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使用人のいじめ
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私が甘かったのだろうか?ワイアットは『新人の洗礼』と言っていたが、つまりは意地悪のことだと気がついたのは二日目からだった。パンの中には砂が詰められていたし、スープの具は私だけなかった。掃除の分担は昨日より増えていた。それでも、必死で仕事を終えると、今度は陰口が待っていた。
「「「娼婦のくせに・・・・・・」」」
すれ違う使用人がそう言いながら顔をしかめた。娼婦か・・・・・・妾として来たらそう思われるに決まっている。
だから、追い出そうという魂胆か。けれど、追い出されるつもりはないわ。私は、一度、決心したことは絶対に変えない!
それでも、お腹が空いて体に力がはいらなかった。私に任された仕事は掃除だけではないのに。洗濯の大変さを体験したのは三日目だ。大きなたらいに洗濯物を放り込み足で踏む。手で揉む。ひたすら絞る・・・・・・一日中していたら足も手も凍りつき、ところどころ手が荒れて切れた。これが、アカギレというものなのか。
昔、そう言えば王宮の雑用女が、アカギレで痛いと言っていた言葉を思い出す。洗濯を切り上げ、靴をはこうとしたら激痛がはしった。靴の中には画鋲が入っていた。あぁ、すごく子供っぽい嫌がらせだけれど・・・・・・こんなの痛くて歩けない。
私は、屋敷の庭の片隅で、血が出ている足をさすった。消毒薬だけでも、もらって手当したい。
「どうした? もう音を上げたか? だから、やめておけと言っただろう?」
ワイアットが私に冷たく声をかけてきた。私は怪我をした足を隠そうとしたが遅かった。
「どうした? その足は? なぜ、こんな怪我をした? しかも、手が一日でアカギレているなんてあり得ない! 今日は何をしていた?」
私は、ありのままを告げた。ワイアットは私を抱き上げて、居間のソファに座らせた。侍女に消毒薬を持って来させると私の足につけてくれた。
手にはクリームを塗ってくれ、ココアを持ってこさせ、私の手にもたせた。私は、それを素直に飲む。
「貴女は王女だったから知らないのだろうが。洗濯は一人でするものではない。数十人で手分けして分担してするし
絞る機械もある。一日中、洗濯などしないし、するなら保護手袋をするのが常識だ」
「・・・・・・そう、知らなかったわ」
「誰が言った? 素手でやれと誰が言ったんだ?」
アデリーと言ったら、多分アデリーはきつい罰をうけるかも。私は、アデリーとは仲良くしていたい。ここは黙っておこう。
「聞かなかったわ。自分でそう思ったからやったのよ。この足はね、庭にたまたま落ちていた画鋲を踏んでしまったのよ」
ワイアットは訝しげに私を見ていたが、それ以上は聞かなかった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
その後にアデリーが、恭しくお辞儀をしながら私の部屋にやって来た。
「なぜ、おっしゃらかったのです?洗濯のことや画鋲は、私が指図したことです」
「アデリーさんは、さっきの会話を聞いていたのね? だって、そんなことを言ったら貴女は辞めさせられるかもしれないでしょう? ワイアットはこのようなことが大嫌いな人だったわ。今は知らないけれどね。それに私は3ヶ月でここを出て行こうと思うの。少ししかいない私のために貴女が辞めさせられることはないと思うわ」
「・・・・・・申し訳ありませんでした。けれど、王女様がワイアット様を振った理由がお金だったのなら私は貴女を軽蔑します」
「あぁ、どうぞ、軽蔑してもらってかまわないわ。けれど、パンに砂を入れるのはやめてもらえないかしら? 貴女とけんかをしに来たのではないのよ。ワイアットを傷つけたのならそのお詫びで少しここにいたいだけなの」
「そうですか。貴女様が王女様だということは誰にも言いません。それと、私は貴女様は好きにはなれません。3ヶ月経ったら、すぐに出て行かれることを望んでいます」
「ふふっ。正直な人は好きよ」
私は、この年配の女性に好感をもった。彼女はワイアットの為に私に怒っている。ワイアットは、こんなに使用人に慕われているんだと思うと嬉しかった。
それからは、特に意地悪もなく、使用人としては無難にこなしていた。ワイアットには、果物を剥いてあげたりお茶を入れた。アデリーは私に雑用をさせないでワイアットの身の回りのことをさせるようになった。そして、その様子をじっと観察していることが多くなった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
「明日から3日間、隣町まで行くから留守にする。家の管理を頼むよ」
ワイアットは執事とアデリーにそう言って私にも顔を向けた。
「なにか、お土産を買ってこよう」
私は、なにも答えなかった。だって、あんな言葉を私に言うはずがないから・・・・・・・
そして、その日の夕方に事件は起こった。アデリーの孫がぜんそくをおこし呼吸困難に陥ったのだ。
「どうしましょう。お医者様など呼べません。そんなお金など・・・・・・」
この世界では医者の数は驚くほど少ない。その為、治療費も恐ろしく高く庶民では決してかかることができなかったのだ。私は、質屋に駆け込み、コルトン王から頂いた宝石を差し出したのだった。
「「「娼婦のくせに・・・・・・」」」
すれ違う使用人がそう言いながら顔をしかめた。娼婦か・・・・・・妾として来たらそう思われるに決まっている。
だから、追い出そうという魂胆か。けれど、追い出されるつもりはないわ。私は、一度、決心したことは絶対に変えない!
それでも、お腹が空いて体に力がはいらなかった。私に任された仕事は掃除だけではないのに。洗濯の大変さを体験したのは三日目だ。大きなたらいに洗濯物を放り込み足で踏む。手で揉む。ひたすら絞る・・・・・・一日中していたら足も手も凍りつき、ところどころ手が荒れて切れた。これが、アカギレというものなのか。
昔、そう言えば王宮の雑用女が、アカギレで痛いと言っていた言葉を思い出す。洗濯を切り上げ、靴をはこうとしたら激痛がはしった。靴の中には画鋲が入っていた。あぁ、すごく子供っぽい嫌がらせだけれど・・・・・・こんなの痛くて歩けない。
私は、屋敷の庭の片隅で、血が出ている足をさすった。消毒薬だけでも、もらって手当したい。
「どうした? もう音を上げたか? だから、やめておけと言っただろう?」
ワイアットが私に冷たく声をかけてきた。私は怪我をした足を隠そうとしたが遅かった。
「どうした? その足は? なぜ、こんな怪我をした? しかも、手が一日でアカギレているなんてあり得ない! 今日は何をしていた?」
私は、ありのままを告げた。ワイアットは私を抱き上げて、居間のソファに座らせた。侍女に消毒薬を持って来させると私の足につけてくれた。
手にはクリームを塗ってくれ、ココアを持ってこさせ、私の手にもたせた。私は、それを素直に飲む。
「貴女は王女だったから知らないのだろうが。洗濯は一人でするものではない。数十人で手分けして分担してするし
絞る機械もある。一日中、洗濯などしないし、するなら保護手袋をするのが常識だ」
「・・・・・・そう、知らなかったわ」
「誰が言った? 素手でやれと誰が言ったんだ?」
アデリーと言ったら、多分アデリーはきつい罰をうけるかも。私は、アデリーとは仲良くしていたい。ここは黙っておこう。
「聞かなかったわ。自分でそう思ったからやったのよ。この足はね、庭にたまたま落ちていた画鋲を踏んでしまったのよ」
ワイアットは訝しげに私を見ていたが、それ以上は聞かなかった。
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その後にアデリーが、恭しくお辞儀をしながら私の部屋にやって来た。
「なぜ、おっしゃらかったのです?洗濯のことや画鋲は、私が指図したことです」
「アデリーさんは、さっきの会話を聞いていたのね? だって、そんなことを言ったら貴女は辞めさせられるかもしれないでしょう? ワイアットはこのようなことが大嫌いな人だったわ。今は知らないけれどね。それに私は3ヶ月でここを出て行こうと思うの。少ししかいない私のために貴女が辞めさせられることはないと思うわ」
「・・・・・・申し訳ありませんでした。けれど、王女様がワイアット様を振った理由がお金だったのなら私は貴女を軽蔑します」
「あぁ、どうぞ、軽蔑してもらってかまわないわ。けれど、パンに砂を入れるのはやめてもらえないかしら? 貴女とけんかをしに来たのではないのよ。ワイアットを傷つけたのならそのお詫びで少しここにいたいだけなの」
「そうですか。貴女様が王女様だということは誰にも言いません。それと、私は貴女様は好きにはなれません。3ヶ月経ったら、すぐに出て行かれることを望んでいます」
「ふふっ。正直な人は好きよ」
私は、この年配の女性に好感をもった。彼女はワイアットの為に私に怒っている。ワイアットは、こんなに使用人に慕われているんだと思うと嬉しかった。
それからは、特に意地悪もなく、使用人としては無難にこなしていた。ワイアットには、果物を剥いてあげたりお茶を入れた。アデリーは私に雑用をさせないでワイアットの身の回りのことをさせるようになった。そして、その様子をじっと観察していることが多くなった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
「明日から3日間、隣町まで行くから留守にする。家の管理を頼むよ」
ワイアットは執事とアデリーにそう言って私にも顔を向けた。
「なにか、お土産を買ってこよう」
私は、なにも答えなかった。だって、あんな言葉を私に言うはずがないから・・・・・・・
そして、その日の夕方に事件は起こった。アデリーの孫がぜんそくをおこし呼吸困難に陥ったのだ。
「どうしましょう。お医者様など呼べません。そんなお金など・・・・・・」
この世界では医者の数は驚くほど少ない。その為、治療費も恐ろしく高く庶民では決してかかることができなかったのだ。私は、質屋に駆け込み、コルトン王から頂いた宝石を差し出したのだった。
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