱走したようです」
騎士の一人が慌てて飛んでくると、
私と龍神様が同時に舌打ちをし、よく晴れた昼間の明るい空に稲妻がピシッとはしったのだった。
思わず、あたりを見回した。あのような視線の先に私がいるなどあり得ないからだ。
キョロキョロしていると、その男性は、クスクスと笑った。
「私の花嫁は、美しいばかりでなく、所作も可愛いな。貴女は、なにを探しているの? 喉でも、乾いたかな? 今、温かいミルクを用意させよう。なにか食べた方がいいかな。まぁ、食べなくても死なない体だが・・・・・・」
この男性の話している内容の半分も理解できない私は、グレイス様の顔を見つめて助けを求めた。
「私は、生きているのでしょうか? ここは天国ではなくて? そして、この綺麗な男性はどなたでしょうか?」
私は、おそるおそる尋ねた。
「あら、この方はリリィの旦那様になる龍神様でしょう? 貴女達は、とてもお似合いだわ! こうしてはいられないわ。お義母様、叔母様方、式の計画をたてなければ、あちらの部屋で打ち合わせをいたしましょう!」
いそいそと、部屋を出て行かれて、私はこの男性と二人っきりになった。
「さぁ、飲んで。なにが食べたい? こういうときは、パン粥がいいとグレイスが言ったが、大丈夫、貴女はもうなんでも食べていい」
私は、この男性から見つめられて、うっとりと幸せな気分になったけれど、戸惑いは隠せない。私は、侍女が持ってきたミルクを飲みながら自分がどういう存在になったかを聞かされた。
「あ、あのぅーー、龍神様に申し上げます。私は、ここが天国だと思ったものですから大それたことを口にいたしました。私は、龍神様の花嫁になれるような女ではないのです。私は貴方様にはふさわしくないです!」
私は、このような方の妻になるなど、恐れ多くて身体が震えてきたのだった。
龍神様は、大きな鏡に埃よけで被せていた布をさっと翻すと、私はそっと抱いてその鏡の前に立った。
黄金色の髪と瞳の神に抱かれた私は、同じく黄金色の髪と瞳をもつ美女になっており、一対の芸術品のように調和がとれていた。
「ほら、見て。私にふさわしいのは、貴女しかいないよ。そのうち、この身体にも慣れるだろう。大丈夫。私達には、いっぱい時間がある。龍の一生は長いが番いを決めたら、その者を一生を愛するんだ。さぁ、私の愛を受け取って」
私の手の甲にキスする優雅な仕草に、目が離せなかった。私は、その男性からそっと床に降ろされ、自分の足でゆっくり歩いた。どこも、怪我をしていない。身体には力がみなぎっていて、足取りは驚くほど軽やかだ。
窓辺に近づくと、サァーーっと一陣の風が舞った。さきほどまで、さえずっていた小鳥達も、しんと静まりかえり空を見上げると、ゴロゴロと雷が呼応するかのように鳴った。
「あぁ、コントロールの仕方は、ゆっくり教えるよ。貴女は、私が番いと認めて血を授けた女性なのだ。いわば、龍神の妻としと自らも力を得たわけだ。さぁ、貴女はなにを望む? この世の全ての財宝も権力も思いのままだ」
龍神様は、少し意地悪い口調でおっしゃった。
「あぁ、そんなものはいらないです。宝物はもう、持っていますもの! グレイス様やアレクサンダー様、アレクサ女公爵様やマイロ女公爵様。仲間の侍女や使用人の方々、全てが私の宝です。ベッツィやフェルゼール様は、どんな財宝にもかなわない大事な子供達です。私は、すでに大金持ちなのですよ? それに、権力なんてなんの役に立つのです? 愛する人がいて、毎日が幸せならばそれが一番です」
「あぁ、花嫁よ! 完璧に合格だ! 貴女こそは私に最も、相応しい」
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は、大聖堂なんて仰々しい場所での結婚式は望まなかった。グレイス様達は、とてもがっかりしたが、私はグレイス様のお屋敷で、見知った方々に囲まれて祝福されて結婚したかった。
薔薇が咲き誇る庭園で、二人で誓いの言葉を紡ぎだす。グレイス様とアレクサ女公爵様は嬉しさで泣いていらっしゃるし、マイロ女公爵様とオータム女公爵様は、にこにこと上機嫌なのだった。
私は、純白のドレスを着て、髪はふんわりと結ってもらった。薔薇の花を髪に挿し、宝石は1つもつけていない。
龍神様は、『ダイヤモンド鉱山まで飛んでいって、一番大きいものを持って帰ってきてやろう!』とおっしゃったが私は即座に断った。
だって、こんなに素敵な男性が側にいて、私の肌は柔らかな陽射しを受けてキラキラと輝いているのに、宝石などつける必要があるだろうか。
「綺麗だ。龍の血を飲んでも、誰もが美しくなるわけではない。心の清らかさが、影響するのかもな・・・・・・」
髪を優しく撫でて、頬にキスしてくださる。恥ずかしさと嬉しさで、顔は真っ赤になっているはず・・・・だけれど、私の新しいクールな顔はポーカーフェイスを決め込んでいるに違いない。
私は、幸せすぎて涙が出てきて天を仰ぐと、龍神様がおっしゃった。
「涙しながら天を仰ぐのは、やめた方が良い。雷や大雨が降るかも・・・・・・さぁ、にっこり笑って」
私が涙を拭いてにっこり笑うと、一瞬だけ鳴った雷の音は消え、からりと晴れた空からは燦々と陽が注がれるのだった。私の身体は、いよいよキラキラと輝き、隣の私の夫は満足げに頷いていた。
すべての過去は塗り替えられて、また新しい時を刻み出した瞬間だった。
「「「「おめでとう!!」」」
「「「リリィ様、おめでとうございます!」」」
「「「龍神様の奥方様に祝福を!」」」
アレクサ女公爵家の懐かしい雑用女達もコック達もいて、祝福の声を上げていた。
最高の幸せを手に入れた瞬間に、事件は起こった。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
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