11 / 13
本当はもっと前に意識が戻っていたワイアット(ワイアットside)
しおりを挟む
私が目覚めた時、アレクシスは私の病室の花を生けているところだった。薄く目を開けて見ると、どこもかしこも綺麗に整頓され、洗いたてのタオルがベッドの横の棚に色別に畳まれて置かれている。
アレクシスは、なんでも色別に収納する癖があった。アレクシスが、こちらに来て私の額に手を当てた。慌てて目を閉じ無表情を装った。
「なんで、目覚めないのかしら? 危険な状態は脱しているとお医者様もおっしゃっていたのに・・・・・・」
もう少しこのままでいたい。アレクシスが側にいて、私に以前のように親しく話しかけてくれるのを聞いていると
身体の傷も癒え、心の傷までも癒える気がした。
かつて、命を賭けて守ると心に誓った女性の優しい声は私には最高の治療薬だった。
それから五日後、かなり回復してきたのが自分でもわかった。そろそろ、目覚めてアレクシスを喜ばせようとしていたら思いがけない言葉を聞いた。
「私はね、お金なんかの為にドミニ王国に嫁いだのじゃないのよ。お父様の命令だったの。嫁がないと戦争になると言われたわ。ドミニ王国は大国で戦争になったらひとたまりもないわ。でも、本当のことを言ったら、貴方は私を守るために命を賭けるでしょう? だから、憎まれた方がいいと思った。大好きだったのよ、ワイアット。ドミニ王国にいても、ずっと貴方だけを思っていたわ」
私は、その言葉に愕然とした。思わず、そのまま意識が戻っていないふりを続けたほどだ。そんな理由だったとは! あの時の王太子の嘘をすっかり信じてしまった私は愚かだった。そのような大任を終え故国に戻って来た彼女を妾として買った私は最低だ。自分で自分のケツを蹴ってやりたい。
急いで、退院しようとすると医者が止めにきた。
「大分、いいようですが無理はしないように。明日の夕方まで、ここにいてくださいよ。お腹の傷もすっかり塞がってきたようだ。凄い回復力ですね」
「あぁ、愛の力だと思う。なくしたと思っていたものが、まだそこにあると知った。身体には傷がついたが心の傷はもう跡形もなく消えたよ」
私は、喜びに顔を輝かせて言った。
「あぁ、いいことです。ときには、身体の傷より心の傷のほうが人間を苦しめますからな」
医者の言葉に深く頷いた私だった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
夕方に屋敷に戻るとアレクシスの姿がなかった。
「アレクシス王女様は、王宮にお戻りになられました」
アデリーが悲しそうな顔をしてうな垂れていた。
「そんなに、悲しい顔をしなくていい。 私がこれからアレクシスを迎えにいく」
「王様が静養からお戻りになったそうです。もう、こちらにはお戻りになられないと・・・・・・お付きの方はおっしゃっておりました」
「あぁ、前と同じかたちでは戻らないだろうよ。私は『私の妻』を迎えに行くのだから」
アレクシスは、なんでも色別に収納する癖があった。アレクシスが、こちらに来て私の額に手を当てた。慌てて目を閉じ無表情を装った。
「なんで、目覚めないのかしら? 危険な状態は脱しているとお医者様もおっしゃっていたのに・・・・・・」
もう少しこのままでいたい。アレクシスが側にいて、私に以前のように親しく話しかけてくれるのを聞いていると
身体の傷も癒え、心の傷までも癒える気がした。
かつて、命を賭けて守ると心に誓った女性の優しい声は私には最高の治療薬だった。
それから五日後、かなり回復してきたのが自分でもわかった。そろそろ、目覚めてアレクシスを喜ばせようとしていたら思いがけない言葉を聞いた。
「私はね、お金なんかの為にドミニ王国に嫁いだのじゃないのよ。お父様の命令だったの。嫁がないと戦争になると言われたわ。ドミニ王国は大国で戦争になったらひとたまりもないわ。でも、本当のことを言ったら、貴方は私を守るために命を賭けるでしょう? だから、憎まれた方がいいと思った。大好きだったのよ、ワイアット。ドミニ王国にいても、ずっと貴方だけを思っていたわ」
私は、その言葉に愕然とした。思わず、そのまま意識が戻っていないふりを続けたほどだ。そんな理由だったとは! あの時の王太子の嘘をすっかり信じてしまった私は愚かだった。そのような大任を終え故国に戻って来た彼女を妾として買った私は最低だ。自分で自分のケツを蹴ってやりたい。
急いで、退院しようとすると医者が止めにきた。
「大分、いいようですが無理はしないように。明日の夕方まで、ここにいてくださいよ。お腹の傷もすっかり塞がってきたようだ。凄い回復力ですね」
「あぁ、愛の力だと思う。なくしたと思っていたものが、まだそこにあると知った。身体には傷がついたが心の傷はもう跡形もなく消えたよ」
私は、喜びに顔を輝かせて言った。
「あぁ、いいことです。ときには、身体の傷より心の傷のほうが人間を苦しめますからな」
医者の言葉に深く頷いた私だった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
夕方に屋敷に戻るとアレクシスの姿がなかった。
「アレクシス王女様は、王宮にお戻りになられました」
アデリーが悲しそうな顔をしてうな垂れていた。
「そんなに、悲しい顔をしなくていい。 私がこれからアレクシスを迎えにいく」
「王様が静養からお戻りになったそうです。もう、こちらにはお戻りになられないと・・・・・・お付きの方はおっしゃっておりました」
「あぁ、前と同じかたちでは戻らないだろうよ。私は『私の妻』を迎えに行くのだから」
5
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
愛する女性を側室に望むのなら、いっそ私との婚約は解消してほしいのですが?
四折 柊
恋愛
公爵令嬢ジョゼフィーヌには好きな人がいた。その人は隣国の王子様リック。ジョゼフィーヌはリックと結婚したくて努力をしてきた。そして十六歳になり立派な淑女になれたと自信を得たジョゼフィーヌは、リックにプロポーズをしようとした。ところが彼に婚約者がいたことが発覚し悲しみに暮れる。今まで確認しなかった自分も悪いが、なぜかリックも家族もそのことを教えてくれなかった。そんなときジョゼフィーヌに婚約の打診が来た。その相手は自国のアルバン王太子殿下。断りたいが王命が下り仕方なく受け入れた。それなのに、ある日夜会でアルバンが可憐な令嬢に一目惚れをした。その後、アルバンはその令嬢を側室にしたいと望んだので、お互いのために婚約を解消したいと申し出たが拒絶されて……。ジョゼフィーヌの未来はどうなるのか?!
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
【完結】皇太子殿下!あなたの思い描く「理想の女性」はこの世にはいません!
つくも茄子
恋愛
帝国の皇太子は眉目秀麗の天才と名高く、魔力も最高峰。十六歳になるのに何故か婚約者がいない。理由は簡単。見合いを全て台無しにしているからだ。何故そんなに婚姻するのが嫌なのか、皇太子は答える。「理想の女性を唯一人の妃にするからだ」と。問題はその「理想の女性」だ。母である皇后は断言する。「アホか!そんな女がこの世にはいない!!」。そんな中、不穏な気配を感じる公国の公女との結婚。皇太子は動く。周囲に多大な精神負担を掛けながら。
他サイトにも公開中
婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。
彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う!
「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」
「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」
貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。
それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム!
そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。
ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。
婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。
そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!?
「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」
復讐も愛憎劇も不要!
ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!?
優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる