(完結)私が貴方から卒業する時

青空一夏

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3 ランディ視点

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(ランディ視点)

 わたしは第2王子とは言っても身分の低い側妃の子供だ。第1王子と第3王子は正妃の子供で、わたしとは宮殿での扱いも違った。正妃はブラッカー公爵家の令嬢だったが、わたしの母上は踊り子で末端貴族でもなかったからだ。

 住む宮殿も違い、使用人も正妃の産んだ王子達の半分だった。同じく国王である父上の血を引いているのに酷い差だと思う。



 あの幼い頃の思い出、王家のお茶会で初めてソレンヌに会った日のことは、今でも覚えている。少し太めの冴えない子で自分に自信がないのか、借りてきた猫のようにお茶会の間じゅう縮こまっていた。おまけに中庭で他家の令嬢達に囲まれて容姿までからかわれていたのだ。

(情けない令嬢だな。どうせ末端貴族の子だろう。王家のお茶会などに分不相応に参加するからだよ)


 ところがわたしの母上はその冴えない令嬢を庇うようにおっしゃった。

「あの方はペシオ公爵家のソレンヌ様よ。あれだけ太めで冴えない容姿ならば、少し優しくしてあげればすぐにランディに恋をします。あの令嬢はあなたが生きていく為には必要な保険です。この国で1番金持ちで影響力のあるペシオ公爵の一人娘ですからね。正妃の実家ブラッカー公爵家と並ぶ大貴族です」

(ちっとも大貴族の娘らしくないじゃないか。あれが公爵令嬢?)

 わたしの好みでは全くない。それでも名ばかりの第2王子のわたしには必要な家柄と権力だった。ソレンヌを定期的にお茶会に招き、ある時は褒めある時はソレンヌではない子を褒め、わたしの為に努力するように仕向ける。

 すぐにソレンヌはわたしに恋をして、わたしの操り人形のように動くようになった。そうして、ソレンヌと婚約すると王家での扱いが、ガラリと変わる。

 正妃の実家に勝るとも劣らない後ろ盾を得たわたしには使用人が増え、第1王子と第3王子もわたしに敬意を払うようになった。以前はなかった王位継承権までもらった時にはびっくりしたものだ。

(権力万歳! ソレンヌ様万歳だ)

 ソレンヌはわたしの保険、だが調子に乗らせてはいけない。わたしが側妃の子だからとバカにしないように、こちらが上だということをそれとなく刷り込む。

 わたしが助けてもらっているのではない。冴えないつまらない女を第2王子妃にしてやるのだ。わたしが恩恵を与える立場だ。それを常にわからせるように教え込んだ。

 平凡な容姿のおどおど系の令嬢など、黙ってわたしの後ろ盾となりお金を差し出してくれればいいんだ。

 言うがまま金を貢ぐ女に成長したソレンヌはとても役に立ってくれている。

「私の料理が今より上手になったら、私を好きになってくださいますか?」

 そう尋ねてきたソレンヌに心底笑った。公爵令嬢が料理なんて出来なくてもいいのにバカな女だ。そもそもその陰気でおどおどした性格が好きではないのに、料理が美味くなったところで愛せるわけがない。

「お前はただの金の卵を産む冴えない雌鶏なんだよ」
 思わずそう言いそうになり、自分の太ももをつねってその言葉を封じる。

 ソレンヌよ、お前の価値は家柄と金だけなんだよ!
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