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狡猾な兄、チャールズ
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ワイアットの屋敷に王家の馬車が止った。使用人達は皆、何事かと、その馬車を遠巻きに眺めていた。
私に仕えていたマヤとケイラが馬車から降り立ち、歩いてくる。そして、恭しくお辞儀をして跪いた。
「アレクシス王女様。王が静養からお元気になって戻られました。至急、王宮にお戻りください」
私の、かつての侍女達は嬉し涙を浮かべながらそう言ったのだった。
私が使用人の服を着ていたので、マヤは憤慨した。
「人でなしのワイアット様の仕打ちですね! 高貴な姫様に使用人の服を着せるとは! アレクシス王女様、もう安心です。王様も王妃様もお戻りになられました。さぁ、荷物をまとめてください。こんな所とはおさらばです」
私は、あのコルトン王から頂いた宝石だけをトランクに詰めた。馬車に乗ろうとするとアデリーが泣きながら私の手を握ってきた。
「王女様に神のお恵みがありますように。どこにいようと、貴女様の幸せを祈っております」
私は、頷いて馬車に乗った。ワイアットのことはお城に戻っても様子を見に行こうと固く心に誓いながら・・・・・・
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
「王女よ。よく戻ったな。静養先ではお前が戻ったことを知らされていなかったのだ。チャールズよ! なぜ、妹が帰国したことを私に知らせなかったのだ?」
お父様はお兄のチャールズを責めていた。お母様も、同じようにチャールズを咎めている。
「あぁ、父上達に心配をかけないようにとの配慮からです」
チャールズは私を睨みながら答えている。私は、兄からそっと目を逸らせた。
「なぜ、ワイアットの屋敷にいたの?」
お母様は私に問いかけた。お父様達は何も知らないんだ! 私は・・・・・・なんて答えたらいいのだろう? 兄はさっきから鋭い眼差しで脅しているようにさえ思えた。
「アレクシスは、自分からワイアットの所に押しかけたのですよ。王女の身分を捨ててあいつの愛人になりたいというから、渋々承諾してやったんですよ。ワイアットは正妻は一生もたないと言うのでアレクシスは愛人になると言い出したのです。全く、困った妹だ。臣下の愛人になる王女など王族から追放するべきでしょう? だから、この妹はもう王女ではありません。父上達が甘やかすからこんな出来損ないになったのでしょう」
あまりの嘘に、私は言葉が出てこなかった。お父様は私に厳しい眼差しを向けた。
「アレクシス。お前がワイアットを好きで妻になりたかったのは知っている。以前の婚約を破棄させ、ドミニ王国に嫁がせたのは可哀想なことをしたと思っているよ。けれど、愛人になりに行くとは!」
「お父様! 違います! お兄様が私にワイアットの元に行けとおっしゃったんです!」
「はっ! 何の為に? 国の為に嫁いだ妹が死を免れて帰国したのに、それを追い出す兄がどこにいる? 何の為にそのようなことを私がする?」
兄のチャールズは、私に薄ら笑いを浮かべていた。
私の侍女のマヤとケイラがお父様に申し出た。
「チャールズ様がアレクシス王女様に出ていくようにおっしゃったのです。アレクシス王女様が殉死しなかったことを責めておいででした。アレクシス王女様はコルトン王様に娘のようにかわいがられておりました。ですから、命が亡くなる前に逃がしてくださったのです。それを、チャールズ様が”役立たずの出戻り王女”と呼んで冷遇されました」
お父様は、今度はお兄様に厳しい眼差しを向けた。
「黙れ! こいつらはアレクシス王女の専属侍女達です。アレクシス王女の良いように嘘を言っているんです。この侍女達は厳重に処罰しなければ・・・・・・その嘘つきな舌は切り取ってしまえ!」
兄のチャールズの言葉に、私はキレた。
「お兄様ほど、嘘つきで汚くて残酷な人はいませんわ! 私の侍女達には指一本触れさせないわ!」
「ふん! お前は第3王女だろ! 私は嫡男だ。誰にそんな口をきいていると思っているのだ? 誰もお前のことを守る奴はいないんだ! 父上も母上も、嫡男の私の言うことが信じられないのですか?」
お兄様がまくしたてるなか、背の高い騎士団長の服を着たワイアットが静かに入って来て、こう言ったのだった。
「アレクシス王女様も守る者ならここにいますよ。この私がどんな者からも守ってみせる」
私に仕えていたマヤとケイラが馬車から降り立ち、歩いてくる。そして、恭しくお辞儀をして跪いた。
「アレクシス王女様。王が静養からお元気になって戻られました。至急、王宮にお戻りください」
私の、かつての侍女達は嬉し涙を浮かべながらそう言ったのだった。
私が使用人の服を着ていたので、マヤは憤慨した。
「人でなしのワイアット様の仕打ちですね! 高貴な姫様に使用人の服を着せるとは! アレクシス王女様、もう安心です。王様も王妃様もお戻りになられました。さぁ、荷物をまとめてください。こんな所とはおさらばです」
私は、あのコルトン王から頂いた宝石だけをトランクに詰めた。馬車に乗ろうとするとアデリーが泣きながら私の手を握ってきた。
「王女様に神のお恵みがありますように。どこにいようと、貴女様の幸せを祈っております」
私は、頷いて馬車に乗った。ワイアットのことはお城に戻っても様子を見に行こうと固く心に誓いながら・・・・・・
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「王女よ。よく戻ったな。静養先ではお前が戻ったことを知らされていなかったのだ。チャールズよ! なぜ、妹が帰国したことを私に知らせなかったのだ?」
お父様はお兄のチャールズを責めていた。お母様も、同じようにチャールズを咎めている。
「あぁ、父上達に心配をかけないようにとの配慮からです」
チャールズは私を睨みながら答えている。私は、兄からそっと目を逸らせた。
「なぜ、ワイアットの屋敷にいたの?」
お母様は私に問いかけた。お父様達は何も知らないんだ! 私は・・・・・・なんて答えたらいいのだろう? 兄はさっきから鋭い眼差しで脅しているようにさえ思えた。
「アレクシスは、自分からワイアットの所に押しかけたのですよ。王女の身分を捨ててあいつの愛人になりたいというから、渋々承諾してやったんですよ。ワイアットは正妻は一生もたないと言うのでアレクシスは愛人になると言い出したのです。全く、困った妹だ。臣下の愛人になる王女など王族から追放するべきでしょう? だから、この妹はもう王女ではありません。父上達が甘やかすからこんな出来損ないになったのでしょう」
あまりの嘘に、私は言葉が出てこなかった。お父様は私に厳しい眼差しを向けた。
「アレクシス。お前がワイアットを好きで妻になりたかったのは知っている。以前の婚約を破棄させ、ドミニ王国に嫁がせたのは可哀想なことをしたと思っているよ。けれど、愛人になりに行くとは!」
「お父様! 違います! お兄様が私にワイアットの元に行けとおっしゃったんです!」
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兄のチャールズは、私に薄ら笑いを浮かべていた。
私の侍女のマヤとケイラがお父様に申し出た。
「チャールズ様がアレクシス王女様に出ていくようにおっしゃったのです。アレクシス王女様が殉死しなかったことを責めておいででした。アレクシス王女様はコルトン王様に娘のようにかわいがられておりました。ですから、命が亡くなる前に逃がしてくださったのです。それを、チャールズ様が”役立たずの出戻り王女”と呼んで冷遇されました」
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